善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

フィードバックの本当の役割とは?

フィードバックと聞くと、「上司からの指摘」や「ミスを指摘される場面」を思い浮かべる人は少なくありません。しかし、本来のフィードバックは、単なるダメ出しではなく、相手の成長をサポートし、チームの生産性を向上させる重要なコミュニケーションの一つです。

しかし、伝え方を誤ると、部下のモチベーションを下げ、心理的安全性を損なう原因にもなります。一方で、適切なフィードバックを行えば、部下のやる気を引き出し、自発的な行動変容を促すことができます。

「強くて善いチーム」では、日常的に適切なフィードバックが交わされ、それがメンバーの成長を後押ししています。本記事では、フィードバックを効果的に行うための5つのポイントを詳しく解説します。

フィードバックの基本|なぜ「伝え方」が重要なのか?

フィードバックは、上司から部下へ一方的に行うものではなく、「相手の行動をより良くするためのコミュニケーション」です。しかし、多くの職場では、フィードバックが単なる「ダメ出し」になり、相手にとってネガティブな体験になってしまっています。

例えば、「なんでこんなミスをしたんだ?」と叱責するだけのフィードバックは、相手の萎縮を招き、成長の機会を奪うことになります。逆に、「次回はこうするともっと良くなるよ」と伝えることで、前向きな行動変容につながります。

効果的なフィードバックを行うために、以下の5つのポイントを押さえておくことが重要です。

① 心理的安全性を確保する|フィードバックの前提を整える

フィードバックを行う際に最も重要なのは、「心理的安全性」を確保することです。心理的安全性とは、チーム内で「何を言っても大丈夫」という安心感があり、メンバーが萎縮せずに発言や行動ができる状態を指します。

なぜ心理的安全性が重要なのか?

心理的安全性が低い職場では、部下は次のように感じやすくなります。

• 「どうせ何を言っても否定される」

• 「また怒られるかもしれない…」

• 「失敗したら評価が下がるから、チャレンジしない方がいい」

このような状態では、部下はフィードバックを前向きに受け止めるどころか、自己防衛的になり、成長の機会を失ってしまいます。

逆に、心理的安全性が確保されていると、部下は「この上司の言うことなら素直に受け入れよう」「挑戦しても大丈夫」と感じるため、フィードバックがスムーズに伝わり、行動変容につながりやすくなります。

心理的安全性を高めるための3つのポイント

1. 日常的なコミュニケーションを増やす

• 普段から雑談を交え、部下との信頼関係を築く。

• 「報告・連絡・相談」だけでなく、部下の意見にしっかり耳を傾ける

• 「最近どう?」と気軽に声をかける習慣を持つ。

2. ポジティブなフィードバックを意識する

• フィードバックは「指摘」だけでなく、「良い点」も伝える。

• 「今回の〇〇はすごく良かったよ!」と、成功体験を強調することで自信を持たせる

3. 成果だけでなく、プロセスも評価する

• 「結果が出たかどうか」だけでなく、「どんな努力をしたか」に注目する。

• 「結果はまだ出ていないけど、ここまでの過程はすごく成長しているね!」と伝えることで、部下のモチベーションを維持できる

心理的安全性を高めることが、効果的なフィードバックの土台となるのです。

② フィードフォワードを取り入れる|未来志向のアドバイスをする

フィードバックの多くは「過去の行動」を指摘するものですが、「未来の行動」に焦点を当てたフィードフォワードを取り入れることで、より前向きな成長を促すことができます」

フィードフォワードとは?

フィードバックが過去の行動を振り返るのに対し、フィードフォワードは「未来の成長」にフォーカスするアプローチです。

例えば、部下がプレゼンでミスをした場合、

• フィードバック:「今回のプレゼンはミスが多かったね」(過去のミスを指摘)

• フィードフォワード:「次回のプレゼンでは、最初に要点を明確にすると、もっと伝わりやすくなるよ」(未来への改善策を提示)

