善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

遠慮はもうやめよう!「私」も「あなた」も大切にするアサーティブな伝え方

こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。

TA心理学連載のDay4、いかがお過ごしでしょうか? Day1で「自分の心の傾向」、Day2で「相手の心の傾向」を理解し、Day3では人間関係の「心理ゲーム」から抜け出すヒントをお伝えしました。

さて、今日は、多くのビジネスパーソンが直面するコミュニケーションの課題、「自分の意見をどう伝えればいいのか?」というテーマに焦点を当てます。

あなたは、こんな風に感じたことはありませんか?

  • 「会議で自分の意見を言いたいけれど、反論されるのが怖くて黙ってしまう」
  • 「部下や同僚に改善してほしいことがあるけれど、角が立つのが嫌で言えない」
  • 「上司に無理な仕事を振られても、断れずに引き受けてしまう」
  • 「言いたいことを言ったら、相手との関係が悪くなってしまうのではないか…」

これらの悩みは、「自分の意見を主張すること」と「相手との良好な関係を維持すること」のバランスをどう取るかという、非常にデリケートな問題から生じています。

今日お話しするのは、そのバランスを両立させるためのコミュニケーションスキル、「アサーティブネス(Assertiveness)」です。そして、TA心理学の重要な概念である「ストローク(Stroke)」を理解することで、アサーティブなコミュニケーションがいかに人間関係を豊かにするかを解説していきます。

「心の栄養」ストロークとは?~人間関係を育む基本要素~

アサーティブネスについて語る前に、TA心理学の非常に大切な概念である「ストローク」について理解しておきましょう。

ストロークとは、TA心理学において「相手の存在や価値を認める働きかけ」のことを指します。これは、赤ちゃんが肌に触れてもらうことで安心感を得るように、私たち人間が精神的に生きていく上で不可欠な「心の栄養」のようなものです。

ストロークには、大きく分けて以下の種類があります。

1. ポジティブ・ストローク(肯定的ストローク)

  • 特徴: 相手の存在や行動を肯定的に認め、価値を与える働きかけ。
    • :
      • 「ありがとう」「助かったよ」(言葉)
      • 「よくやったね!」(言葉と表情)
      • 笑顔、うなずき、アイコンタクト(非言語)
      • 「さすがだね」「君のアイデアは素晴らしい」(評価)
  • 効果: 相手の自己肯定感を高め、行動を促し、信頼関係を深めます。

2. ネガティブ・ストローク(否定的ストローク)

  • 特徴: 相手の存在や行動を否定的に認め、価値を損なう働きかけ。
    • :
      • 「ダメだね」「使えないな」(言葉)
      • 無視、ため息、軽蔑の眼差し(非言語)
      • 「お前はいつもそうだ」(人格否定)
  • 効果: 相手の自己肯定感を低下させ、萎縮させたり、反発を招いたりします。

3. 条件付きストロークと無条件ストローク

    • 条件付きストローク: 「~したら」「~できたら」という条件付きで与えられるストローク。
      • 例:「この仕事を終わらせたら褒めてあげるよ」(ポジティブ条件付き)
        • 例:「ミスをしたら怒るぞ」(ネガティブ条件付き)
    • 無条件ストローク: 相手の存在そのものに対して与えられるストローク。
      • 例:「生まれてきてくれてありがとう」「あなたがいてくれて嬉しい」(ポジティブ無条件)
      • 例:「お前なんか生まれてこなければよかった」(ネガティブ無条件)

私たちは、ポジティブなストロークだけでなく、たとえネガティブなストロークであっても、「何もない」よりはマシだと感じてしまうことがあります。これは、人間が「誰かに認められたい」という根源的な欲求を持っているからです。

しかし、健全な人間関係を築くためには、ポジティブなストロークを積極的に与え、受け取ることが不可欠です。そして、ネガティブなストロークを避けるだけでなく、建設的なフィードバックをストロークとして与えるスキルも重要になります。

「私」も「あなた」も大切にするアサーティブネスとは?

