善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

6日間で養う「気づく力」~自分らしく善く働くための自己発見の旅~

第4回:他者の視点・ニーズに気づく~共感力を高め、関係性を深める~

皆さん、こんにちは。坂本です。

「気づく力」を養う旅も、いよいよ折り返し地点の4日目を迎えました。

これまで、私たちは自分自身の「感情・思考」に気づき、心のモヤモヤを解消する方法から、「価値観・強み」を発見して人生の羅針盤を見つけること、さらには私たちの判断を誤らせる「無意識のバイアス」に気づき、思考の偏りを修正することについて学んできました。これらはすべて、自分自身の内面への深い気づきに焦点を当てたものでした。

しかし、私たちは社会の中で生きており、仕事も人生も、他者との関わりなしには成り立ちません。

  • 「なぜ、あの人は私の提案に賛同してくれないのだろう?」
  • 「部下は何を求めているのだろう?」
  • 「顧客の本当のニーズは何なのか?」

日々の仕事の中で、こんな風に感じたことはありませんか?コミュニケーションのすれ違いや人間関係の摩擦の多くは、「相手の視点やニーズ」に気づくことの不足から生じます。どんなに素晴らしいアイデアやスキルを持っていても、それを相手に「伝わる」形で提供できなければ、その価値は半減してしまいます。

私自身、長年リーダーシップ研修やコーチングに携わる中で、リーダーが最も苦労する点の一つが、「多様なメンバーの心に寄り添い、力を引き出すこと」だと感じています。そして、その鍵となるのが、他者への深い「気づき」に基づいた「共感力」です。ドラッカーも、リーダーシップの根幹は「貢献」であり、それは他者のニーズや組織の目的への深い理解から生まれると示唆しています。

今日の記事では、皆さんが他者の視点やニーズに気づき、共感力を高めることで、より良好な人間関係を築き、チームとしての成果を最大化するためのヒントとワークをお届けします。

1. あなたと「他者」を隔てる壁~「自分フィルター」のその先へ~

前回の連載で「事実は一つ、解釈は無限」とお伝えしたように、私たちは皆、自分自身の経験、知識、価値観、そして感情という「フィルター」を通して世界を見ています。これは他者も同様です。つまり、あなたが見ている「事実」は、相手にとっては全く異なる「解釈」に見えている可能性があるのです。

この「自分フィルター」に囚われすぎると、以下のようなコミュニケーション上の課題が生じやすくなります。

  • 押し付け: 自分の正しさを主張するばかりで、相手の意見や感情を受け入れられない。
  • 誤解: 相手の言葉の裏にある真意やニーズを汲み取れず、見当違いな対応をしてしまう。
  • 不信感: 「この人は私のことを理解してくれない」という感覚を相手に与えてしまう。
  • 対立の激化: 意見の相違が、感情的な衝突に発展しやすい。

こうした壁を乗り越えるためには、意識的に「自分フィルター」を外し、相手の「フィルター」を通して物事を捉え直す努力が必要です。これが、他者の視点に気づくことの第一歩です。

2. 共感力を高める「気づき」のプロセス

他者の視点やニーズに気づくための最も強力なツールは、「共感(Empathy」です。共感とは、単に相手の意見に賛成することではなく、「相手がそのように感じ、考えていることを理解しようと努める」姿勢を指します。

この共感力を高めるための「気づき」のプロセスは、以下の3つのステップで考えることができます。

2.1. ステップ1:相手の「感情」に気づく

相手の言葉だけでなく、表情、声のトーン、しぐさ、沈黙といった非言語コミュニケーションに意識を向け、相手がどんな感情を抱いているのかに気づこうとします。

  • 「彼は今、少し戸惑っているようだ」
  • 「彼女は、この件について不満を感じているのかもしれない」
  • 「この沈黙は、考えているのか、それとも諦めているのか?」

感情に気づくことで、相手の心の状態を推測する手がかりが得られます。

2.2. ステップ2:相手の「思考・背景」に気づく

感情に気づいたら、次にその感情の背景にどのような思考や、相手の経験、立場、価値観が影響しているのかを想像します。

  • 「なぜ、彼は戸惑っているのだろう?何か分からないことがあるのか、それとも別の懸念があるのか?」
  • 「彼女が不満を感じているのは、私の指示が曖昧だったからか、それとも過去の経験からくるものなのか?」

ここで、前々回に学んだ「無意識のバイアス」への気づきが役立ちます。自分のフィルターで決めつけず、相手のフィルターを想像するのです。ドラッカーが言うように、リーダーは部下の「強み」だけでなく、「何が彼らを動機づけるか」を理解する必要があります。

2.3. ステップ3:相手の「ニーズ」に気づく

感情と思考・背景を理解しようとすることで、最終的に相手が「何を求めているのか」「本当は何を必要としているのか」という「ニーズ」に気づくことができます。

  • 戸惑っている部下のニーズは、「情報」かもしれないし、「承認」かもしれない、あるいは「助け」かもしれない。
  • 不満を感じている同僚のニーズは、「話を聞いてほしい」ことかもしれないし、「状況の改善」かもしれない、あるいは「理解されたい」ことかもしれない。

