善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

成果を出し続けるビジネスパーソンは、何が違うのか──。

この問いに明確なヒントを与える、ある調査データがあります。

全国の企業で継続的に成果を出しているトップ5%社員962名を対象に行った調査によると、彼らは年間平均43.2冊の本を読むという結果が出ています。さらに、そのうち63%の社員は年間35冊以上の本を読んでいることが明らかになりました。

一方、一般的なビジネスパーソンの読書量は、年間平均2.4冊に留まっています。

この数字の開きは、「多くの本を読む人が必ず成功する」という単純な図式を示すものではありませんが、読書が成果に少なからず寄与していることを裏づける材料ではあるでしょう。

では、忙しい日々を過ごす私たちが、限られた時間の中で「成果を生む読書」をするには、どうすればいいのでしょうか?

量をこなすことが難しいなら、「質を高める読書」へと視点を移すことが大切です。

本記事では、「読書を“仕入れ”と捉える」思考を軸にしながら、質の高い読書を通して、自分自身の成長や仕事への活用につなげていく方法について、キャリア支援と人材育成の視点から解説していきます。

トップ5%社員に共通する「仕入れの質」

年間40冊以上もの本を読んでいるトップ層のビジネスパーソンたちは、単に読書量が多いだけではありません。

彼らの特徴は、「読んだことを実践や思考のベースとして使っている」という点にあります。

これは、例えるなら商人が商品の仕入れをするようなものです。

仕入れた商品は、店舗に陳列するだけでは価値を生みません。どう見せるか、どう売るか、どんな顧客に届けるか――つまり、仕入れに「意味づけ」を加えることで、価値が生まれるのです。

読書もまったく同じです。読んで「知った」だけでは意味がなく、そこに自分なりの問いや気づき、あるいは具体的な活用方法を加えてはじめて、自分の知識資産として活かされます。

その意味で、「読書の質を高める」というのは、読後のプロセスまで含めた行為であるといえます。

読書の質を高める3つの原則

では、限られた時間の中で、質の高い読書を実現するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、私自身の研修現場やビジネスパーソンの支援経験を通して確信している3つの原則をご紹介します。

① 「一冊を、繰り返し読む」

多くの人が、読書において「多読=優れている」と思いがちですが、私はむしろ“少数精読”を推奨しています。

ある1冊の本を繰り返し読むことで、初読では気づけなかった内容が浮き上がってきたり、自分の成長段階に応じて意味が深まって感じられたりします。

これは、自己理解や知識の定着、応用力の向上にも直結します。

特におすすめなのは、「読後1週間以内にもう一度読む」「1カ月後に3度目を読む」といったタイミングをあらかじめ決めておくことです。再読を前提に読むと、1回目の読書の質自体も上がっていきます。

「1冊を、何度も、深く読む」。この姿勢が、情報を“血肉”に変える鍵です。

② 「読む前に“問い”を持つ」

漫然とページをめくる読書と、「問いを持って」読む読書とでは、得られる気づきの深さがまるで違います。

たとえば、以下のような問いを事前に用意してから読むと良いでしょう。

• 今、自分が悩んでいることにヒントがあるか?

• この著者の考え方は、なぜ自分に刺さるのか?

• この内容を、仕事にどう活かせるか?

問いを持つことで、読書が「受け身の行為」から「対話的なプロセス」に変わるのです。

これは研修や学習の場でも非常に効果的なアプローチとして知られています。自分との対話、著者との対話が生まれる読書は、その分だけ「意味ある仕入れ」になります。

③ 「読んだ内容を、自分の言葉でアウトプットする」

どんなに良い本を読んでも、記憶には残りにくいものです。記憶に残し、行動につなげるには、アウトプットが不可欠です。

アウトプットの方法はさまざまあります。SNSでの感想投稿、職場での共有、日報への反映、家族や友人との対話など、誰かに話す・書くことによって、自分の中での定着と整理が進みます。

また、実際に仕事に活かせる知識であれば、実践してみることが最も効果的です。「この本に書いてあったアイデアを、今の業務改善に使ってみよう」と考えることで、読書が“学び”から“成果”へと変わります。

読書を「自己投資」で終わらせず、「価値創出」へつなげる

多くの人が読書を“インプット”として捉えていますが、そこにとどまっていては不十分です。

本の価値は、読んだ人がどう活かすかで決まるのです。

ビジネスパーソンにとって読書とは、単なる知識の蓄積ではなく、「自分という人的資本への仕入れ」であり、「職場や社会への付加価値提供」につなげるための準備です。

だからこそ、読書を「どれだけ読んだか」よりも、「何を得て、何に使ったか」を振り返る習慣を持つことが、読書の価値を大きく変えていきます。

下の図は、読書のプロセスを「仕入れ→意味づけ→アウトプット」と捉えたものです。

【読書活用の3ステップ】

ステップ内容キーアクション
仕入れ良質な本を選び、読む読む前に問いを持つ/再読を前提に
意味づけ読んだ内容を自分に引き寄せて考える感じたこと・活かせそうな点を整理
アウトプット学んだことを発信・実践する書く・話す・試す・人に届ける

「本を読む人」ではなく、「本から動く人」になろう

成果を出している人たちは、決して本を読んで満足しているわけではありません。

読書をきっかけに自分を動かし、周囲に価値を還元する“行動”へと変換しているのです。

彼らに共通しているのは、「読書とは、自分を耕し、未来をつくる手段である」という視点です。

だからこそ、常にアンテナを立て、読んだ内容を試し、言葉にし、問いを持ち続けています。

あなたも、「何を読むか」だけでなく、「どう読むか」「どう使うか」に意識を向けてみてください。

本はきっと、知識や思考を超えて、あなたの成長と変革のトリガーになってくれるはずです。

まとめ:「読書」は成果を生むための“行動習慣”であ

トップ5%社員が多くの本を読む背景には、読書そのものの量というよりも、「読んだことを価値に変える力」があるのだと、私は考えています。

そして、それは特別な能力ではなく、誰でも日常の中で育むことができる習慣です。

本記事で紹介した「繰り返し読む」「問いを持つ」「アウトプットする」という3つの読書術を取り入れることで、1冊の本があなたの思考と行動に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。

“読む”だけで終わらせず、“動く”につなげる読書。

その積み重ねが、キャリアの質を高め、あなた自身の価値を育てていきます。

本との出会いは、あなた自身を広げ、未来の可能性を耕す時間です。

忙しい毎日の中でも、ほんの数ページを丁寧に読むことから始めてみてください。その一歩が、明日の成果を変える第一歩になるはずです。

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