ストロークの概念を理解した上で、いよいよアサーティブネスについて掘り下げていきましょう。

アサーティブネスとは、「相手の権利や意見を尊重しながら、自分の意見、感情、要求を正直に、率直に、かつ適切に表現するコミュニケーションスタイル」のことです。

これは、以下の3つのコミュニケーションスタイルと対比することで、より明確になります。

1. 非主張的(Non-Assertive)スタイル

  • 特徴: 自分の意見や感情を表現せず、相手の意見を優先しすぎる。
  • 結果: 自分の欲求が満たされず、ストレスが溜まる。相手からは「何を考えているか分からない」「意見がない」と思われがち。
  • : 「何でもいいです」「私が我慢すれば…」「すみません、私が悪いです」

2. 攻撃的(Aggressive)スタイル

  • 特徴: 自分の意見や感情を一方的に押し付け、相手の権利や感情を無視する。
  • 結果: 自分の欲求は満たされるかもしれないが、相手との関係性が悪化する。相手に不快感や敵意を抱かせやすい。
  • : 「お前が悪いんだ!」「私の言う通りにしろ!」「そんなことだからダメなんだ」

3. アサーティブ(Assertive)スタイル

  • 特徴: 相手を尊重しつつ、自分の意見、感情、要求を正直かつ適切に表現する。
  • 結果: 自分の欲求も満たされやすく、相手との良好な関係も維持できる。相互理解と信頼が深まる。
  • : 「私は~だと考えます。あなたはどう思いますか?」「~してくださると助かります」「~という行動は、私には〇〇だと感じます」

アサーティブなコミュニケーションは、決して「わがままに主張すること」ではありません。むしろ、相手の存在を認め、ポジティブなストロークを与えながら、同時に自分の心も大切にする、非常に成熟したコミュニケーションスタイルなのです。

アサーティブな伝え方を実践する具体的な方法

では、具体的にどうすればアサーティブなコミュニケーションができるようになるのでしょうか? いくつかのステップとフレーズをご紹介します。

ステップ1:自分の感情や考えを明確にする(「私」を主語に)

まず、自分が何を伝えたいのか、どう感じているのかを明確にすることが重要です。そして、それを「私」を主語にして表現します。

  • NG: 「あなたのやり方は間違っている!」(攻撃的)
  • OK: 「私は、このやり方だと〇〇という懸念があります。」

ステップ2:客観的な事実を伝える

感情的にならず、具体的な事実に基づいて状況を説明します。

  • NG: 「いつも連絡が遅い!」(攻撃的、主観的)
  • OK: 「先週の〇曜日に依頼した件について、まだ連絡が来ていませんね。」

ステップ3:相手の立場や感情を考慮する(共感を示す)

相手の意見や感情を尊重する姿勢を見せることで、相手も耳を傾けやすくなります。

  • NG: 「あなたの意見は全く理解できない。」
  • OK: 「〇〇さんの意見も理解できます。その上で、私は~だと考えます。」

ステップ4:自分の要求や提案を具体的に伝える

何をどうしてほしいのか、具体的な行動や解決策を明確に伝えます。

  • NG: 「なんとかしてください。」(非主張的、曖昧)
  • OK: 「つきましては、〇〇までに〇〇の対応をお願いできますでしょうか。」

実践フレーズ例

これらのステップを組み合わせた具体的なフレーズを見てみましょう。

  • 意見を伝える時: 「私は~だと考えています。この点について、皆さんはどう思われますか?」 「~というデータを見ると、私は〇〇という結論に至りました。」
  • 依頼・要求をする時: 「~してくださると、私はとても助かります。」 「もし可能であれば、〇〇までに~をお願いできますでしょうか。」
  • ノーを言う時: 「ご提案ありがとうございます。ですが、現状では~という理由でお引き受けすることが難しいです。」 「お気持ちは嬉しいのですが、今回は見送らせていただきます。」
  • フィードバックをする時(建設的なネガティブストローク): 「〇〇さんの〇〇という行動は、私には△△だと感じました。もし〇〇のようにすると、もっと良くなるかもしれませんね。」 (行動を指摘し、自分の感情を伝え、改善案を提示する)

