善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

新たにマネジャーとなった皆さんにとって、「仕事を任せる」というのは大きな壁の一つではないでしょうか。

つい「自分でやったほうが早い」と感じたり、「ちゃんとできるか不安」と思ったりして、仕事を抱え込んでしまうケースは少なくありません。

しかし、チームを育てるうえで「任せる力」は不可欠なスキルです。

適切に仕事を任せることができれば、部下の成長を促し、チーム全体の生産性と主体性を高めることができます。

今回は、組織開発コンサルタント、国家資格キャリアコンサルタントの視点から、

「任せる力」を育てるための具体的な仕事の渡し方・任せ方のコツをストーリーを交えながら丁寧にお伝えしていきます。

1章:「任せること」への恐れを乗り越える

以前、私が支援したD社のマネジャーDさんは、リーダーシップに定評がありながらも、なかなか部下育成が進まず苦しんでいました。

理由を探ると、彼はこう漏らしました。

「自分でやったほうが確実だし、任せて失敗されると結局手間が増えるから……」

この気持ちは多くの新任マネジャーに共通するものです。

しかし、部下は「任される経験」なしに成長することはありません。

むしろ、最初から完璧を求めず、「失敗も成長の一部」と捉える意識転換が必要です。

任せるとは、単なる「作業の委任」ではなく、

「部下の成長の機会をつくるリーダーの役割」なのです。

2章:任せる前に必要な3つの準備

仕事を任せる前には、必ず3つの準備をしておきましょう。

① ゴールを明確にする

任せるときに最も重要なのは、「何を達成するのか」というゴールをはっきり伝えることです。

曖昧な指示では、部下は迷ってしまいます。

たとえば、

• 「次回の会議資料を、来週月曜までにまとめてほしい」

• 「このプロジェクトで、お客様満足度を5%向上させるアイデアを出してほしい」

など、具体的な成果イメージを共有します。

② 成功の条件と評価基準を共有する

何をもって「うまくいった」と判断するか、あらかじめすり合わせておきます。

品質、納期、コスト、プロセスの基準などを明確にしましょう。

③ サポート体制を設計する

任せっぱなしではなく、適切なサポートを提供できる体制を用意しておきます。

例えば、

• 進捗確認のタイミングを決める

• 困ったときに相談できる窓口を明示する

といった配慮が、安心して任せられる環境をつくります。

3章:仕事の「渡し方」で差がつく

仕事を任せるときには、どのように仕事を渡すかも大きなポイントです。

【効果的な仕事の渡し方5ステップ】

① 背景を説明する

→ 仕事の目的や背景を共有し、部下が「なぜこの仕事をするのか」を理解できるようにします。

② ゴールを明確に伝える

→ 成果イメージを具体的に示します。

③ 期待するプロセスを伝える

→ 完成イメージだけでなく、進め方のコツや注意点も共有します。

④ 質問を促す

→ 「わからないことはない?」と積極的に質問を促し、理解度を確認します。

⑤ 権限と裁量を明示する

→ 「ここまでは自由に進めていい」「ここは必ず相談してほしい」など、権限の範囲を明確にします。

この流れを丁寧に踏むことで、部下は安心して主体的に動くことができるようになります。

4章:任せた後にやるべきサポートとは?

任せた後も、「放置」ではなく「伴走」する意識が大切です。

具体的には、

• こまめな進捗確認(マイクロマネジメントではなく、支援的スタンスで)

• ポジティブなフィードバック(小さな進展にも光を当てる)

• 障害が出たときのサポート(責任追及より原因共有)

これらをバランスよく行うことが求められます。

特に、「できている点」をきちんと認め、称賛することが、部下の成長意欲を大きく後押しします。

また、うまくいかなかったときも、失敗を責めるのではなく、

「何が原因だったか」「次はどうするか」

を一緒に考える姿勢を持ちましょう。

5章:任せる力はチームを「自走」させる力になる

任せる力を育てることは、チームにとって単なる業務効率化以上の意味を持ちます。

それは、メンバー一人ひとりが「自分で考え、動く」力を育てることにつながります。

自走できるチームは、マネジャーの指示を待たずに、

• 自主的に課題を見つけ

• 解決策を考え

• チーム全体で成果を上げる

というサイクルを回すことができます。

つまり、「任せること」こそ、マネジャー自身が真のリーダーシップを発揮するためのカギなのです。

📚おすすめの一冊

『1分間リーダーシップ』

(著:ケン・ブランチャード、パトリシア・ジガーミ、ドレナ・ジガーミ)

「任せる力」を育てるうえで、新任マネジャーにとって非常に参考になる一冊です。

本書では、部下一人ひとりの「発達段階」に応じた指導スタイル(教える・支援する・委任する)を選ぶことの重要性がわかりやすく解説されています。

ただ任せるだけではなく、成長に合わせたサポートを変えることで、部下の自立を促す。

そんな、任せ方の本質が学べる内容です。

短時間で読める実践書なので、忙しいマネジャーにもぴったりです。

関連記事一覧