働くを再定義する:善く働くための思考法
「働く」の再定義:なぜ、今「善くはたらく」が重要なのか
こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。
皆さんは、なぜ仕事をしていますか?
お金のため、生活のため、家族のため…様々な答えが返ってくるでしょう。もちろん、それらは働く上でとても大切な理由です。しかし、もし、仕事が単なるお金を稼ぐ手段ではなく、あなたの人生そのものを豊かにし、深い喜びを与えてくれるものだとしたら、どうでしょうか?
VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる現代社会では、私たちの働き方は大きな転換期を迎えています。AIの進化は、これまで人間が担ってきた多くの仕事を代替し、私たちは「何のために働くのか」という問いを、これまで以上に深く考えなければならなくなりました。
そこで、私がこの連載で皆さんと一緒に探求したいのが、「善くはたらく」という考え方です。これは、ただ効率よく働くことでも、たくさん稼ぐことでもありません。あなたの仕事を通して、誰かを幸せにし、社会に貢献することで、結果としてあなた自身も豊かになる、そんな本質的な働き方です。
今回は、「善くはたらく」がなぜ、この時代に最も重要なのかを、「働く」という言葉の語源からひも解き、仕事が私たちにもたらす真の価値についてお話しします。
1:「働く」という言葉が持つ、奥深い意味
私たちは普段、何気なく「働く」という言葉を使っていますが、この言葉には、古来より日本で大切にされてきた、非常に奥深い意味が込められています。この章では、日本語の「働く」と、欧米の「働く」が持つ意味の違いから、「善くはたらく」の本質に迫ります。
日本語の「働く」と英語の「Work」の決定的な違い
英語の「Work」や「Labor」という言葉には、もともと「苦役」や「骨折り」といった、ネガティブなニュアンスが含まれています。これは、キリスト教の「アダムとイブが楽園を追放され、労働という罰を与えられた」という思想に由来すると言われています。つまり、欧米文化では、働くことは、生きるために仕方なく行う、辛いものという側面が強いのです。
一方、日本語の「働く」は、一説には「傍(はた)を楽(らく)にする」が語源だと言われています。これは、「自分以外の周りの人、つまり傍にいる人々を楽にすること、幸せにすること」を意味します。つまり、日本語の「働く」には、もともと他者貢献というポジティブで崇高な意味が内包されているのです。
私は、この言葉の語源を知ったとき、心の底から感銘を受けました。私たちが日々の仕事でやっていることは、単なる作業ではありません。誰かを助け、誰かの生活を便利にし、誰かの心を豊かにしている。この「誰かを楽にする」という意識を持つだけで、仕事に対する姿勢は劇的に変わるはずです。
仕事は「お金」だけでなく「喜び」を生み出す
もし、あなたの仕事が「お金を稼ぐための苦役」だと感じているなら、それはとても残念なことです。仕事は、私たちに経済的な安定をもたらすだけでなく、それ以上に大切な「喜び」や「やりがい」を与えてくれます。
例えば、私がコンサルティングをしたある食品メーカーの社員の方のエピソードです。彼は長年、営業職として日々数字を追うことに疲弊していました。しかし、ある時、自社製品を愛用しているお客様から「あなたの会社の〇〇という商品が、子どもの偏食をなくしてくれました。本当にありがとう。」という手紙を受け取ったそうです。その手紙を読んだ瞬間、彼の心は震え、それまで「苦役」に感じていた仕事が、一瞬にして「誰かの役に立っている」という深い喜びに変わったと言います。
このエピソードが示すように、仕事の真の価値は、給与明細に書かれている数字だけではありません。それは、誰かの笑顔や、感謝の言葉、そして「自分は社会に必要とされている」という自己肯定感から生まれる、かけがえのない喜びなのです。この喜びこそが、私たちを突き動かす最大のモチベーションとなります。
「善くはたらく」がもたらす自己肯定感とエンゲージメント
自分の仕事が、誰かを「楽に」しているという実感は、私たちに深い自己肯定感をもたらします。自己肯定感とは、「自分は価値ある存在だ」と思える感覚のことです。これは、誰かから褒められることだけでなく、自分の行動が他者にポジティブな影響を与えていることを実感したときに、内側から湧き上がってくるものです。
「善くはたらく」という意識を持つことで、私たちは自分の仕事に誇りを持つことができます。そして、その誇りは、組織へのエンゲージメント(貢献意欲や愛着)を高めます。エンゲージメントが高い社員が多い組織は、生産性が高く、離職率も低いというデータは、多くの研究で裏付けられています。
これは、社員一人ひとりが「自分はこの組織に貢献している」「自分の仕事は誰かのためになっている」と感じているからです。組織にとって、エンゲージメントの高い社員は最大の財産です。そして、社員にとっては、貢献を通じて得られる自己肯定感こそが、充実した職業人生を歩むための揺るぎない土台となるのです。
2:現代社会が求める「善くはたらく」の新しいカタチ
かつての「働く」は、決められた役割を正確にこなすことでした。しかし、AI時代を迎えた今、社会が私たちに求める「働く」のあり方は大きく変わってきています。この章では、現代に求められる「善くはたらく」の新しいカタチについて、具体的な視点からお話しします。
AI時代に価値を生み出す「人間力」
