自己肯定感を育む!肯定的ストロークを「素直に受け取る」技術
自己肯定感を育む!肯定的ストロークを「素直に受け取る」技術
こんにちは、坂本です。連載第3回は、ストローク交換の中で「実は最も難しい行動」とも言える、肯定的ストロークの『受け取り方』に焦点を当てます。
前回、私たちはチームの活力を生む肯定的ストロークの「与え方」を学びました。しかし、どれだけ上司や同僚があなたに心の栄養を与えようとしても、あなたが「受け取り拒否」の癖を持っていると、せっかくの栄養は心のコップの外にこぼれ落ちてしまいます。
- 「いえ、私なんて全然です」
- 「たまたまうまくいっただけです」
私たちはなぜ、褒め言葉を素直に「ありがとう」と受け取れず、反射的に否定してしまうのでしょうか?
それは、幼少期に形成された「I’m Not OK」という自己否定の人生脚本や、前回学んだ「ストロークの6つのルール」の一つである「受け取るな」という心の禁止令が深く関わっているからです。
今回は、この「受け取り拒否」の心理的メカニズムを徹底解剖し、心のコップを満たすための「素直な受け取り方」の技術、そして他者からの承認に依存せず、自分で自分を満たす「自己ストローク」の習慣化について、深く掘り下げて解説します。
1. なぜ「受け取り拒否」をしてしまうのか?心のメカニズム
褒め言葉を反射的に否定してしまう行為は、謙遜と見なされがちですが、心理学的には「肯定的ストロークの廃棄」であり、心のコップを空にする最も深刻な原因の一つです。
「受け取るな」の禁止令と心のコップのフタ
前々回に触れた「人生脚本」は、私たちが親や環境から受け取ったメッセージをもとに、幼い頃に無意識に書き上げた「人生のシナリオ」です。この脚本の中に、「自分は価値がない」「愛されるに値しない」という「I’m Not OK」な前提があると、脳は矛盾を避けるために「受け取るな」という禁止令を発します。
- 誰かが褒めてくれる(肯定的ストローク=「You’re OK」)
- しかし、私の脚本は「I’m Not OK」
- 矛盾を解消するため、脳は褒め言葉を即座に否定・廃棄し、心のフタを閉めて、既存の「I’m Not OK」という脚本を守ろうとします。
謙遜とディスカウントの境界線
日本文化では「謙遜」が美徳とされますが、過度な謙遜は「ディスカウント(自分自身の価値を軽視・否定すること)」に繋がり、長期的に自己肯定感を蝕みます。
- 健全な謙遜: 相手の承認に感謝しつつ、「今回はたまたまですが、次はもっと頑張ります」と、努力の方向性に言及する。
- 不健全なディスカウント: 「私なんて…」と自分の存在や能力そのものを過度に否定し、相手が与えてくれたストロークの価値までをも否定してしまう。
他者への否定的ストロークとしての側面
褒め言葉を否定する行為は、ストロークを与えた相手に対しても間接的に否定的なストロークを与えていることになります。
- 相手: 「あなたの仕事は素晴らしい」という肯定的ストロークを与える(私はあなたを正しく見ている)。
- 自分: 「いえ、そんなことありません」(あなたは私のことを見誤っている)。
無意識のうちに、相手の判断力や観察力を否定してしまうため、相手は二度とストロークを与えようとしなくなり、健全な交流が途絶えてしまう原因となります。
2. 褒め言葉を「ありがとう」に変える具体的な技術
受け取り拒否の連鎖を断ち切り、心のコップを満たすためには、意識的な「受け取りの再決定」と具体的な行動の変更が必要です。
技術1:反射的な否定を「感謝」に変換する
褒められた瞬間、「いえいえ」という反射的な言葉が出そうになったら、口を開く前に「3秒間」の沈黙を置き、次に続く言葉を意識的に「感謝」に変換する練習をします。
- (NG例)「その企画書、完璧だね」→「いや、全然です」
- (OK例)「その企画書、完璧だね」→(3秒間の沈黙)→「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」
技術2:肯定的ストロークを「貯金」する習慣
褒め言葉を受け取った際、それを「一時的な出来事」ではなく、「自分の能力や価値を証明する事実」として記録し、心のコップに定着させる仕組みを作ります。
- 「褒め言葉ノート」の作成: 褒められた言葉を日付、誰から言われたか、そして何を褒められたか(具体的に)を記録します。
- 客観的事実への変換: 「君は優秀だ」と言われたら、「私はこの分野で一定の評価を得る能力がある」という客観的な事実に変換して、自己肯定感の土台に積み上げます。
