善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

【Day 4】「傍楽(はたらく)」の行動実践:同僚・上司・顧客をどう「楽」にしているか?

皆さん、こんにちは!坂本です。

Day 3までに、私たちは「貢献の核(強み)」と「信頼の土台(人間力)」を確立しました。頭角を表すための準備は整いました。今日からは、その内なる力を、組織に影響を与える具体的な行動へと昇華させる実践論に入ります。行動なき貢献は、ただの思考でしかありません。

多くのビジネスパーソンは「貢献したい」と頭で考えていても、具体的な行動に落とし込めず、結局は自分のタスクに埋もれてしまいます。そこで重要になるのが、私たちの哲学である「傍楽(はたらく):傍を楽にする」という視点です。頭角を表す人は、この「傍楽」を戦略的な行動指針として活用しています。今日は、あなたの貢献のターゲットを明確にし、上司・同僚・他部署といった「社内顧客」の仕事をどう「楽」にすることで、あなたの存在価値を不可欠なものにするか、具体的な実践ワークを通じて探っていきます。

貢献を「抽象論」で終わらせないためのターゲットと課題の設定

「貢献」という言葉は抽象的で、そのままでは行動に結びつきません。貢献を具体的な行動にするためには、「誰を、どのように楽にするか」というターゲット設定が必須です。頭角を表す人は、常に自分の周りにいる人たちを「社内顧客」として捉え、彼らが抱える潜在的な課題や時間的なコストを解決することで貢献しようとします。この章では、そのターゲット設定と、具体的な課題発掘の方法を深く掘り下げます。

最も身近な顧客:「上司」の仕事を楽にする行動

上司の仕事を楽にすることは、組織全体の意思決定を加速させるという最大の貢献に繋がります。あなたの貢献の行動が、そのまま組織のスピードとなるからです。

  • 報告の質を高める: 上司が「次に聞きたいであろうこと」を先回りして資料に記載する。結論から述べ、経緯は後回しにする。また、「判断に必要な情報」と「単なる経過情報」を明確に分け、上司の思考コストを最小限に抑えます。
  • 懸念を先取りする: 上司が意思決定をする際に最も懸念するであろうリスクや関連部署との軋轢を事前に分析し、それに対する具体的な代替案を添えて提案する。これは、「探偵」のように課題を深くヒアリングするあなたの指導スタイルそのものです。
  • ドラッカーの視点: ドタッカーは「上司を助ける」ことは部下の責任であると説きました。上司の強みを把握し、自分が弱みを補うことで、上司が本来集中すべき「より高いレベルの意思決定」に集中できるようにすることこそが、最大の貢献です。あなたの存在が、上司の生産性を高めているかを常に問うてください。上司の時間というリソースを解放することこそが、あなたの評価を最も高める行動の一つとなります。

信頼を深める顧客:「同僚・他部署」の仕事を楽にする行動

同僚や他部署は、あなたの信頼残高を測る重要なセンサーです。彼らの仕事を楽にする行動は、「自分の職務範囲」という境界線を越えることであり、それが人間力(人格)として評価されます。

  • 情報共有の仕組み化: 他部署から頻繁に問い合わせがある情報を、事前に整理し、誰でもアクセスできる状態にする(例:FAQの作成、共有フォルダの整理)。これは、「知識の共有」という形で組織全体に貢献するTCL-T軸(思考)の強みを活かした行動です。
  • プロセスの最適化: 自分のタスクが終わった後、次の工程に移る同僚のために、あえて一歩踏み込んで資料のフォーマットを整えたり、分かりやすい注釈を加えたりする。これは、「相手の作業効率を上げること」に焦点を当てた、真のホスピタリティです。
  • 心理学の視点: 心理学では、人間は「与えられたもの以上のものを返そうとする」という互恵性の法則が働いています。あなたが率先して貢献行動をとることで、チーム全体の協力的な雰囲気が醸成され、相互信頼という成果が返ってきます。この信頼こそが、あなたが困難に直面した際の「セーフティネット」となります。

TCL分析を貢献行動に結びつける「動詞の転換」の実践

Day 2で特定したあなたのTCLコンピテンシー(得意な動詞)を、具体的な貢献行動へと転換させましょう。これは、「私の強みは〇〇(動詞)です」を「私は〇〇という貢献をします」という宣言に変える作業です。

  • T(思考)の強みの場合: 「分析する」→ 「上司が抱える顧客クレームのデータを【分析する】ことで、発生原因を3つのパターンに構造化し、改善を提案する」という貢献行動に転換。
  • C(コミュニケーション)の強みの場合: 「繋ぐ」→ 「頻繁に連携が必要な部署間の情報格差を【繋ぐ】ために、月に一度の非公式な情報共有会を企画し、促進する」という貢献行動に転換。
  • L(リーダーシップ)の強みの場合: 「決断する」→ 「誰もが及び腰になっている難易度の高い顧客交渉の窓口を自ら引き受け、【決断する】ことで、チームの判断を早め、顧客の不安を取り除く」という貢献行動に転換。

あなたの動詞を、「誰の仕事をどう楽にするか」という視点に結びつけたとき、あなたの貢献は一気に具体的になり、評価の対象となります。この「動詞の転換」こそが、頭角を表す人が持つ具体的な行動戦略なのです。

失敗を恐れず、貢献の「試行錯誤」を続ける勇気

新しい貢献行動を試みるとき、失敗を恐れるのは自然なことです。しかし、頭角を表す人は、「貢献しないことのリスク」の方が高いことを知っています。なぜなら、貢献しないことは「現状維持」を意味し、VUCA時代においては「後退」を意味するからです。

