善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

「言った」「言わない」はもう終わりにしよう!チーム内の情報共有を「最強」にする仕組みづくり

皆さん、おはようございます!坂本です。

先日の記事では、チーム全員が「ワクワク」する目標設定の重要性についてお話ししました。どんなに素晴らしい目標を立てても、それを達成するためには、チームメンバー間の円滑なコミュニケーションと情報共有が不可欠です。

しかし、多くのチームでこんな課題に直面しているのではないでしょうか?

  • 「あれ、この話、前にしたはずなのに…」
  • 「情報が一部の人にしか伝わっていないみたいだ」
  • 「会議で決まったことが、実行されていないのはなぜだろう?」
  • 「言いたいことはあるけど、どう伝えたらいいか分からない」

中小企業においては、メンバー間の距離が近いからこそ、「言わなくてもわかるだろう」という暗黙の了解や、「空気を読む」文化が生まれやすく、それが「言った」「言わない」といったコミュニケーションエラーや、情報共有の滞りを生み出す原因となることがあります。

今回は、これらの課題を解消し、チーム内の情報共有を「最強」にするための具体的な仕組みと、風通しの良いコミュニケーション文化を育む方法について、私の経験と共にお伝えしていきますね。

なぜ「言った」「言わない」が起きるのか?~中小企業にありがちな背景~

「言った」「言わない」問題は、単純な伝達ミスだけでなく、その背景に組織特有の課題が潜んでいることがほとんどです。

1.「阿吽の呼吸」が裏目に出る文化

中小企業では、長年の付き合いや少人数ゆえの「察する文化」「阿吽の呼吸」が根付いていることがあります。これは一見、スムーズな連携に見えますが、新しいメンバーが加わった際や、業務が複雑になった際に、「明文化されない情報」や「暗黙のルール」が壁となり、「言わなくても分かるだろう」が「知らないと動けない」に変わってしまいます。

2.情報共有の「チャネル」が確立されていない

「どこに情報を共有すればいいのか?」「誰に伝えれば確実なのか?」

口頭での伝達が主で、情報が散逸しやすい、あるいは一部のキーパーソンに情報が集中してしまい、必要な情報が必要な時に、必要な人に届かないという状況が起こりがちです。

3.「心理的安全性」の欠如が本音を阻む

前回の記事でもお話しした「心理的安全性」が低いチームでは、「こんなこと聞いていいのかな」「今さら質問しにくい」といった遠慮が生まれます。結果として、不明点を曖昧なままにしてしまったり、重要な懸念事項が報告されなかったりすることで、後になって大きな問題に発展することがあります。

4.リーダーの「伝える力」と「聞く力」の不足

「言ったのに伝わらない」と感じるリーダーの中には、「どう伝えるか」よりも「何を伝えるか」に終始してしまったり、メンバーが「なぜ伝わらなかったのか」を汲み取る「聞く力」が不足していたりする場合があります。一方的に情報を流すだけでは、真の共有は生まれません。

これらの背景が複雑に絡み合い、「言った」「言わない」問題や情報共有の停滞を引き起こし、チームの「実践力」を低下させてしまうのです。

情報共有を「最強」にする3つの仕組みと実践術

それでは、チーム内の「言った」「言わない」をなくし、情報共有を「最強」にするための具体的な仕組みと実践術をご紹介します。

仕組み1:情報共有の「基本ルール」を明確にする

まずは、チーム内で「情報の共有」に関する共通認識と基本ルールを設けることから始めましょう。

1.「報・連・相」を形骸化させない!「目的」と「質」を重視する

「報・連・相」(報告・連絡・相談)は、多くの企業で定着している言葉ですが、形骸化しているケースも少なくありません。単に義務として行うのではなく、その「目的」を再認識させましょう。

  • 報告: 「今どうなっているか」を共有し、状況を把握してもらうため。
  • 連絡: 「これからどうするか」を共有し、認識を合わせるため。
  • 相談: 「どうすればいいか」を共に考え、問題解決を図るため。

