善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

仕事力向上への第一歩:3つの視点で「働くスキル」を磨く

こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。

前回の記事では、「働く」という言葉の語源が持つ「傍(はた)を楽(らく)にする」という奥深い意味についてお話ししました。この考え方が、AI時代を生き抜くための鍵であり、人生を豊かにする土台となることをお伝えしましたね。

しかし、ただ心構えだけでは不十分です。「誰かを楽にしたい」という熱い想いを形にするためには、それを実現するための「仕事力」が不可欠です。仕事力は、あなたの想いを現実世界で発揮するためのツールであり、より多くの人を幸せにするためのパスポートとなります。

2回目では、その仕事力をどうすれば磨くことができるのか、具体的な3つの視点から、実践的なスキルアップの方法をお伝えしていきます。

1:仕事力とは何か?「スキル」と「スタンス」の両輪

仕事力と聞くと、「専門的な知識」や「特定の技術」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、私が考える仕事力は、それだけではありません。この章では、仕事力を構成する2つの重要な要素についてお話しします。

仕事力を構成する3つの要素

まず、仕事力は大きく3つの要素に分解できます。

  1. 専門スキル(What): あなたが「何をできるか」です。例えば、プログラミング、マーケティング、デザイン、財務分析といった、特定の業務を遂行するための知識や技術のことです。
  2. ポータブルスキル(How): あなたが「どうやるか」です。コミュニケーション能力、問題解決能力、論理的思考力、リーダーシップなど、職種や業界を問わず応用できる汎用的な能力のことです。
  3. スタンス(Why): あなたが「なぜやるか」です。仕事に対する倫理観、責任感、他者への貢献意欲、そして学び続ける姿勢といった、内面的な心のあり方のことです。

これら3つの要素がバランスよく備わってこそ、真の仕事力と言えます。特に「スタンス」は、AIがどれだけ進化しても真似のできない、人間ならではの強みとなります。

スキルは「何をやるか」、スタンスは「どうやるか」

私はよく研修で、「スキルは車、スタンスは運転手」という話をします。どんなに高性能な車(スキル)を持っていても、運転手(スタンス)が目的地(目的)を理解していなければ、その車は宝の持ち腐れです。

例えば、最新のプログラミング言語を習得したとしても、「なぜこのプログラムを作るのか」「このプログラムを使う人がどうなれば嬉しいのか」というスタンスがなければ、ただの自己満足で終わってしまいます。一方、スキルがまだ未熟でも、「誰かのために」という強いスタンスがあれば、必死に学び、困難を乗り越え、やがては素晴らしい仕事を生み出すことができます。

仕事力は、専門スキルやポータブルスキルといった「何をやるか」の側面と、仕事への姿勢や倫理観といった「どうやるか」の側面が、両輪となって機能することで、最大限の力を発揮するのです。

仕事力がもたらす「自己効力感」と自信

仕事力を高めることは、単に成果を出すためだけではありません。それは、あなたに深い「自己効力感」をもたらしてくれます。自己効力感とは、「自分は目標を達成できる力がある」と信じる感覚のことです。

私はこれまで、多くのビジネスパーソンが自信を失っていく姿を見てきました。その原因の多くは、「自分は何もできない」という無力感にありました。しかし、小さなことでも、新しいスキルを身につけ、それが仕事で役立った時、人は「自分にもできるんだ!」という強い自己効力感を抱きます。

この自己効力感は、次の学びへのモチベーションとなり、ポジティブなスパイラルを生み出します。まるで、小さな山を一つ登りきったら、次の山が見えてきて、さらに高い山に挑戦する勇気が湧いてくるようなものです。仕事力を高める旅は、あなたのスキルだけでなく、自分自身への信頼を育む旅なのです。

2:3つの視点で「働くスキル」を磨く

仕事力が「スキル」と「スタンス」の両輪で構成されていることを理解した上で、この章では、具体的な「スキル」を磨くための3つの視点をご紹介します。現代のビジネスパーソンが必ず押さえておくべき、重要な視点です。

視点1:専門性を極める「深掘りのスキル」

まずは、あなたの専門分野を深く掘り下げるスキルです。AIが多くの仕事を代替すると言われる中で、「AIにできないこと」の一つが、まさにこの「専門性の深さ」です。

AIは、過去の膨大なデータを学習することはできますが、その分野の「暗黙知」や「職人技」を身につけることはできません。例えば、ベテランの医師が患者の顔色や話し方から病気の兆候を察知したり、熟練の職人が素材のわずかな違いを感じ取ったりする力は、その分野を深く極めた人にしか持ち得ないものです。

あなたの仕事においても、同様のことが言えます。市場や顧客の動向を誰よりも深く理解する、特定の技術を誰よりも高い精度で使いこなす、といった「深掘りのスキル」は、あなたの市場価値を確固たるものにしてくれます。このスキルを磨くためには、日々の業務を漫然とこなすのではなく、「なぜこのやり方なのか?」と常に問いかけ、知識の背景にある原理や本質を理解しようと努めることが大切です。