貢献の試行錯誤は、あなたの「人間力」を磨き、新しい解決策を探るための「実験」です。もし失敗しても、その「貢献しようとしたプロセス」と、そこから得られた学び(データ)は、必ず周囲からの信頼という形で報われます。重要なのは、完璧な貢献ではなく、自発的な貢献であり、行動の継続です。

今日のワークを通じて、小さくても良いので、明日からすぐに実践できる「傍楽行動」を一つ決意し、羅針盤であるあなたのTCL強みを活かして行動を開始しましょう。

貢献の成果を「顧客体験価値(CX)」に結びつける意識

あなたの社内顧客への貢献は、最終的に社外顧客の満足度(CX)へと繋がります。この連鎖を意識することが、あなたの仕事の目的と意義をさらに高めます。上司の意思決定が早くなれば、顧客への提案スピードが上がり、待たせる時間が減ります。同僚間の連携がスムーズになれば、納品のミスが減り、顧客への付加価値提供に時間を使えます。

頭角を表す人は、自分の貢献行動が、社内を超えて市場に与える影響まで見通しています。例えば、コールセンターのスタッフが他部署の情報を瞬時に提供できるのは、その裏で誰かが「情報共有の仕組み化」という貢献(T軸)を行ったからです。あなたの小さな貢献が、会社全体のCXを向上させているという意識こそが、あなたを真のプロフェッショナルへと高めます。

Day 4のワーク:「社内顧客」の仕事で困っていることを3つ書き出す

貢献行動の実践は、まず「知る」ことから始まります。あなたの主要な「社内顧客」を特定し、その人が抱える課題を深く掘り下げましょう。このワークを通じて、あなたの貢献の具体的な機会を発見してください。

ワークシート1:社内顧客とその潜在的な課題の特定

あなたの貢献が最も価値を生む場所を特定します。

  1. 社内顧客の特定:
    • 主要な上司: (例:部署長 〇〇さん)
    • 主要な同僚/後工程: (例:経理部の△△さん、開発チームの××さん)
    • 最も手間をかけている他部署: (例:営業部)
  2. 潜在的な課題の特定: 観察とヒアリングを通じて、以下の問いに答えてください。
    • 上司は、「何の情報がないために決断を迷っているか?」
    • 同僚/後工程は、「あなたの仕事のせいで、どんな無駄な作業を強いられているか?」
    • 課題は最低3つ、具体的な「時間とコスト」に変換できるものが望ましいです。
  3. 課題の優先順位付け: 特定した課題の中で、あなたのTCL強みを活かせば、最も大きな貢献価値(傍楽)を生み出せるものを一つ選んでください。

ワークシート2:あなたの強みを活かした「傍楽行動」の設定

優先順位をつけた課題に対し、あなたの強みを結びつけます。

  • 課題例: 上司が毎週の売上データの集計作業に2時間費やしている。
  • あなたのコア強み: T軸の「構造化する」「自動化する」
  • 傍楽行動: 「既存の売上データを自動で集計・視覚化する簡単なマクロ(T軸)を構築し、上司の集計時間を30分に短縮する。」

このように、「誰を」「どう楽にするか」を明確にすることで、あなたの行動は価値ある貢献となります。

小さな貢献から始める「スモールスタート」の重要性

大きな貢献を目標にする必要はありません。心理学的に、人間は「小さな成功体験」を積み重ねることで、自己効力感を高め、次の行動へのモチベーションを得ます。頭角を表す人も、最初から大きなプロジェクトを成功させたわけではありません。彼らは、誰も気づかないような小さな課題を見つけ、自分の強みを活かして解決するという「小さな貢献のサイクル」を誰よりも早く回し始めたのです。

明日からできる「傍楽行動」を一つだけ決めて、実行に移すことから始めましょう。その小さな一歩が、あなたの頭角を表すための大きな飛躍の起点となります。

貢献の実行と結果の共有:認知度を高める仕組み

貢献行動は実行するだけでなく、その結果を適切に共有することで、あなたの信頼と認知度を高める必要があります。

  • 結果の共有: 「〇〇さんが困っていたので、私のTCL強みである『構造化する』を活かして、〇〇を改善しました。これにより、〇〇さんの作業時間が〇分短縮されました」と、貢献の動機、行動、そして具体的な成果を上司や関係者に伝えます。
  • 目的: これは自己アピールではなく、「私は組織の課題解決に貢献できる人間である」というブランドを確立するための、プロフェッショナルな情報共有です。あなたの行動が組織に与えた価値を明確にすることで、次のより大きな貢献の機会があなたに回ってくるようになります。

貢献という名の投資が生むキャリアの複利効果

貢献行動は、単発の努力で終わらず、キャリアに複利効果をもたらします。あなたの強みを活かした貢献は、信頼という形で組織に蓄積されます。この信頼は、あなたが新しい挑戦をする際の「資本」となり、より大きなプロジェクトへの参画を可能にし、さらなる強みの成長を促します。このサイクルこそが、頭角を表す人が持つ持続可能な成長システムです。今日のワークで設定した「傍楽行動」を、この複利効果を生む最初の投資として捉えてください。

まとめ:行動なき貢献は、ただの思考である

今日のワークを通じて、貢献は抽象的な理想ではなく、具体的な行動であり、それはあなたの強みを、社内顧客の課題解決に結びつける「動詞の転換」であると確認できました。頭角を表す人は、この実践とフィードバックのサイクルを誰よりも早く回しています。

よりよい職場づくりとは、まさにこの「傍楽行動」が組織文化となることです。あなたの内なる力を解き放ち、職業人として誇りを持って生きるための具体的な一歩を、私たちは力強くサポートします。

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