そして、それぞれの「質」を高めるために、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識した伝え方を徹底しましょう。特に、「結論から話す」「事実と意見を区別する」ことを習慣化させます。

2.「共有する情報」と「共有しない情報」の基準を設ける

「何でもかんでも共有」では情報過多になり、本当に必要な情報が埋もれてしまいます。

  • 共有必須の情報(全体共有): 会社の重要方針、顧客への影響が大きい情報、全社的なルール変更など。
  • 共有推奨の情報(関連部署・メンバー): プロジェクトの進捗、特定の顧客とのやり取り、業務改善アイデアなど。
  • 個人に任せる情報: 個人のスケジュール管理など。

この基準を明確にすることで、情報共有の「ノイズ」を減らし、メンバーが「どの情報に注目すべきか」を判断しやすくなります。

3.情報共有ツールとその使い方の「共通認識」を作る

口頭、メール、チャットツール、プロジェクト管理ツールなど、情報共有のチャネルは多岐にわたります。

  • 「この情報は、このツールで共有する」というルールを決めましょう。
    • 例:「緊急の連絡は電話、テキストベースの連絡はチャット、資料共有や進捗管理はプロジェクトツール」
  • ツールの通知設定や閲覧習慣についても、チーム内で話し合い、最低限のラインを設定します。「通知が多すぎて見ない」とならないよう、見直しも定期的に行いましょう。

仕組み2:効果的な「会議運営」で情報を「活用」する

会議は、情報共有の重要な場であると同時に、「情報が共有されない」「決まらない」場になってしまうこともあります。会議を「最強の情報共有の場」に変えましょう。

1.「目的」を明確にした事前準備を徹底する

  • アジェンダ(議題)の事前共有: 何を話し、何を決定するのかを明確にしたアジェンダを、会議前に共有します。
  • 資料の事前配布: 会議中に資料を読み込む時間をなくし、議論に集中できるようにします。
  • 会議の「ゴール」設定: 「この会議で何を決めるのか」「最終的に何を得たいのか」を明確にすることで、議論が脱線するのを防ぎます。

2.会議中の「ファシリテーション」を強化する

  • 参加者全員からの発言を促す: 意見を言わないメンバーにも「〇〇さんはどう思いますか?」と声をかけ、全員が参加できる雰囲気を作ります。
  • 意見の「見える化」: ホワイトボードやオンラインツールを使って、出た意見や決定事項をリアルタイムで書き出し、全員が目で確認できるようにします。
  • 議事録は「決定事項とToDo」に絞る: 長文の議事録は読まれません。誰が、何を、いつまでにやるのか(決定事項とタスク、担当、期限)を簡潔にまとめ、すぐに共有します。

3.「チェックイン」「チェックアウト」を会議でも実践する

前回の目標設定でも触れましたが、会議の冒頭で「今日の会議で期待すること」、会議の終わりに「今日の収穫と次のアクション」を共有する「チェックイン・チェックアウト」を取り入れると、参加者の当事者意識が高まり、会議の質が向上します。

仕組み3:「心理的安全性」を高め、本音のコミュニケーションを促す

どんなに仕組みを整えても、根本に「心理的安全性」がなければ、情報共有は停滞します。これは、リーダーの意識的な働きかけが最も重要な部分です。

1.リーダーが「質問」と「傾聴」の手本を示す

  • 「教えてほしい」という姿勢: リーダー自身が「分からないことは素直に質問する」「メンバーの意見に耳を傾ける」姿勢を常に示すことで、メンバーも安心して質問や意見ができるようになります。
  • 「なるほど」から入る傾聴: メンバーの発言に対して、すぐに否定せず、「なるほど、そう考えたんだね」「なぜそう思ったの?」と、まずは相手の意図や背景を理解しようと努めましょう。

2.「小さな成功体験」を共有し、承認する文化

  • 「情報共有がうまくいった事例」を積極的に称賛する: 「〇〇さんがすぐに情報を共有してくれたおかげで、△△のミスを防げたよ、ありがとう!」など、具体的な行動とその成果を褒めることで、良い習慣がチームに広がります。
  • 「失敗」を「学び」に変える対話を促進する: 「言った」「言わない」で問題が起きた際に、個人を責めるのではなく、「どうすれば今後はもっとスムーズに情報が伝わるだろう?」と、チーム全体で改善策を考える機会に変えましょう。

