「ありたい姿」を言語化!魂を動かすWillの発見と価値観の体系化
「ありたい姿」を言語化する:魂を動かすWillの発見と価値観の体系化
皆さん、こんにちは。坂本です。
連載2日目の今日は、キャリアの地図において最も重要でありながら、最も見失いやすい要素である「Will(ありたい姿)」に深く切り込んでいきます。
昨日のDay 1では、キャリアを動かす3つの円(Will/Can/Must)の全体像をお伝えしました。しかし、多くの方が「自分のWillが何かわからない」「本当にやりたいことが見えてこない」という壁にぶつかります。2026年、選択肢が無限に広がる社会では、この「内なる北極星」がなければ、私たちは他者の期待や市場の流行に流され、疲弊してしまいます。今日は、あなたの心の奥底に眠る「本物の願い」を、心理学と哲学の力を借りて言葉にしていきましょう。
Willが見つからない本当の理由:心理的防衛と社会的バイアス
「やりたいことがない」と悩む人の多くは、能力がないのではなく、自分の感情をキャッチする力が弱まっているか、無意識のうちに自分を制限しています。まずは、なぜWillが霧に包まれてしまうのか、その心理的メカニズムを解剖します。
「適合」という名の心理的抑圧と偽りの自己
私たちは幼少期から、学校や組織の中で「正解」を出すことを求められてきました。周囲に適応しようとする力が強すぎると、心理学で言う「偽りの自己(False Self)」が形成されます。他人の期待に応えることが習慣化すると、自分の内側から湧き出る小さな欲求(真の自己)を無意識に無視するようになります。この抑圧が長く続くと、自分が何に感動し、何に憤りを感じるのかというセンサーが麻痺し、Willが見えなくなってしまうのです。Willを見つける作業は、この「適合の鎧」を一枚ずつ脱いでいくプロセスでもあります。自分が本当に心地よいと感じる瞬間はいつか、その微細な感覚を取り戻すことから始めなければなりません。
生存本能による「リスク回避」のブレーキと心理的安全性
新しいWillを掲げることは、現状の変化を伴います。人間の脳は、生存のために未知の変化を「危機」と捉える偏り(現状維持バイアス)を持っています。「やりたいことをやっても食べていけない」「失敗したら恥ずかしい」という思考は、脳があなたを守るためにかけているブレーキです。しかし、2026年の不確実な世界では、変化しないことこそが最大のリスクとなります。この生物学的なブレーキを客観的に認識し、「怖さは進むべき方向のサインである」と捉え直すことが、Willを解放するための第一歩です。自分自身の内側に「失敗しても大丈夫だ」という心理的安全性を自ら構築することが、大胆なWillを描く土台となります。
SNSによる「望ましいキャリア像」の強制と内投
現代社会には「起業すべき」「リーダーになるべき」「ワークライフバランスを重視すべき」といった、外部から供給される「理想の形」が溢れています。これを心理学では「内投(イントロジェクション)」と呼びます。他人のWillを自分のものだと思い込んで追いかけても、どこまで行っても満足感は得られません。情報の海から一度離れ、自分一人の静かな時間の中で「世間がどう言おうと、私はこれが好きだ」と言える感覚を研ぎ澄ます必要があります。他者の物語に自分を当てはめるのではなく、自分の内側から物語を紡ぎ出す主体性を取り戻すことが、20代から50代まで全ての職業人に求められています。
成功報酬への依存と「手段の目的化」の罠
「給与を上げたい」「有名になりたい」というのは、Willを実現した結果得られる「報酬」であり、Willそのものではありません。報酬を目標にすると、それを手に入れた瞬間に虚無感に襲われるか、さらに高い報酬を求めて終わりのない競争に身を投じることになります。これを「ヘドニック・トレッドミル(快楽の踏み車)」と呼びます。報酬という手段を目的化せず、その先にある「どんな状態でありたいか」「どんな影響を他者に与えたいか」という本質的な目的に立ち返る必要があります。ドラッカーが説いたように、成果とは外的な報酬ではなく、自らの強みを活かして社会に貢献したという手応えそのものであるべきです。
「今さら遅い」という時間の呪縛と生涯発達