AIは、膨大なデータを処理し、パターンを認識する能力に優れています。しかし、どれほどAIが進化しても、代替できないものがあります。それが「人間力」です。
人間力とは、共感する力、倫理観、そして創造性です。例えば、お客様が言葉にできない潜在的なニーズをくみ取ったり、チームメンバーのモチベーションが下がっている時に声をかけたり、予期せぬトラブルに対して柔軟に対応したりする力は、AIには真似できません。
ある老舗の旅館の女将さんは、お客様の些細な表情の変化から、その日の体調や気分を察し、最適なサービスを提供することで、多くのリピーターを獲得していました。彼女は「お客様が言葉にしなくても、何を求めているかを想像することが、最高のサービスに繋がるんです」と語ります。これはまさに、AIには真似のできない「共感力」という人間力の賜物です。これからの時代、私たちは、AIが効率化してくれる「作業」から解放され、より人間らしい「善くはたらく」ことに時間とエネルギーを注ぐべきなのです。
「傍(はた)を楽(らく)にする」範囲を広げる
「傍を楽にする」という考え方は、単に目の前の同僚やお客様に親切にすることだけではありません。この考え方をさらに一歩進めて、「社会全体を楽にする」という視点を持つことが、これからの時代には求められます。
例えば、あなたの会社がSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいるとします。その取り組みは、環境保護や社会課題の解決に繋がり、結果として社会全体を「楽に」します。あなたの仕事が、もし直接的にSDGsに繋がっていなくても、その会社のビジョンに共感し、自分の仕事を通じて間接的に貢献していると考えるだけで、仕事への意義は大きく変わります。
これは、自分の仕事が、まるで湖に投げ込まれた小石のように、小さな波紋を広げ、やがて大きな波となって社会全体に影響を与えるという考え方です。自分が社会の一員として、より良い未来を創ることに貢献しているという実感は、何物にも代えがたい喜びを与えてくれます。
3:成長課題の見つけ方:「善くはたらく」への第一歩
「善くはたらく」ことの重要性は分かったけれど、具体的にどうすればいいのか分からない、自分の成長課題が見つけられない、と感じる方もいるかもしれません。この章では、自己を深く掘り下げ、「善くはたらく」ための成長課題を見つけるための具体的なアプローチをお伝えします。
「自己認識」を深める3つの問い
自己成長の第一歩は、自分自身を深く知ることです。私は研修で、参加者の方にいつもこの3つの問いを投げかけています。
- 「あなたの仕事は、誰を、どのように楽にしていますか?」
- 自分の仕事が、誰にどんな価値を提供しているのか、具体的に想像してみてください。お客様だけでなく、同僚や上司、サプライヤー、ひいては社会全体まで、その影響範囲を広げて考えてみましょう。
- 「あなたの仕事で、最も心が満たされる瞬間はどんな時ですか?」
- 金銭的な報酬や評価とは関係なく、純粋に「この仕事をしていて良かった」と思える瞬間を思い出してください。それは、誰かに感謝された時かもしれませんし、難しい課題を解決できた時かもしれません。この問いは、あなたの仕事における「喜び」の源泉を見つける手助けになります。
- 「今の自分に足りないと思う「仕事力」と「人間力」は何ですか?」
- これまでの問いを通じて見えてきた「仕事の喜び」や「貢献」を、さらに大きくするために、自分に何が足りないかを考えてみましょう。例えば、「もっと専門知識があれば、お客様をもっと楽にできるのに」と感じるなら、それが「仕事力」の成長課題です。「チームメンバーの悩みに気づく力が足りない」と感じるなら、それが「人間力」の成長課題です。
この3つの問いに答えることで、あなたは「善くはたらく」ための自分自身の羅針盤を見つけることができるはずです。
他者からのフィードバックを成長の糧にする
自分一人で成長課題を見つけるのが難しい場合は、信頼できる他者からのフィードバックを求めるのも有効な手段です。上司や同僚、あるいはメンターに、「私の仕事で、もっと貢献できる点があれば教えてください」と尋ねてみましょう。
驚くかもしれませんが、多くの人は、あなたの成長を応援したいと思っています。彼らの率直な意見は、あなたが気づいていない「盲点」を教えてくれる貴重な財産です。ただし、フィードバックは、批判として受け取るのではなく、「より善くはたらく」ためのヒントとして、感謝の気持ちを持って受け止めることが大切です。
【日本語の文章】

まとめ:さあ、仕事に「意味」を見出そう
「善くはたらく」という考え方は、単なる理想論ではありません。それは、日々の仕事に意味と喜びを見出し、あなたの人生を豊かにするための最も実践的なアプローチです。
あなたの仕事は、誰かを幸せにする物語
あなたの仕事は、お金を稼ぐための作業ではなく、誰かを幸せにするための「物語」です。その物語の主人公は、あなたです。この連載を通じて、あなたの物語を、より豊かで、より意味のあるものにしていくお手伝いができれば幸いです。
成長の旅は、ここから始まる
「善くはたらく」ための成長は、決して終わりのない旅です。この連載が、あなたのその旅の羅針盤となり、あなたが進むべき道を明るく照らしてくれることを願っています。明日から、あなたの仕事が誰かを楽にしている瞬間を、意識的に探してみてください。
お読みいただきありがとうございました。皆さんのキャリアと組織の成長にお役に立てれば幸いです。








