善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

新入社員応援連載|第4回

「やらされ感」は、被害者と傍観者をつくる

社会人になって数週間。緊張の連続だった日々から少しずつリズムができてくると同時に、「なんとなくやらされている感じがする」「目の前の仕事に意味を感じにくい」といった“感覚の鈍化”を覚える方が増えてきます。

この“やらされ感”は、単なる甘えや怠けではありません。自分の意志よりも外部の指示や枠組みに行動が支配されていると、人は内側のモチベーションを失っていくのです。

そしてもうひとつ忘れてはならないのは、“やらされ感”が生まれると、人は無意識に「被害者」や「傍観者」として振る舞い始めるということです。

「自分は与えられたことをやっているだけ」

「うまくいかなくても、それは仕組みや環境のせい」

「決めるのは上の人。私はただ従っているだけ」

こうした意識が強くなると、自らの選択や行動への責任感が薄れ、主体性も創意工夫も削がれてしまいます。

では、どうすればこの“やらされ感”から抜け出し、仕事に自分なりの意味を見出していけるのでしょうか。

その鍵は、「内省(リフレクション)」の習慣を持つことにあります。

仕事に意味を取り戻すカギは「内省」にある

“内省”とは、単に「反省する」「振り返る」ことではありません。

行動の背後にある自分の価値観や動機、思考パターンに目を向けることです。

たとえば、毎日繰り返されるルーティンの中にも、

• 「なぜこの作業があるのか?」

• 「この仕事が誰に、どう役立っているのか?」

• 「この経験から自分は何を学んでいるのか?」

といった問いを立ててみることで、行動が「意味」とつながり、主体性が回復していきます。

実際、主体性を持って働いている人ほど、日々の業務の中で“自分なりの問い”を持っています。これは決して特別な才能ではなく、自分自身に問いかける“習慣”の違いなのです。

「やらされ感」が生まれる心理的メカニズム

心理学では、“やらされ感”は「外発的動機づけ」が支配的な状態として説明されます。

つまり、

• 上司に評価されるから

• ミスをしないように怒られないために

• ノルマをこなすために

という“外側の基準”で動いていると、人の内なる動機は減衰していきます。

一方で、「自分で選んでいる」「意味を感じている」という感覚は、“自己決定感”や“自己効力感”を高め、行動の質を上げることが研究でも明らかになっています。

“やらされ感”の克服には、「内発的動機づけ」を育てる視点が不可欠です。

それを可能にするのが、「内省=自分との対話」なのです。

内省を日常に取り入れる3つの習慣

ここからは、誰でも始められる「内省の習慣化ステップ」を3つご紹介します。

これらは特別なノートやツールがなくても、今日から実践可能です。

1|“問い”から始める一日

朝、出社や始業前に「今日はどんな1日にしたいか?」と問いかけてみましょう。

たとえば、

• 「今日、誰との関係を一歩深めたいか?」

• 「今日の自分はどんな姿勢で仕事に臨みたいか?」

• 「どんな小さなチャレンジができそうか?」

こうした問いを立てることで、行動に意図が生まれ、“ただ過ごす”1日が“意味ある”1日に変わっていきます。

2|感情の“振り返りメモ”を取る

一日の終わりに、「今日、心が動いた瞬間はあったか?」と振り返ってみましょう。

「イライラした」「嬉しかった」「焦った」「感謝した」など、感情の動きは自分が何を大切にしているかのサインです。

感情の動きから以下のような振り返りをしてみましょう。

• その時、何が起きたか?

• 自分はどう感じたか?

• 何を学んだか? どう捉え直せるか?

この作業を毎日2~3分でも続けていくことで、行動と感情のパターンが整理され、自分の“軸”が育っていきます。

3|「意味づけノート」をつける

仕事の中で、「意味を見出しにくい業務」に対して、次のような視点で書き出してみてください。

• この仕事は、誰のために、どう役立っているか?

• これを続けたら、自分にはどんな力がつくか?

• この経験が、将来どんな場面で活きそうか?

一見「単純作業」に見える仕事の中にも、意識を向けると“育てたい力”や“社会とのつながり”が見えてくることがあります。

「意味は与えられるものではなく、見出すもの」

ここまでご紹介したように、やらされ感を乗り越えるカギは、自分自身で“仕事に意味を与える視点”を持つことにあります。

そしてそれは、誰かに教えてもらうものではなく、自分の内側で育てる「視点の習慣」です。

かつて私が関わった若手社員の方が、「言われたことをやるだけの毎日がつらい」と話していたのを思い出します。

その方は、1ヶ月間、「今日の仕事の中で“人の役に立ったと感じたこと”を1つ書く」というワークに取り組みました。

最初は苦戦していましたが、2週目には「報告書のフォーマットを整えたら先輩に喜ばれた」「備品整理したことで使いやすくなったと感謝された」など、仕事の中に“価値”を見出す視点が少しずつ育ち、笑顔も増えていったのです。

まとめ|仕事を“意味ある営み”にするのは、あなた自身

「やらされている」「なんとなく疲れる」──

そんな日々にこそ、自分に問いを立ててください。

「私は今、何のためにこの仕事をしているのか?」

「今日のこの経験は、自分にとってどんな意味を持つのか?」

問いを持つことは、視点を変え、行動を変え、未来を変えていく力になります。

仕事に意味を見出す力は、誰かから与えられるものではなく、

あなた自身の中から育てる“視点の力”です。

小さな習慣から、あなたの中の“やらされ感”を超えていきましょう。

今日から、仕事は「自分で選ぶ」営みになります。

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