「もう30代だから」「今から新しいことは始められない」という年齢による制限も、Willを覆い隠す霧となります。しかし、キャリアコンサルティングの現場では、40代、50代から本当のWillに目覚め、輝き始める人を数多く見てきました。発達心理学においても、人間は生涯を通じて成長し続ける存在であると定義されています。ドラッカーが晩年まで旺盛な執筆と教育活動を続けたように、学びと貢献に年齢の壁はありません。「今の自分から、何ができるか」を問い続ける勇気が、硬直したキャリアを柔軟にし、隠れていたWillを再び芽吹かせます。過去の延長線上に未来を描くのではなく、未来のWillから逆算して「今」を再定義しましょう。
価値観を体系化する:あなたの「鏡のテスト」を策定する
ピーター・ドラッカーは、自らの価値観に合わない組織では成果を上げられないと強調しました。彼は「鏡のテスト」という言葉を使い、朝鏡を見たときに、自分を誇れるかどうかが重要だと説きました。ここでは、あなたの価値観を体系化し、判断の軸を作るワークを行います。
感情の起伏から「価値観の種」を抽出する分析
あなたの過去を振り返り、心が大きく動いた瞬間を書き出してください。猛烈に感動したこと、あるいは逆に、許せないほど腹が立ったことは何でしょうか? 「感動」の裏には、あなたが人生で大切にしたい肯定的な価値観があり、「怒り」の裏には、あなたが守りたい譲れない正義があります。例えば、不誠実な対応に怒りを感じたなら、あなたの根源的な価値観は「誠実さ」や「透明性」にあるかもしれません。これらの感情の揺らぎこそが、理論では導き出せない、あなただけの価値観の原石です。この原石を言葉に磨き上げ、自分の「憲法」として定義することが、自律的なキャリア形成の第一歩となります。
「鏡のテスト」:自分を誇れる基準の具体的設定
ドラッカーが説いた「鏡のテスト」を具体化しましょう。「どのような人間として、朝の鏡に映る自分を見たいか?」を自問してください。これはスキルの話ではなく、生き方の問題です。嘘をついて利益を上げることよりも、正直に話して信頼を築くことを選ぶのか。安全な道よりも、困難だが意義のある挑戦を選ぶのか。この「自分に対する約束」が明確になると、キャリアのあらゆる場面での意思決定に迷いがなくなります。価値観は、あなたの行動を律する「内なる法」となるのです。どのような状況下でもこの基準を貫くことが、職業人としての圧倒的な信頼感とブランドを形成し、結果として良質な仕事を引き寄せることになります。
価値観の序列化とトレードオフの戦略的決断
全ての価値観を同時に満たすことは困難です。「自由」と「安定」が衝突したとき、あなたはどちらを優先しますか? 心理学的な価値観分析に基づき、トップ3の優先順位を決定しましょう。第1位の価値観を死守し、そのためなら第3位は一時的に妥協する、といったトレードオフ(取捨選択)の基準を持つことが、プロフェッショナルとしての強靭な軸を作ります。この序列が、あなたのキャリアにおける「戦略的決断」の根拠となります。多くの人が迷うのは、この序列が曖昧だからです。自分にとっての「一丁目一番地」を明確にすることで、限られたリソースを最も価値ある行動に集中させることが可能になります。
自己一致感(コヒアレンス)の追求とメンタルヘルス
自分の価値観と、現在取っている行動が一致しているとき、人間は高いエネルギーを発揮します。これを「自己一致感」と呼びます。逆に、価値観に反する仕事を続けていると、無意識のうちに自己嫌悪が溜まり、メンタルヘルスを損なう原因となります。自分のWillが今のMust(業務)の中でどの程度体現できているか、10点満点で評価してみてください。不足している部分をどう埋めていくかという問いが、次なるCan(スキル開発)の方向性を決定づけます。自己一致感を高める努力は、単なる精神論ではなく、持続可能な高いパフォーマンスを維持するための科学的な戦略です。
価値観を「動詞」へ変換し行動指針を確立する
「自由」という名詞を、「場所にとらわれず働く」という動詞的な指針に変換しましょう。名詞は解釈が分かれますが、動詞は具体的な行動を想起させます。「貢献」なら「週に一度は他部署の相談に乗る」といったレベルまで具体化するのです。価値観を行動指針に落とし込むことで、それは単なる理想論ではなく、日々の仕事の質を変える「実学」へと進化します。この指針があることで、あなたはどんな環境に置かれても、自分らしさを失わずにパフォーマンスを発揮できるようになります。言葉が行動を変え、行動が習慣を変え、最終的にはあなたのキャリアそのものを変えていくのです。

