善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

Day 3:あなたの「強み」は本当に貢献できているか?:フィードバックの分析法

こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。

Day 1で「貢献の二重帳簿」を作成し、Day 2で失敗を「学びの資産」に変える心理学的な技術を身につけました。これにより、あなたの「自己認識」はかなり深まったはずです。

しかし、ここで立ち止まって考えてみましょう。あなたが「これは私の強みだ」と思っていることが、本当に組織の成果に貢献できているでしょうか?

ドラッカーは、「自己の強みは、他人にとっての成果によってしか証明されない」と示唆しました。つまり、あなたの自己認識がどれだけ深くても、それは他者からのフィードバック(評価)という鏡を通して検証しなければ、独りよがりな貢献に終わってしまう危険性があるのです。

今日のテーマは、この「フィードバック」を感情抜きで受け取り、分析し、あなたの真の強みと成長課題を特定する技術です。特に、耳の痛いフィードバックこそ、来年の目標設定に必要な「金の卵」です。フィードバックを「個人の評価」ではなく「組織の成果を改善するヒント」として捉え直す哲学を確立しましょう。

自己認識を阻む最大の罠:「ジョハリの窓」と貢献の死角

私たちの自己認識は、しばしばバイアスによって歪められています。心理学の「ジョハリの窓」というフレームワークは、自己認識と他者認識のズレを理解するのに役立ちます。その中でも、特にあなたの貢献を阻害しているのが「盲点の窓(Blind Spot)」、つまり「他者は知っているが、自分は気づいていない」領域です。

盲点の窓を放置する「心理的防衛反応」

なぜ、私たちは他者からの指摘(フィードバック)を受け入れにくいのでしょうか?それは、自己概念を守ろうとする「心理的防衛反応」が働くからです。

  • 否認(Denial): 「そんな事実はない」「それは私の問題ではない」と、指摘自体を拒否する。
  • 合理化(Rationalization): 「仕方なかった」「環境が悪かった」と、原因を外部に押し付け、自分を正当化する。

これらの防衛反応が、あなたのSM機能の扉を固く閉ざし、フィードバックという成長の機会をシャットアウトしてしまいます。フィードバックを受け取るには、まずこの防衛反応を自覚し、「一旦受け止める」姿勢(Day 2のAモード)が必要です。

強みと弱みは「行動」の裏表である:強みの行き過ぎ

多くの人は、フィードバックで「強み」を褒められたら喜び、「弱み」を指摘されたら落ち込みます。しかし、あなたの行動は、強みと弱みが常に表裏一体で存在しています。

比喩:高速道路とブレーキ

あなたの「意思決定の速さ」(強み)は、「熟慮不足による見落とし」(弱み)と紙一重です。高速で走る車(強み)には、高性能なブレーキ(弱みの意識)が必ず必要です。フィードバックとは、「あなたの強みのせいで発生している弱み」を教えてくれる貴重な信号なのです。真の強みとは、弱みを知り、それをコントロールできている状態を指します。

フィードバックは「感情」と「データ」に分離せよ

フィードバックを受け取る際に、多くの人が失敗するのは、「感情」と「データ(事実)」を混同してしまうことです。

  • 感情: 「あの言い方は腹が立つ」「私を評価していない」
  • データ: 「報告書の最終チェックがいつも抜けている」「会議で発言する時間が長すぎる」

批判のトーン(感情)に惑わされず、その裏にある具体的で再現性のある「行動データ」だけを冷静に抽出する技術が必要です。これはDay 2で学んだ「Aモード」の起動が役立ちます。フィードバックは、あなたへの評価ではなく、あなたの行動がもたらした「組織への影響データ」だと捉えましょう。

ドラッカーが求めた「貢献の対話」

ドラッカーは、マネージャーと知識労働者の関係は、「対話」を通じて目標設定と貢献をすり合わせるべきだとしました。フィードバックとは、この「対話」の重要な一部であり、あなたの行動が組織の戦略(L機能)や仕組み(M機能)とズレていないかを確認する機会です。フィードバックを「上からの評価」ではなく、「対話のための材料」として活用しましょう。

フィードバックを「貢献機能」で分類するワーク

受け取ったフィードバックを、ただの個人的な評価で終わらせず、あなたのLFMSM(リーダーシップ、フォロワーシップ、マネジメント、セルフマネジメント)という「貢献の機能」の視点で分類し直すワークを行います。これにより、フィードバックが個人的な批判ではなく、組織の成果を改善するための具体的なヒントに変わります。

