【心理的安全性×主体性】部下が自律的に育つチームの育て方とは?
「最近、どうやって部下に関わればいいのか分からない」
「パワハラと受け取られないか不安」
「アドバイスしたら、なぜか距離を取られてしまった…」
こうした声は、今、現場で多くのリーダー・マネージャーが抱えている切実な悩みです。かつてのような「指示・命令」スタイルは避けられがちになり、代わって「寄り添い型」「支援型」スタイルが求められるようになってきました。しかし、そのトーンや言葉を選んで“アドバイス”をしても、部下が思うように育たない、行動が変わらないというジレンマに直面している方も多いのではないでしょうか。
実は、心理学やカウンセリングの視点から見ると、「アドバイスの大半は逆効果」になってしまう可能性があるのです。
本記事では、心理的安全性の土台を築きつつ、部下の「自己効力感」と「自律性」を高め、主体的に成長を促すための5つの実践的アプローチを、心理学理論をもとに丁寧に解説していきます。
「アドバイス」が逆効果になる心理的メカニズムとは?
まず最初に知っておきたいのが、「なぜ上司の善意あるアドバイスが逆効果になってしまうのか?」という点です。ここで登場するのが、心理学における2つの重要な概念です。
1. 防衛機制:心が無意識に身を守る仕組み
防衛機制とは、私たちが無意識のうちに心のバランスを保つために働く心理的な仕組みです。たとえば、「失敗を指摘されたとき」に反射的に「いや、でも…」と反論してしまうことがあります。これは、自己評価を守るために「合理化」や「否認」などの防衛機制が働いているためです。
つまり、上司からのアドバイスが、どれだけ優しく配慮されたものであっても、本人にとっては「批判」や「評価」として受け取られ、防衛的反応を引き起こす可能性があるのです。
2. 変容の逆説的理論:人は変わろうとすることをやめたときに変わる
次に紹介したいのが、ゲシュタルト療法の創始者アーノルド・ビースが提唱した「変容の逆説的理論」です。
この理論によると、「他者から変わるよう促される」ことで人は防衛的になり、「変わることを拒否」する傾向があります。逆に、「今の自分をそのまま受け入れられたとき」に初めて、自然な変容が起こるというのです。
つまり、「もっとこうしなよ」「こうした方がいいよ」といった助言は、たとえ善意であっても、部下にとっては「今の自分を否定された」と感じられ、結果として行動変容が起こりにくくなるというわけです。
心理的安全性のあるチームが生まれる5つのヒント
それでは、どうすれば部下の「主体性」や「自律性」を損なわず、成長を促すことができるのでしょうか?ここからは、心理学的アプローチに基づいた5つのヒントを、具体例とともに解説します。
1. 評価せずに「気づき」を引き出す質問をする
上司の役割は「答えを与える」ことではなく、相手自身が答えに気づくための対話をつくることです。
たとえば、「どうしてこんな結果になったと思う?」という問いかけではなく、
「今回の結果を見て、どんなことを感じた?」
「もし次に同じ状況があったら、どうする?」
といったように、本人の「内側から出る言葉」にフォーカスしましょう。これにより、自分で考える力と責任感が育ちます。
2. 「聞く」ことに徹する時間をつくる
多くのマネージャーは「フィードバックをしなければ」と構えすぎてしまいがちです。しかし、部下が本音を話せる関係性がなければ、どんな助言も届きません。
まずは「ただ話を聴く」「判断を保留する」時間を意識的に設けてみてください。傾聴の基本「相槌・繰り返し・要約」を使いながら、相手の話に寄り添うことで、心理的安全性が高まります。
3. 感情に共感し、事実をともに整理する
部下がミスをしたとき、叱責ではなく、まずは感情に共感することが大切です。
「悔しかったよね」「焦ったよね」「がっかりしたと思う」
こうした共感の言葉は、相手の防衛機制を解除し、「受け止められた」「安心できた」と感じさせます。そのうえで、
「そのとき何が起こっていたのか、一緒に整理してみようか」
と事実を冷静に振り返ることで、感情と認知を分離し、前向きな学びにつなげることができます。
4. 小さな成功体験を一緒に積み上げる
自己効力感を高めるには、「できた!」という体験の積み重ねが何より重要です。
そのためには、「完璧な成果」を求めるのではなく、
• 昨日より少し早く対応できた
• 提案の中に新しい視点があった
• 前回より報告が分かりやすくなった
といった小さな成長を言語化して伝えることが効果的です。こうしたフィードバックは、部下の自信と意欲を引き出す強力な支援になります。
5. 「今のままでOK」という土台をつくる
最も大切なのは、「あなたは今のままでも価値がある」というメッセージを日常の中で伝え続けることです。
人は、「変わることを期待されている」と感じると、そのプレッシャーに押しつぶされ、逆に動けなくなってしまいます。
だからこそ、「結果がどうであれ、あなたを信頼している」「今のあなたを大切に思っている」という無条件の承認が、行動変容の起点になります。
管理職が抱える「支援」と「介入」のジレンマを超えるために
ここまで読んでくださった方の中には、「部下に寄り添うこと」と「成長を促すこと」のバランスに迷っている方もいらっしゃると思います。
実際、現代のリーダーに求められているのは、「成果を出すマネジメント」と「人間としての支援」の両立という、極めて高度なスキルです。しかし、それは「どちらか」ではなく、「関係性の質を高めること」こそが両方を可能にする鍵です。
心理的安全性を育みながら、自ら考え、動ける人材を育てる。そのプロセスには時間がかかりますが、組織にとって最も持続可能で強い成長戦略でもあるのです。
まとめ:変化の起点は、上司自身の「あり方」から始まる
いかがでしたか?
「アドバイス」が逆効果になる理由を理解し、防衛機制や変容の逆説的理論の観点から、部下の自律性を引き出すヒントをご紹介しました。
私たちができる最も強力な支援は、「こうあってほしい」と相手を操作することではなく、そのままの存在を信頼し、伴走する姿勢です。
そして、部下が自らの力で一歩を踏み出した瞬間こそ、上司としての真の喜びを感じられる場面でもあります。
変化は一朝一夕には起きません。けれど、あなたのあり方がチームの未来を形づくる起点となるのです。
まずは、今日の一対一の対話から、その第一歩を始めてみませんか?