「意味」を創出する:仕事の目的(Why)をアップデートする
Willを明確にするとは、自分の仕事に新しい「意味」を与える作業でもあります。心理学者ヴィクトール・フランクルが説いたように、人間は意味を見出せるなら、どんな苦境も乗り越えることができます。
ジョブ・クラフティングによる「目的の再定義」とモチベーション
目の前の業務を単なる作業(Task)として捉えるのではなく、それが誰の人生をどう彩っているのかという目的(Purpose)に焦点を当てます。「プログラミングをする」という作業を、「ユーザーの時間を生み出し、家族との団らんを創出する」という目的に置き換える。この認知の変化が、あなたのWillと日々の仕事を強力に結びつけます。意味を見出した瞬間、労働は「自己実現の舞台」へと姿を変えます。ジョブ・クラフティングは、他人に与えられるものではなく、自分自身の手で仕事に命を吹き込む高度な知的な作業です。これにより、受動的な「こなす仕事」が能動的な「創る仕事」へと昇華されます。
「社会的貢献」への接続と自己超越の心理
心理学における自己実現のさらに上にあるのが「自己超越」です。自分の成功を超えて、社会や次世代のために何ができるかという視点を持つこと。ドラッカーも「組織の目的は社会への貢献である」と断言しました。あなたの持っているスキル(Can)を使って、世の中のどの不条理を正したいのか、どの苦しみを和らげたいのか。この大きな問いにWillを接続させたとき、あなたのキャリアは個人のエゴを超えた、揺るぎない「志」へと進化します。自己の利益のみを追求するキャリアは脆いものですが、公(パブリック)の利益に繋がるキャリアは、多くの支援者と大きな機会を惹きつける力を持っています。
ストレングス・ベースド・アプローチとWillの融合
「やりたいこと」と「得意なこと(強み)」を切り離して考えるのは間違いです。ポジティブ心理学では、強みを発揮しているときにこそ、人は情熱(Will)を感じやすいことが証明されています。自分のWillが、自分の強み(Can)とどう重なっているかを検証しましょう。強みを活かして他者に貢献できているという手応えが、Willを確信へと変えていきます。弱点の克服に汲々とするのではなく、強みを活かした貢献の場を自ら創り出すことが、Willを現実のものにする最短ルートです。自分の個性が最も輝くポジションを自ら設計する「キャリア・デザイン」の視点を持ってください。
キャリア・アンカーの特定と定着による長期的安定
組織心理学者エドガー・シャインが提唱した「キャリア・アンカー」は、人生の荒波においても決して動かない、あなたの心の「錨」です。専門性、管理、自律、保障、創造性、奉仕、挑戦、ライフスタイル。あなたがキャリアを築く上で、絶対に譲れない要素はどれでしょうか? 過去の決断の傾向から自分のアンカーを特定することで、一時的な流行や誘惑に惑わされることなく、自分にとっての「真の幸福」に基づいた道を選び続けることが可能になります。アンカーを無視したキャリア選択は、たとえ高収益であっても深い不満足感をもたらします。自分の心の基盤を正しく理解しましょう。
ナラティブ・キャリア・カウンセリングによる物語の構築
あなたの人生を一つの「物語(ナラティブ)」として捉えてみてください。これまでの章にはどんなタイトルがつきますか? そして、これから始まる新しい章に、あなた自身でどんなタイトルをつけたいですか? 過去の経験に自分なりの意味を与え、未来の筋書きを自ら執筆する。この主体性が、Willを単なる願望から「実行可能なシナリオ」へと変えていきます。挫折や失敗も、物語を面白くするための「伏線」として捉え直すことで、レジリエンス(回復力)が格段に高まります。あなたは自分の人生という物語の、唯一無二の執筆者であり、主人公なのです。
Willを実現する「自己効力感」の育て方:行動変容の心理学
Willを描くだけでは不十分です。それを実現できるという確信、すなわち「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」を育む必要があります。心理学的エビデンスに基づき、行動を継続させるための戦略を練ります。
「代理経験」によるモチベーションの伝播とネットワーク