このワークは、特に管理職の方が部下の成長課題を見極める際にも、非常に有効です。

ワーク:フィードバックを4つの機能に分類する

過去一年間に受け取った、ポジティブ、ネガティブ問わず、最も印象的なフィードバックを5つ選び、それぞれ以下の4つの「貢献機能」のどれに関わるものか分類してください。

  1. リーダーシップ(L)機能: チームの目標設定、方向性、動機づけに関するもの(例:「君のビジョンは明確でチームが動く」)
  2. フォロワーシップ(F)機能: チームへの建設的な異論、情報提供、リスク指摘に関するもの(例:「会議での異論の出し方が感情的だ」)
  3. マネジメント(M)機能: プロセス、ルール、リソース管理、リスクヘッジに関するもの(例:「プロジェクトの進捗報告が不十分で不安になる」)
  4. セルフマネジメント(SM)機能: 自己認識、感情コントロール、プロフェッショナルとしての振る舞いに関するもの(例:「プレッシャー下でも冷静な態度を保っている」)

最も多く指摘された機能が「来年の越境課題」である

分類の結果、ネガティブなフィードバックが最も多く集まった機能こそが、来年あなたが「越境」して貢献の精度を高めるべき、最優先の成長課題です。これは、組織の「最も痛い穴」と直結しています。

例えば、F機能(フォロワーシップ)に関するネガティブなフィードバック(「異論がない」「本音を言わない」)が多ければ、あなたは来年、「誰も指摘しない組織の暗黙知やリスク」に建設的に貢献することを意識的に行う必要があります。これは、あなたの役割を超えた、組織への戦略的な貢献となります。

ポジティブなフィードバックは「強みの配分先」を示す

逆に、ポジティブなフィードバックが多く集まった機能は、あなたの「真の強み」が最も活かされ、リターンが大きい分野です。来年は、この機能へのリソースと時間配分を意図的に増やし、さらにその強みを伸ばすことで、組織全体の成果を牽引することができます。

ドラッカーのいう「強みを活かす」とは、単に好きなことをやるのではなく、「最も組織の成果に結びついている強み」に、あなたの時間という最も貴重なリソースを集中させることです。

貢献を加速させる「強みの配分戦略」とDay 4への移行

フィードバック分析により、あなたの「強みの配分先」と「来年越境すべき貢献の穴」が明確になりました。この二つを結びつけることが、曖昧な目標を具体化する最後のステップです。

強みの配分:時間の使い方を見直す

あなたの強みがL機能(リーダーシップ)に集中しているのに、多くの時間をM機能(管理・事務作業)に割いていたら、組織への貢献機会を失っています。

  • フィードバック分析の結果に基づき、来年のあなたの時間の使い方を「貢献度の高い機能」に30%以上シフトさせる計画を立ててください。これは、単なるタスク管理ではなく、プロフェッショナルとしての時間の使い方を再設計する行為です。

フィードバックを「学習曲線」として捉える

フィードバックは、「一度の評価」として捉えるのではなく、「あなたの学習曲線の進捗状況を示す信号」として捉えるべきです。

実践:フィードバックの時系列分析

  • 同じネガティブなフィードバック3ヶ月以上繰り返された場合、それはあなたの成長課題ではなく、「構造的な問題(習慣・仕組みの欠陥)」の可能性があります。Day 5で学ぶナッジを使って、その構造を設計し直す必要があります。

Day 4への橋渡し:越境コミットメントの作法

今日までに、「何を貢献すべきか(ドラッカー)」、「感情的な壁をどう乗り越えるか(心理学)」、「貢献度を他者視点でどう検証するか(フィードバック)」という、目標設定の土台が完成しました。

Day 4では、いよいよこれらの知見を統合し、「越境コミットメント」という、あなたの役割を超えた、組織の成果に直結する具体的な目標設定の作法を解説します。曖昧な「努力目標」を、周囲を巻き込む「貢献行動」に変換しましょう。

まとめ:フィードバックは「成長の最短ルート」です

Day 3では、フィードバックを感情抜きで受け止め、「貢献の機能」という客観的なフレームワークで分類・分析する技術を習得しました。

耳の痛いフィードバックこそが、あなたの「貢献の死角」を教えてくれる、最高の成長資源です。この資源を無視せず、強みを集中させ、弱みを戦略的な成長課題に変えること。これこそが、プロフェッショナルとしてのセルフマネジメントであり、キャリアを加速させる最短ルートです。

あなたの「強み」を、来年、組織の最も必要とされる場所に配分する戦略家になりましょう!この一歩が、あなたの市場価値を決定づけます。

お読みいただきありがとうございました。皆さんのキャリアと組織の成長にお役に立てれば幸いです。

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