このニーズに気づくことで、私たちは表面的な問題解決だけでなく、根本的な解決策や、相手が本当に求めている支援を提供できるようになります。

共感力向上によるベネフィット

  • 信頼関係の構築: 相手は「この人は自分を理解しようとしてくれる」と感じ、深い信頼を寄せるようになります。
  • コミュニケーションの質向上: 表面的な会話に留まらず、本音での対話が可能になり、問題解決がスムーズになります。
  • チームの生産性向上: メンバーの潜在能力やモチベーションを引き出し、チーム全体のパフォーマンスを最大化できます。
  • 顧客満足度向上: 顧客の真のニーズを把握し、期待を超えるサービス提供が可能になります。
  • リーダーシップの強化: 部下の自律性を尊重し、彼らが主体的に動くためのサポートができるようになります。これは、私のコーチングにおいて最も重視している点です。

3. 今日からできる!あなたの「他者への気づき」を深めるワーク

それでは、今日の学びを実践に移すための簡単なワークを試してみましょう。これは、皆さんが他者の視点やニーズに意識的に気づくための具体的な訓練となります。

ワーク:あの人の「言葉の裏側」を想像する

このワークは、最近あなたがコミュニケーションを取った中で、「もう少し深く理解したい」と感じた相手の言葉や行動を一つ取り上げ、その裏側にあるものを想像する練習です。

  1. STEP 1】最近、仕事やプライベートで、誰かの言葉や行動について「なぜだろう?」と感じた場面を一つ思い浮かべる。
    • 相手があなたに何かを依頼した時、意見を述べた時、あるいは期待通りの反応が得られなかった時など、具体的な場面を思い出し、その時の相手の言葉や行動を書き出してみましょう。
    • (例:
      • 上司が突然、新しいプロジェクトへの参加を指示してきた。「これ、急ぎで頼むね。」
      • 部下が、最近、会議でほとんど発言しなくなった。
      • クライアントが、こちらの提案に対して「ちょっと検討します」とだけ答えた。)
  2. STEP 2】その言葉や行動の背後にある、相手の「感情」を想像する。
    • 相手はどんな表情をしていたか、どんな声のトーンだったか?想像できる範囲で、感情の候補をいくつか書き出してみましょう。
    • (例:
      • 上司:「急な指示」の裏に「焦り」「プレッシャー」?
      • 部下:「発言しない」裏に「不安」「諦め」「疲労」?
      • クライアント:「検討します」の裏に「懸念」「疑問」「期待外れ」?)P 3】その感情の背景にある、相手の「思考」や「状況」「ニーズ」を想像する。
  3. 【STEP 3】その感情の背景にある、相手の「思考」や「状況」「ニーズ」を想像する。
    • もし自分が相手の立場だったら、何を考え、何を求めているだろう?相手の役職、責任、過去の経験、今抱えているかもしれない課題などを想像してみましょう。
    • (例:
      • 上司:もしかしたら、上から急な指示が下りてきて、時間がない中で私に頼むしかなかったのかもしれない。私の能力を信頼してくれているニーズがあるのかも。
      • 部下:過去に発言して批判された経験があるのかもしれない。あるいは、別のタスクで手一杯で、発言する余裕がないのかもしれない。安心して発言できる場や、支援を求めるニーズがあるのかも。
      • クライアント:提案内容のメリットが不明確だったのかもしれない。あるいは、予算や社内調整に関する別の懸念があるのかもしれない。具体的な情報や、懸念の解消を求めるニーズがあるのかも。)

このワークを実践することで、皆さんは表面的な言葉や行動だけでなく、その裏側にある相手の「心の動き」に意識的に気づき、より深く理解できるようになるはずです。この理解が、皆さんのコミュニケーションの質を大きく高め、より良い人間関係を築く力となるでしょう。

おわりに:気づきのバトンが、共創の未来を拓く

今日の記事では、他者の視点やニーズに気づき、共感力を高めることの重要性とその実践方法についてお伝えしました。他者への深い気づきは、リーダーシップの中核をなす力であり、チームとして、組織として、そして社会全体として「共創」していくために不可欠な能力です。

私がお伝えしているコーチングにおいても、相手の言葉の裏にある「本当に伝えたいこと」や「潜在的な可能性」に気づくことが、クライアントの自律的な成長を促す上で最も大切なスキルです。

さあ、今日から皆さんの「心のアンテナ」を相手に向けて、その言葉の裏側にある「メッセージ」を受け取ってみませんか?その気づきのバトンが、皆さんの周囲に信頼と協力の輪を広げ、より豊かな「共創の未来」を拓くことでしょう。

明日は、「第5回:社会・環境の変化に気づく~未来を読み解き、機会を掴む~」と題して、いよいよマクロな視点での「気づく力」に焦点を当てます。変化の激しい時代を生き抜くための、戦略的なキャリア形成のヒントです。どうぞお楽しみに!

私は、皆さんが共感力を磨き、周囲と共に最高の成果を生み出せるよう、全力で応援いたします。

関連記事一覧