アサーティブなコミュニケーションは、練習が必要です。最初はぎこちなく感じるかもしれませんが、意識的に実践することで、徐々に自然にできるようになります。

ワーク:「アサーション表現練習」~あなたの言葉で伝えてみよう~

それでは、今日から実践できるワークです。アサーティブな表現を練習してみましょう。

【ワークの進め方】

  1. 最近、あなたが「本当はこう言いたかったのに言えなかった」と感じた場面を一つ思い出してください。
    • 例:上司に無理な仕事を振られた時、同僚の行動に不満を感じた時、顧客からの不当な要求があった時など。
  1. その場面で、あなたが言いたかったこと、感じていたことを具体的に書き出してみましょう。
  2. 次に、その内容を「アサーティブな表現」に書き換えてみましょう。
    • 上記の「実践フレーズ例」を参考に、「私」を主語に、事実に基づいて、相手を尊重しつつ、自分の要求や提案を明確に伝えることを意識してください。
    • 例(上司に無理な仕事を振られた場合):
      • 言いたかったこと: 「こんなの無理だよ!」「私ばかりに押し付けないで!」
      • アサーティブな表現: 「〇〇部長、この仕事を今週中に完了させるのは、現在の私の業務量とスキルを考慮すると非常に困難だと感じています。もしこの仕事を優先するなら、〇〇の業務の納期を調整していただくか、〇〇さんのサポートをいただけると助かります。」
  3. 書き換えたアサーティブな表現を、声に出して練習してみましょう。
    • 実際に相手に話すように、表情や声のトーンも意識して練習すると効果的です。

このワークを繰り返すことで、いざという時に、感情的になったり、我慢したりすることなく、冷静かつ効果的に自分の意見を表現できるようになります。

まとめ:アサーティブネスで「私」も「あなた」も輝く関係へ

今回は、TA心理学の「ストローク」の概念と、「私」も「あなた」も大切にする「アサーティブネス」について解説しました。

  • ストロークは心の栄養であり、ポジティブなストロークが人間関係を育む。
  • アサーティブネスは、相手を尊重しつつ、自分の意見を正直に伝える成熟したコミュニケーションスタイル。
  • 「私」を主語に、事実に基づき、共感を示しながら具体的に伝えることが重要。

アサーティブなコミュニケーションは、単に自分の意見を主張するだけでなく、相手との信頼関係を深め、健全な相互作用を生み出すための強力なツールです。自分を犠牲にすることなく、また相手を傷つけることなく、互いの価値を認め合い、共に成長できる関係性を築くために、ぜひ今日から実践してみてください。

明日はいよいよ、チームの力を最大化するための「役割」と「人生脚本」の理解について深く掘り下げていきます。どうぞお楽しみに!

もっと深く学びたい方へ:TA心理学ベースの講座で「関係性を変える力」を磨きませんか?

今回の記事で、アサーティブネスが人間関係を豊かにする鍵であることをお伝えしました。自分の意見を適切に伝え、相手との健全な関係を築くことは、ビジネスシーンだけでなく、あらゆる人間関係において不可欠なスキルです。

もし、あなたが

  • 会議で発言力を高めたいが、どうすれば良いか分からない
  • 部下や同僚に建設的なフィードバックを効果的に伝えたい
  • 自分の意見を言えず、ストレスを抱えがち
  • 相手を尊重しながら、自分の要求もきちんと伝えたい

と感じているのであれば、その解決のヒントはTA(交流分析)心理学」にあります。

青森HRラボ(私が勤める会社で運営)では、このTA心理学をベースにした実践的な講座を定期的に開催しています。

89日、23日、913に開催されるこの講座では、

  • 自分自身のコミュニケーションパターンと、アサーティブネスの具体的な実践方法を学ぶ
  • 「ストローク」の概念を深く理解し、ポジティブな人間関係を意図的に育む
  • 若手からベテランまで、あらゆる世代との健全な対話力を高める

などを、ワークを交えながら体系的に学ぶことができます。知識だけでなく、明日から使える実践力を身につけたい方に最適な内容です。

この連載で「もっと知りたい!」と感じた方は、ぜひ一歩踏み込んで、TA心理学の知見をあなたのものにしてみませんか? 講座の詳細はこちらからご確認ください。

【講座詳細はこちら】25夏 実践TA心理学講座  (私が勤める会社で開催します)

ご参加を心からお待ちしています。

お読みいただきありがとうございました。皆さんのキャリアと組織の成長にお役に立てれば幸いです。

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