技術3:質問で「承認の質」を高める
「褒められた内容が曖昧で受け取りにくい」と感じる場合は、否定する代わりに質問で返します。これは、相手のストロークをより具体的で受け取りやすい形に変える高度なテクニックです。
- (NG例)「君はいつも気が利くな」→「いえ、そんなことは」
- (OK例)「君はいつも気が利くな」→「ありがとうございます。具体的に、どんな点を見てそう思っていただけましたか?」
これにより、相手はさらに具体的な「条件付き肯定的ストローク」を与え直すことになり、あなたは心のコップに貯金しやすい「質の高い承認」を受け取ることができます。

3. 自己ストローク:他者依存から脱却する最高の武器
いくら受け取り方を改善しても、他者からのストロークは量もタイミングも不安定です。心のコップを安定して満タンに保つためには、自分で自分にストロークを与える「自己ストローク」の習慣化が不可欠です。
自己ストロークは「ナルシシズム」ではない
自己ストロークを「自意識過剰」や「ナルシシズム」と混同する人がいますが、これは誤解です。ナルシシズムは他者からの承認を渇望し、依存するのに対し、自己ストロークは自分で自分の存在と努力を承認し、他者依存から自律するための健全な行為です。心のコップを自分で満たすことで、あなたは初めて、相手のストロークを「純粋な感謝」として受け取れるようになります。
自分で自分を無条件に承認する「存在のストローク」
最も強力な自己ストロークは、「無条件の肯定的自己ストローク」です。これは、成果や能力に関係なく、「私は生きているだけで価値がある」「今日の私は、最善を尽くした」と、自分の存在そのものを承認することです。
- (実践) 毎朝、鏡を見て「今日も一日、君の最善を期待しているよ」と声をかける。
- (実践) 失敗した夜に、「結果は残念だったが、逃げずに立ち向かった姿勢は認めよう」と、行動ではなく存在(I’m OK)を承認する。
自分で自分の行動を評価する「条件付きのストローク」
自分で立てた目標や努力に対して、客観的な大人(A)の視点で評価し、自分に報酬を与えます。
- (実践) 「今日は集中して3時間、資料作成をやり遂げた。この努力は素晴らしい」と明確に評価する。
- (報酬) 「だから、自分にご褒美として、今日は定時で上がり、趣味に時間を使おう」と、報酬(肯定的ストローク)を与えます。
「自己ストローク飢餓」のサインと解消法
自己ストロークが欠乏すると、私たちは承認を渇望し、他者にゲーム(第5回で詳述)を仕掛けてまでストロークを得ようとします。これが続くと、心のコップは常に空の状態となり、人間関係が疲弊します。このサインを感じたら、すぐに「5分間の自己承認瞑想」を行い、過去の小さな成功体験や、今の自分の存在価値を再確認する時間を設けましょう。
4. 組織で「受け取り文化」を醸成するリーダーシップ
個人の努力だけでなく、リーダーはチーム全体で「ストロークを素直に受け取る」ことを良しとする文化を作る必要があります。
リーダーの「素直な受け取り」が規範となる
リーダー自身が、部下や同僚からの感謝や褒め言葉を反射的に否定していると、それがチームの規範となります。リーダーは、「私はあなたからの承認を価値あるものとして受け取ります」という姿勢を、意識的に示す必要があります。
- (実践) 部下:「昨日の資料のおかげで助かりました」→リーダー:「ありがとう。あなたがそう言ってくれると、本当にやってよかったと感じるよ」と、自分の感情を含めて感謝を伝え、相手のストロークを最大限に活かします。
「ピア・ストロークの拒否」を課題として扱う
同僚同士(ピア)のストローク交換で、過度な謙遜や拒否が見られた場合、それを個人的な性格の問題として片付けず、チームの心理的安全性に関わる課題として扱います。
- (介入) 「〇〇さんが謙遜しているのはわかるけど、△△さんの承認は、チームにとって重要なエネルギーだよ。素直に受け取ってみよう」と、ストロークの価値を認識させる介入を行います。
【H3】承認は「義務」ではなく「権利」であることを教える
メンバーに対し、「他者からの正当な承認は、あなたが努力した結果として得られる、当然の権利である」というTAの考え方を共有します。承認を「受け取る」ことを許可することで、メンバーの心のフタを開ける手助けをします。これにより、承認を過小評価したり、拒否したりする罪悪感から解放されます。
