善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

「こんなに頑張っているのに、どうして上司はわかってくれないんだろう?」

社会人として働く中で、こうした思いを一度も感じたことがないという人は少ないのではないでしょうか。仕事に真剣に向き合い、自分なりに成果を出そうとしているにも関わらず、上司や同僚、時には部下との関係に「なんだかすれ違っている」「理解されていない」とモヤモヤする――そんな経験は、誰にでも起こりうることです。

このような職場の悩みの多くは、“能力の差”や“熱意の不足”ではなく、一人ひとりが持つ「価値観の違い」によって生まれていることをご存じでしょうか。

価値観とは何か?なぜすれ違いが起こるのか?

価値観とは、「何を正しいと思い、何を優先するか」という個人の判断基準です。

たとえば、「チームワークを大切にする人」「成果主義を重んじる人」「計画性を重視する人」「柔軟な対応力を評価する人」など、同じ目標に向かっているはずでも、人によって“正しさの軸”は異なります。

問題なのは、この自分にとって大切な価値観を「他人も同じはずだ」と無意識に思い込み、期待を押しつけてしまうことにあります。

• 上司ならもっと部下の気持ちを理解すべき

• 部下なら自分から積極的に動くべき

• 同僚なら忙しそうなときに声をかけるのは配慮が足りない

こうした「○○すべき」「○○であるべき」という“ベキ論”が生まれる背景には、自分の価値観を前提にした期待があります。

そしてその期待が満たされなかったとき、人は「わかってくれない」「認めてもらえない」と感じ、ストレスや摩擦が生まれてしまうのです。

【価値観の違いから起きるすれ違いのメカニズム】

① 自分の価値観(例:丁寧さ重視)

② 相手にも同じ価値観を期待(=“こうあるべき”)

③ 相手が異なる行動を取る(例:スピード重視)

④ 「わかってくれない」と不満・摩擦が生まれる

では、どうすれば価値観の違いによるすれ違いを減らせるのでしょうか?

答えは、自分の価値観を大切にしつつも、「相手の価値観も同じくらい尊重する姿勢」を持つことです。

ここからは、自他の価値観を認め合い、健全な関係性を築いていくための5つの具体的なヒントを紹介します。

1. 自分の価値観に「名前をつけてみる」

最初のステップは、自分が大切にしている価値観を言葉にして可視化することです。

例えば、「誠実さ」「スピード感」「協調性」「論理性」「丁寧さ」「創造性」「責任感」など、数ある価値観の中で、自分にとって特に譲れない軸は何か?を振り返ってみてください。

ここで重要なのは、良し悪しで判断しないことです。

たとえば、「私は“無駄を省く”を大切にしている」「“周囲への気配り”を重視している」など、行動の背後にある信念や優先順位に気づくことが、自他理解の土台になります。

2. 「違いは悪」ではなく「違いは資源」と捉える

相手が自分と異なる価値観を持っていることに、苛立ちや否定的な感情を抱くのは自然なことです。しかし、それを乗り越える鍵は、「違いは組織にとってのリスクではなく、むしろ資源である」と捉えることにあります。

自分にはない視点を持っているからこそ、チームで補完し合える可能性が生まれます。

たとえば、「慎重な人」と「即断即決の人」は時に対立しがちですが、実はそのバランスこそが、判断ミスを防ぎ、意思決定を多角的にできる強みになるのです。

3. 「相手が大事にしているものは何か?」に目を向ける

人は、自分の話を聞いてもらえると安心し、信頼が生まれます。

それと同じように、相手の価値観を知ろうとする姿勢そのものが関係性を前向きにする第一歩です。

具体的には、「なぜその判断をしたのか?」「なぜその言葉を選んだのか?」といった行動の背景を、否定せずに聴く・観察することが有効です。

たとえば、「ミスを防ぐために丁寧な手順を踏んでいる」「チーム全体の効率を考えて提案している」といった相手の“意図”に気づけたとき、不満ではなく理解が生まれます。

4. 自分の「ベキ」を見直してみる

「こうすべきだ」「これが当たり前だ」と思ったときに、その“ベキ”がどこから来ているのかを考える習慣をつけましょう。

その価値観は、前職の影響かもしれません。学生時代の経験かもしれません。あるいは、特定の上司の影響かもしれません。

その“ベキ”を持っていること自体が悪いのではなく、他人に当てはめようとすると対立の火種になるということを自覚することが大切です。

5. 「わかってくれない」ではなく「伝えていないかも」と振り返る

コミュニケーションのズレが生じたとき、つい「相手の理解力が足りない」と思いがちですが、本当に自分の想いを言葉にできていたか?を振り返る視点も持ちましょう。

伝える側にとっては“当然”でも、受け手にとっては初めて聞く情報というケースは少なくありません。

言葉で伝える/例を挙げる/一度で伝えたと思わない――こうした工夫で、価値観の共有は格段にスムーズになります。

【自他の価値観を認め合うための5つの行動】

① 自分の価値観に名前をつける

② 違いを「資源」として見る

③ 相手の大切にしていることに目を向ける

④ 自分の“ベキ”を手放す視点を持つ

⑤ 「伝わらない」の前に「伝えているか」を振り返る

おわりに|「違い」は、分断ではなく成長のきっかけ

職場には、さまざまな価値観が混在しています。

「頑張っているのに、なぜわかってもらえないのか?」という気持ちは、とても正直で大切な感情です。

しかしその裏側には、相手に“自分の正しさ”を無意識に期待してしまう構造があります。

そのことに気づき、自分の価値観と相手の価値観を両立させる方法を模索できる人こそ、信頼され、影響力のあるビジネスパーソンへと成長していけるのです。

どうか、「違うこと」に怖がらず、「違うからこそ話してみよう」「聴いてみよう」と思える対人関係を目指してみてください。

あなたのその一歩が、職場の空気を変え、より良い協働の土台を作ります。

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