視点2:異なる分野を繋ぐ「越境のスキル」

専門性を深める一方で、これからの時代に不可欠なのが、異なる分野を繋ぐ「越境のスキル」です。イノベーションの多くは、異なる分野の知識が掛け合わされることで生まれます。

例えば、デザインの知識を持ったプログラマーが、使いやすい新しいアプリケーションを開発したり、心理学を学んだ営業担当者が、お客様の隠れたニーズを引き出すことに成功したりするケースは枚挙にいとまがありません。

この「越境のスキル」を磨くためには、普段関わらない部署の人と積極的に交流してみたり、自分の仕事とは全く関係のないジャンルの本を読んでみたりすることが有効です。一見無関係に見える知識が、思わぬところであなたの仕事に新しい視点をもたらし、あなたのキャリアを広げてくれます。

視点3:AIを使いこなす「メタ認知のスキル」

AI時代に最も重要なスキルの一つが、「メタ認知のスキル」です。メタ認知とは、「自分自身の思考や行動を客観的に認識する力」のことです。

AIは、私たちが与えた指示に基づいて、驚くほど正確で速いアウトプットを出してくれます。しかし、そのアウトプットが本当に正しいのか、より良い方法はないか、を判断するのは、私たち人間です。この判断を下すためには、自分の思考プロセスを客観的に見つめ、AIの限界や特性を理解するメタ認知のスキルが不可欠です。

例えば、AIが生成した文章をただ受け入れるのではなく、「この文章の論理構成は正しいか?」「読者の心に響く表現になっているか?」と問いを立てる力です。また、AIにどんな質問をすれば、より質の高い答えが引き出せるかを考える力も含まれます。AIを「道具」として使いこなすためには、まず自分自身を「使いこなす」必要があるのです。

3:学びの習慣を身につける具体的な方法

3つの視点で仕事力を磨くことが重要だと分かっても、日々の忙しい中で、どうやって学びを習慣化すればいいのでしょうか。この章では、私がキャリアコンサルタントとして推奨している、誰でもすぐに実践できる学習法をご紹介します。

インプットを「行動」に変える学習法

学びを成果に繋げるためには、インプットした知識をアウトプットし、「行動」に変えることが不可欠です。本を読んだり、セミナーに参加したりするだけでなく、読んだ内容について誰かと話す、ブログにまとめる、あるいは仕事で実際に試してみる、といった行動が重要です。

私はこれを「学習の連鎖」と呼んでいます。

インプット(知識を得る) → アウトプット(表現する) → フィードバック(評価を得る) → アクション(行動する)

このサイクルを意識することで、知識はあなたの血肉となり、次なる成長へと繋がります。

「ラーニングジャーナル」で学びを可視化する

ラーニングジャーナルとは、日々の学びや気づきを記録するノートやアプリのことです。私は多くのクライアントに、このラーニングジャーナルの活用を勧めています。

ジャーナルには、以下の3つの項目を記録します。

  1. 今日の学び: 今日、仕事やプライベートで新しく学んだこと、気づいたことを箇条書きで記録します。
  2. なぜそれが重要か: その学びが、なぜ自分にとって重要なのか、どのような仕事や場面で役立ちそうかを考え、記録します。
  3. 明日何をするか: その学びを、明日、具体的にどのような行動に繋げるかを決め、記録します。

このジャーナルを毎日たった5分間書くだけで、あなたの学びは「流れていく情報」から「積み重なる財産」に変わります。

仕事の中にある「小さな学び」を見つける

学びは、特別な時間や場所でしか得られないものではありません。あなたの日常の仕事の中に、実はたくさんの「小さな学び」が隠されています。

例えば、

  • 上司から受けたフィードバック
  • 同僚との雑談から得た新しい情報
  • 顧客からの質問
  • プロジェクトでの小さな失敗

これらの出来事一つひとつを、「ああ、また失敗した」で終わらせるのではなく、「ここから何を学べるだろう?」と問いかけるだけで、あなたの日常は学びの宝庫へと変わります。

まとめ:仕事力は「善くはたらく」ためのパスポート

「善くはたらく」とは、誰かを楽にするという心のあり方です。そして、その想いを現実のものにするために必要なのが、今回お話しした「仕事力」です。

仕事力は誰かの幸せを創る力

仕事力は、単なる自己満足のためのものではありません。それは、あなたの専門性やスキルを通じて、誰かの問題を解決し、誰かの生活を豊かにし、誰かの心を幸せにするための力です。あなたの仕事力が磨かれるほど、より多くの人を「楽に」することができます。

あなただけの「仕事力」を磨き続ける旅へ

仕事力を磨く旅は、決してゴールがありません。常に変化し続ける世界で、学び続け、成長し続けることが、あなたの人生の羅針盤となります。今回お伝えした3つの視点と学習法を参考に、あなただけの「仕事力」を磨き続ける旅に、今日から出発しましょう。

お読みいただきありがとうございました。皆さんのキャリアと組織の成長にお役に立てれば幸いです。

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