5. ワーク:「受け取りの禁止令」を破る実践リスト
今日から「受け取り拒否」の禁止令を破るための、具体的な実践リストを作成しましょう。
ワーク1:反射的な「禁止令」フレーズの特定と置き換え
あなたが褒められたときに、無意識に口から出る否定的なフレーズを特定し、その横に「再決定フレーズ」を書き出します。
| 否定的なフレーズ(禁止令) | 再決定フレーズ(受け取りの許可) |
| :— | :— |
| 「いえ、たまたまです」 | 「ありがとうございます。運も実力のうちと受け取ります」 |
| 「私なんて全然です」 | 「ありがとうございます。素直にその言葉を受け止めます」 |
| 「いや、〇〇さんの方がすごい」 | 「ありがとうございます。〇〇さんの意見も参考に、次に活かします」 |
これをトイレやデスクに貼り、褒められた瞬間に再決定フレーズを意識して発言します。
ワーク2:自撮りでの「自己ストローク」トレーニング
毎日、仕事の終わりに鏡(またはスマートフォン)に向かって、その日の自分の最大の貢献点を具体的な言葉で褒め、それを素直に受け取る練習をします。
- (例)「(自分の名前)、今日の交渉で、相手の意見を最後まで聞いてから反論できた。落ち着いて対応できた自分を、私は承認する」
- 重要なのは、「私」が「私自身」を褒めるという、明確な二者関係(ストローク交換)を心の中で作り出すことです。
6. まとめ:心のコップを自力で満たす自律性へ
連載第3回では、自己肯定感の土台となる肯定的ストロークの「受け取り方」を学びました。
- 「受け取り拒否」は、「I’m Not OK」という古い人生脚本を守ろうとする無意識の防衛行動です。
- 受け取り拒否は、相手の承認の価値を否定し、健全な交流を途絶えさせます。
- 克服するには、反射的な否定を「ありがとうございます」という感謝に変換する再決定が必要です。
- 究極の目標は、他者依存から脱却し、「自己ストローク」で心のコップを自分で満たす自律性を確立することです。
あなたは、他者からの承認を渇望する「Not OK」な自分から、自分で自分を認め、満たせる「I’m OK」な自分へと変わる一歩を踏み出しました。
次回は、人間関係を疲弊させる「否定的ストローク」のメカニズムを分析し、「無視」や「皮肉」といった毒から自分を守る方法を解説します。次回のテーマは、「人間関係を疲弊させる否定的ストロークの『正体』」です。
心のコップを満たし、組織のゲームを終わらせる
本連載で解説したストローク(心の栄養)、心のゲーム、そして「I’m OK, You’re OK」という自己肯定感の理論は、個人の意識変革と組織全体のコミュニケーション構造を変える力を持っています。
しかし、理論を知るだけでは、長年の「人生脚本」を変え、職場の不毛なパターンを断ち切ることはできません。
私、坂本が主宰するTA(交流分析)をベースとした研修・コンサルティングサービスは、単なる知識提供ではなく、理論の実践と現場での行動変容に焦点を当てています。
【お客様の組織に合わせたオーダーメイドの変革プログラム】
1. TA(交流分析)認定講座
- 目的: 個人の自己理解と自律性の確立を最優先します。エゴグラムによる自我状態の分析、人生脚本の解読など、TAの深い理論を体系的に学び、心のゲームを仕掛けない「I’m OK, You’re OK」な自律型人材を育成します。
- 対象: 自己変革を深く求めたい個人、認定資格取得を目指す方。
2. 人材開発・組織開発研修プログラム
- 目的: TA理論に基づき、チームの心理的安全性と生産性を同時に高めます。
- テーマ例:
- リーダーシップ研修: 破壊的な否定的ストロークを建設的なフィードバックに変える、ストローク交換の黄金比実践。
- チームビルディング: 迫害者・犠牲者・救助者という「ドラマの三角形」の役割から降り、相互信頼に基づく親密な交流が可能な組織文化を設計します。
- コミュニケーション改善: 複雑な二重交流を解消し、大人(A)の自我状態による論理的かつ共感的な対話を習慣化します。
「なぜか繰り返される人間関係の悩み」「優秀な人材が定着しない組織風土」といった根深い課題を、TA理論の力で根本から解決します。
組織の状況に合わせた最適な研修・コンサルティングをご提案いたします。詳細、または無料相談については、以下よりお気軽にお問い合わせください。
【 お問い合わせ先 】








