善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

「大人になるとはどういうことか?」

この問いに、私たちはいくつになっても明確な答えを持つことは難しいものです。年齢を重ね、社会的責任や役職を担うようになっても、「本当の意味での人間的成長とは何か?」という疑問がふと湧いてくることはないでしょうか。

この問いに応える学びとして、近年あらためて注目されているのが「成人の学」です。

成人の学とは、人が人間として成熟し、社会の中でより良く生きるために身につけるべき「徳性(道徳的な力)」と「知性・技能」を統合的に養う学びです。

その中でも本記事で取り上げるのは、「人間学」と呼ばれる分野です。

人間学とは、自己の内面に目を向け、人間性を深め、品格と徳を備えた人格を形成するための学問です。現代のビジネス社会においてこそ、この“見えにくい力”が重要視されています。

本記事では、「人間学」とは何か、その本質と意義、そしてビジネスパーソンとして日々の実践にどう取り入れていくべきかについて、実践的な書籍や取り組み方とともに解説していきます。

人間学が現代ビジネスに必要とされる理由

近年、心理的安全性やレジリエンス、倫理的リーダーシップなど、人間性を基盤とする資質が注目されるようになっています。これは単なるトレンドではなく、社会や組織の変化が、「人としての在り方」そのものを問い直しているからに他なりません。

特にリーダー層においては、以下のような課題が顕在化しています。

• 組織の信頼を築くための誠実さや共感力

• 部下や同僚と向き合うための内省的な姿勢

• 判断を下す際の価値観や倫理観の明確さ

これらは、どれも知識やスキルだけでは補えない「人間力」に関わる要素です。

この人間力を高めるための学びこそが、「人間学」なのです。

「人間学」とは?東洋思想から学ぶ“徳”の教え

人間学は、古今東西の思想や哲学、宗教的教えなどから抽出された「人間とはどう生きるべきか」という問いに向き合う学問です。特に東洋思想では、「徳をもって人を導く」という考え方が強調されています。

たとえば、『論語』における孔子の教えでは、

「己を修めて以て人を治める」

(自分自身を磨くことが、他者や組織を導く第一歩)

という言葉があります。これは現代風にいえば、「自分の在り方を整えることが、真のリーダーシップである」と言えるでしょう。

また、陽明学の思想では「知行合一(ちこうごういつ)」という言葉が有名です。これは、本当に理解したことは、行動に現れるという意味であり、単なる知識ではなく、実践を通して人格を養うことの重要性が語られています。

忙しいビジネスパーソンのための「人間学」入門書

では、ビジネスの現場にいる私たちが「人間学」をどのように学び、日々に活かしていけば良いのでしょうか?

ここでは、独学でも取り組みやすい名著や学び方をいくつかご紹介します。

1. 『致知』に触れることで日々の「人間学」を習慣化

月刊誌『致知(ちち)』は、人間学をテーマに40年以上にわたって発行されている良質な雑誌です。

各界のリーダーや研究者の実体験や哲学が語られており、日々の気づきや内省のきっかけとして非常に有用です。

特に、以下のような特集記事はおすすめです。

• 「逆境を越える人間力」

• 「論語とリーダーシップ」

• 「人生100年時代の徳育とは」

定期購読することで、日々の生活の中に「人間学」を自然に取り入れる習慣ができていきます。私自身も30年以上読み続けている月刊誌で、心から多くの職業人に読んでいただきたいと思っています。(案件抜きでのオススメです)

2. 『論語』を読み解くことで、人格の基盤を築く

言わずと知れた東洋思想の源流ともいえる『論語』は、リーダーの“生き方の教科書といっても過言ではありません。

おすすめは、以下のような現代語訳つきの解説書です:

• 『論語と算盤』(渋沢栄一著)

• 『心に響く論語』(守屋洋 著)

これらは、原文の堅さを和らげながらも、現代ビジネスに活きるエッセンスを取り出して解説しています。

一日一言でも良いので、繰り返し読むことで、価値観や信念がじわじわと育っていきます。

3. 実践的な「内省」の習慣を持つ

人間学は、読書だけで完結するものではありません。

重要なのは、自分自身の行動や感情をふり返り、日常に学びを統合していくことです。

そこでおすすめなのが、「内省ノート」をつける習慣です。

1日5分でもよいので、

• 今日嬉しかったこと

• 心がざわついた場面とその理由

• 明日どんな自分でいたいか

こうした問いに答えていくことで、人としての成熟が加速していきます。

人間学の実践が、キャリアと人生を深くする

人間学を学び、実践することは、単に「いい人になる」ことではありません。

それはむしろ、「信頼される人」「人を導くことができる人」「逆境に耐えうる人」として、キャリアの節目ごとに真価を発揮する人間になるということです。

近年の研究でも、リーダーシップの核心は“コンピテンシー”よりも“人格”にあるといわれています。

時代がどう変わろうとも、徳性を備えた人間が、信頼され、選ばれ、影響を持つのです。

まとめ:人間学は一生の学び。今ここから始めよう。

「人としてどう在りたいか」

この問いに対して、私たちは日々の中で答えを探し続けています。

人間学は、派手な学びではありません。しかし、人生やキャリアに深みをもたらし、どんな環境でもぶれない自分をつくるための“芯”になる学びです。

今日から一冊の本、一つの言葉との出会いを大切にしながら、「人間としての成長」を意識的に育てていきませんか?

それが、あなたの未来を支える大きな力となるはずです。

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