3.定期的な「1on1ミーティング」の実施

リーダーとメンバーが定期的に(週に1回~月に1回など)個別に短い面談を行う「1on1ミーティング」は、心理的安全性を高める上で非常に有効です。

  • 形式張らず、メンバーの悩みや困りごと、キャリアの相談など、本音で話せる機会を設けます。
  • ここでは、業務の進捗確認だけでなく、「困っていることはないか?」「チームへの要望はないか?」といった、メンバーの心理的な側面にも耳を傾けましょう。

まとめ:最強の情報共有は、チームの「実践力」を爆発させる

いかがでしたでしょうか?

今回は、「言った」「言わない」問題をなくし、チーム内の情報共有を「最強」にするための3つの仕組みと実践術をお伝えしました。

  1. 情報共有の「基本ルール」を明確にする
  2. 効果的な「会議運営」で情報を「活用」する
  3. 「心理的安全性」を高め、本音のコミュニケーションを促す

情報共有は、チームが目標を達成し、新しい挑戦をするための「血液」のようなものです。この血液が滞りなく流れることで、チームの「実践力」が爆発的に高まり、持続的な「成長」が加速します。

特に、人間関係が密になりやすい中小企業だからこそ、曖昧さをなくし、明確なルールと、心理的な安心感を両立させるコミュニケーションの仕組みが不可欠です。

ぜひ今日から、あなたのチームで「言った」「言わない」をなくすための具体的な一歩を踏み出してみてください。それが、貴社のチームをさらに強く、しなやかにするための確かな道となるでしょう。

「言った!」「聞いてない!」というコミュニケーションの断絶は、本当に多くの組織で頻発しています。多くのビジネスパーソンにお心当たりがあるのではないでしょうか。

そうした状況にある組織のリーダーの方々に「心理的安全性」について尋ねると、驚くほど多くの方が「理解している」「ある程度は整っている」と答えられます。

このギャップに直面すると、私もコンサルティングの現場で思わず「腰を抜かす」(心の中で)ことがあります。

なぜ、これほどまでに認識と実態に乖離が生まれるのでしょうか?

それはおそらく、

  1. 心理的安全性」の定義が、都合よく解釈されている可能性があるから:「仲が良いこと」「和気あいあいとしていること」を心理的安全性と同一視しているケースが少なくありません。しかし、本当の心理的安全性は、意見の衝突や異なる視点を歓迎し、建設的な議論ができる土壌のことです。単に表面的な友好関係があるだけでは、「言った」「聞いてない」問題の根本は解決しません。
  2. リーダー自身の「聴く力」が不足している、あるいは過信しているから:リーダーは「言った」つもりでも、メンバーが「聞けていない」背景には、「話しやすい雰囲気」が不足している、質問しづらい、あるいはリーダー自身が一方的に話している、といった問題が潜んでいることがあります。リーダーが「自分は聞いている」と思っていても、メンバー側は「ちゃんと聞いてもらえていない」と感じているかもしれません。
  3. 「建前」と「本音」の文化が根深いから:特に日本の中小企業においては、「和を尊ぶ」文化や、上司への遠慮が強く、メンバーが本音を言わない(言えない)ことが常態化している場合があります。リーダーが「何か言いたいことは?」と尋ねても、「特にありません」と返ってくるのは、心理的安全性が担保されていない証拠でもあります。

この「認識のズレ」こそが、組織変革において最も厄介で、時間を要する部分だと感じています。表面的な「理解」ではなく、「行動」と「結果」に現れる真の心理的安全性をどう浸透させていくかだと考えています。

今回の記事が、そうした「認識のズレ」に気づき、具体的な行動へと繋がるきっかけになれば幸いです。

次回の記事では、チームのパフォーマンスを最大化するための「役割分担と協働」について深掘りしていきます。どうぞお楽しみに!

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