心のエネルギー「ストローク」の習慣|TA心理学に学ぶ人間関係の栄養補給法
人間関係を育てる力|TAで学ぶ対人理解と関係構築スキル入門:第3回
はじめに|気づかれない“心の飢え”が、関係を壊す
ある若手社員がこう話してくれました。
「毎日頑張っているつもりなんですが、誰にも気づかれていない気がして…。
こんなにやってるのに、なんで認めてもらえないんでしょうか?」
この言葉に、ハッとさせられた方もいるのではないでしょうか。
実は、こうした“心の渇き”は、日常の職場の中にごく普通に存在しています。
そしてそれは、「関係性の不全」ではなく、「心の栄養不足」であることが少なくありません。
TA(交流分析)心理学では、この心の栄養を「ストローク(Stroke)」と呼びます。
🌱 ストロークとは?
人と人とのあいだで交わされる“心のふれあい”のこと。
具体的には「声かけ」「表情」「しぐさ」「言葉」などすべてが含まれます。
このストロークのやり取りがスムーズに循環しているチームには、信頼や安心感があります。
逆に、ストロークが少ない職場では、ちょっとした指摘が「否定」に聞こえたり、孤立や無力感につながったりします。
今回の記事では、「ストロークとは何か?」「どうやって意識的に届けるのか?」
そして「人間関係を育てる“エネルギー補給”の習慣」について、TA心理学の視点からわかりやすく解説します。
第1章|「ストローク」があるかないかで、関係の質が変わる
1-1|人間は“存在を認められたい”生き物
私たち人間には、「自分の存在を誰かに認めてほしい」という根源的な欲求があります。
それは「承認欲求」とも呼ばれますが、もっとシンプルに言えば、
“ここにいていい”という感覚を、誰かから受け取りたい。
その感覚を与えてくれるのが、「ストローク」です。
1-2|ストロークは“存在の手渡し”
たとえば、こんな言葉をかけられたらどう感じるでしょうか?
• 「お疲れさま。今日も頑張ってたね」
• 「あの提案、すごくよかったよ」
• 「声をかけてくれてありがとう。救われたよ」
これらはすべて、相手の存在を“ちゃんと見てるよ”というメッセージです。
こうしたやりとりが日常の中にあるかどうかで、
その職場やチームの“関係の温度”はまったく違ってきます。
第2章|ストロークの種類と“伝わり方”のちがい
ストロークには、いくつかの分類があります。
まずは基本となる「ストロークの4分類」をご紹介しましょう。
2-1|ストロークの4分類
| 区分 | 内容 | 例 |
| ✅ 肯定的 × 条件なし | 存在そのものを認める | 「あなたがいて助かってる」 |
| ✅ 肯定的 × 条件あり | 行動・成果を認める | 「あの資料、すごくわかりやすかった」 |
| ⚠ 否定的 × 条件あり | 行動への指摘 | 「締切に間に合わなかったね。次は注意しよう」 |
| ⚠ 否定的 × 条件なし | 存在そのものの否定 | 「君って本当にダメだよね」※NG |
2-2|気をつけたい“否定的ストローク”
実は、人間は「ストロークがゼロ」の状態よりも、否定的ストロークがあったほうが“生きてる実感”を得られる傾向があります。
たとえば、完全に無視されるよりも、
怒られる方が「存在を認められている」と感じる人もいます。
しかし、それが続くと自己否定が深まり、メンタルヘルスにも影響します。
だからこそ、“肯定的ストローク”の習慣化が必要なのです。

第3章|ストロークを“習慣”にする3ステップ
「ストロークを意識しましょう」と言われても、最初はピンとこないかもしれません。
でも、日常の中に少しだけ意識を入れるだけで、関係性は変わります。
ここでは、ストローク習慣化の3つのステップをご紹介します。
▶ STEP 1|「見る・気づく」を意識する
まずは、「観察する」ことから。
相手のちょっとした変化、頑張り、小さな成果に気づくことが第一歩です。
・いつもより早く出社していた
・後輩に声をかけていた
・悩んでいた仕事を前進させていた
これらはすべて、ストロークのタネです。
▶ STEP 2|「短い言葉」で伝えてみる
気づいたら、その場で言葉にすることが大切です。
難しく考える必要はありません。
「今日の〇〇、いい感じだったね」
「さっきの対応、落ち着いてたね」
「ありがとう。助かったよ」
ストロークは、長くなくていい・完璧じゃなくていい。
とにかく「伝える」ことが重要です。
▶ STEP 3|“受け取る力”も育てる
そしてもうひとつ大切なのが、「受け取る力」。
誰かに褒められたら、「そんなことないです」ではなく、
「ありがとうございます」と素直に受け取る。
これもまた、ストロークの循環を生み出します。
第4章|ストロークがある組織は「心理的安全性」がある
ストロークが自然に飛び交う職場は、心理的安全性が高いと言えます。
つまり、「この場で自分を出しても大丈夫」と思える空気があるのです。
その結果…
• メンバー同士の信頼感が高まる
• 自主的な行動が増える
• 意見が活発に出るようになる
• 離職率が下がる
など、組織にとっても大きなメリットがあります。
逆に、「誰も声をかけない」「沈黙が多い」職場は、表面上は平和でも、
メンバーの内側は孤独で満たされていないことが多いのです。
まとめ|“伝える・受け取る”は、誰でもできるチームづくり
ストロークは、特別なスキルではありません。
ほんの一言、ほんのひとしぐさが、相手の心に温もりを届けます。
難しい人間関係に悩んでいるときほど、
まずは「自分が誰かに届けてみる」ことから始めてみましょう。
「ありがとう」
「見てたよ」
「いいね」
それだけで、関係の空気は少しずつやわらかくなっていきます。
🌱 あなたにエールを込めて
人と人のあいだには、目に見えない“こころの線”がつながっています。
その線を太く、しなやかにしていくのが、ストロークの力です。
まずは、今日一日で「ひとつストロークを届ける」ことから。
きっと、あなた自身も少し心が温まるはずです。