自分一人でWillを抱え込むと、孤独感から自信を失いやすくなります。心理学者バンデューラが唱えた自己効力感の要因の一つに「代理経験」があります。あなたと同じような境遇から、自分のWillを実現させたロールモデルを見つけ、そのプロセスを学ぶことです。「あの人にできるなら、自分にもできる」という健全な投影が、あなたの行動を後押しします。2026年、SNSやコミュニティを活用し、質の高い「代理経験」を積極的に取り入れ、お互いのWillを刺激し合える環境に身を置きましょう。他者の挑戦を自分の力に変える知恵が必要です。
「遂行行動の達成」:スモールウィンの積み重ねと自己承認
いきなり大きなWillを達成しようとすると、脳はそのギャップに怯えてフリーズします。まずは「今日一日のうちにできる、Willに繋がる小さな一歩」を設定しましょう。その小さな成功を、誰よりも自分自身で承認し、褒めること。この「スモールウィンの積み重ね」が、脳に成功の報酬系を形成し、より大きな挑戦へと向かう心理的エネルギー(心理的資本)を蓄積させます。大きな山を登るためには、目の前の一歩を確実に踏み出すことだけに集中する。この「現在地への集中」が、結果的に遠大なWillへとあなたを運びます。
言語的説得:セルフトークのマネジメントと脳の再配線
私たちは一日のうちに、無意識に数万回の「自分への声かけ(セルフトーク)」を行っています。「自分には無理だ」「どうせ続かない」といった否定的な言葉を、「今は練習中だ」「次はこうしよう」という成長志向の言葉に置き換えてください。言葉は思考を規定し、思考は行動を規定します。自分を励ます「良質なコーチ」としての言葉を自分に贈ることが、Willを現実に変えるための強力なサポートとなります。自己批判ではなく、自己激励を習慣化することで、脳はより創造的で解決志向の働きをするようになります。
情緒的高揚:感情エネルギーのコントロールとEQ
Willに向かう過程では、不安や緊張といった感情が必ず湧き起こります。これらを「取り除くべき敵」と見なすのではなく、挑戦に必要な「エネルギーの活性化」であると捉え直しましょう。ドキドキするのは、あなたがその挑戦に真剣である証拠です。感情を無理に抑え込むのではなく、そのエネルギーを集中力へと変換する。自分の感情をマネジメントする「情動知能(EQ)」を高めることが、長丁場のキャリア形成を支える体力となります。ネガティブな感情を「気づき」として受け入れ、自分のWillを再確認する糧にしましょう。
環境アフォーダンスの設定と意志力の節約
意志の力には限界があります。意志が弱くても、Willに沿った行動をとってしまう「環境」をデザインしましょう。例えば、学びたいことがあるなら、その本を机の上に常に広げておく。尊敬する人がいるコミュニティに身を置く。環境が行動を誘発する(アフォーダンス)仕組みを整えることで、無駄な葛藤を減らし、自然な形でWillへと向かう習慣を定着させることができます。意志力という貴重な資源を消耗させない戦略的な環境作りこそ、自律した大人のプロフェッショナルの知恵です。
まとめ:Willは、あなたの「善いはたらき」の源泉である
連載2日目、自分の内なる声「Will」と深く向き合う時間はいかがでしたでしょうか。
Willを見つけることは、自分勝手になることではありません。むしろ、自分の価値観を明確にし、その軸に沿って「誠実に」生きることは、周囲に安心感と信頼を与えます。ドラッカーが説いたように、自らをマネジメントできる人こそが、組織や社会に対しても真の貢献ができるのです。
あなたの描く「ありたい姿」は、今はまだぼんやりとした光かもしれません。しかし、今日言葉にしたその価値観を大切に握りしめ、明日からの仕事に向き合ってみてください。Willは、一度決めたら変わらないものではなく、行動を通じて磨かれ、深まっていくものです。自らの内なる声に忠実であることは、時に勇気を必要としますが、その誠実さこそが、あなたの人生を輝かせる唯一の光となります。
よりよい職場づくり。そして、職業人として誇りを持って生きるための第一歩。
あなたの内側にある可能性を信じ、自らの成長に向けた努力を積み重ねる勇気を持ちましょう。あなたは、自らの力で課題を乗り越え、望む未来を創造できる存在です。明日、Day 3では、そのWillを現実にするための強力な武器「Can(できること)」の磨き方について、さらに深く踏み込んでいきます。あなたの物語は、今、確実に新しい章へと動き出しています。