フィードフォワードは、「なぜできなかったのか?」ではなく、「次はどうすればうまくいくか?」に焦点を当てるため、部下が前向きに行動を変えやすくなります。

フィードフォワードを実践するための3つのステップ

1. 改善点を伝える前に、まず「できたこと」を認める

• 「今回のプレゼン、準備がしっかりできていたね!」とポジティブな面を先に伝える。

• 「こういう部分は良かった」と伝えることで、受け手が安心して話を聞ける環境を作る

2. 「次回はどうすればいいか?」を一緒に考える

• 「次のプレゼンでは、もっとスムーズに伝えるために、どんな工夫ができるかな?」

• 「今度は、構成を少し変えてみるのはどう?」

一方的な指示ではなく、部下自身に考えさせることで、主体的な行動変容につなげる。

3. 「次の機会が楽しみ」とポジティブなメッセージを伝える

• 「次回のプレゼン、期待してるよ!」

• 「これを活かせば、次はもっとスムーズに進められるね!」

未来の可能性を示すことで、部下は「成長できる!」と前向きな気持ちになれるのです。

③ SBIモデルを活用する|具体的で分かりやすい伝え方

SBIモデル(Situation, Behavior, Impact)は、フィードバックを論理的かつ明確に伝えるためのフレームワークです。

• Situation(状況): どのような場面で発生したのか

• Behavior(行動): 相手がどのような行動をしたのか

• Impact(影響): その行動が周囲や業務にどのような影響を与えたのか

この流れで伝えることで、感情的な指摘を避け、論理的にフィードバックを行うことができます。

実践例:

• Situation(状況):昨日の会議で

• Behavior(行動):議論が進んでいる途中で、何度も話を遮ってしまったよね

• Impact(影響):その結果、他のメンバーが話しづらい雰囲気になっていたよ

SBIモデルを活用することで、相手が「なぜ改善が必要なのか?」を理解しやすくなり、フィードバックの納得感が高まります。

④ 相手に気づきを与える|自ら考え、成長するきっかけを作る

フィードバックは、単に「良い・悪い」を伝えるだけでは効果がありません。本当に意味のあるフィードバックとは、相手自身が気づきを得て、自発的に行動を改善できるようにすることです。

上司から一方的に指摘された場合、受け手は「直さなければならない」とは思っても、「なぜそれが問題なのか?」を自分で考えられないことが多くなります。すると、言われたから直すだけで、次の場面でも同じミスを繰り返してしまう可能性が高くなります。

そこで重要なのが、「気づきを促すための質問」を投げかけることです。質問を通して、相手自身が問題点に気づくと、「自分で納得して改善しよう」という意欲が生まれ、成長スピードが加速します。

気づきを与える質問の具体例

1. 行動を振り返らせる問い

• 「今回のプレゼン、どこが一番うまくいったと思う?」

• 「もしもう一度やるとしたら、どこを工夫したい?」

• 「チームメンバーはどう感じていたと思う?」

2. 視点を広げる問い

• 「もし自分が相手の立場だったら、どう受け取ると思う?」

• 「他のメンバーが同じ状況だったら、どんなアドバイスをする?」

3. 未来の行動を考えさせる問い

• 「次に同じような場面があったら、どんな工夫ができる?」

• 「次回はどんな方法を試してみたい?」

実践例|質問を活用したフィードバック

ケース1:プレゼンで内容が伝わりにくかった部下へのフィードバック

✗ NG:「説明が分かりづらかったね。もっと分かりやすく話して」

〇 OK:「プレゼンの中で、伝えたかった一番のポイントは何だった?」

→ まず本人に考えさせ、伝わりにくかった原因を自分で整理させる

✗ NG:「スライドの作り方がダメだったよ」

〇 OK:「次回は、どう工夫すればもっと伝わるスライドになると思う?」

→ 改善策を自ら考えさせ、主体的に行動を変えられるよう促す

このように、質問を活用することで、部下が「自分で考えて答えを導く」機会を作ることができます。その結果、ただ指摘されるよりもはるかに高い納得感と学習効果を得ることができます。

⑤ モチベーションを高める|ポジティブな変化を促す

フィードバックは、相手の成長を支援するために行うものですが、伝え方によってはモチベーションを下げる原因にもなり得ます。

例えば、「この作業、もっとちゃんとやってほしい」「ミスが多いから気をつけて」といった言葉をかけられると、受け手は「怒られた」「自分はダメだ」と感じ、モチベーションが低下してしまいます。

しかし、適切なフィードバックを行えば、部下は「自分は成長できている」「もっと頑張ろう」と前向きな気持ちになることができます。そのためには、ポジティブな要素をしっかり伝えることが重要です。

モチベーションを高めるフィードバックのポイント

1. ポジティブな要素を必ず含める

• 「ここは良かったよ!」と、相手の努力や成果を認める。

• 成果だけでなく、「プロセス」も評価する(例:「今回の準備はすごく丁寧だったね」)。

2. 「サンドイッチ型フィードバック」を活用する

①良い点 → ②改善点 → ③ポジティブな締めくくり の順で伝える。

• 例:「今回の資料作り、すごく分かりやすかったよ!(良い点)ただ、もう少し具体例を増やすと、もっと説得力が増すと思う。(改善点)とはいえ、すごくいい方向に進んでいるね!次回も楽しみにしてるよ。(ポジティブな締め)」

3. 「次への期待」を伝える

• 「次のプレゼン、どんな工夫をしてくれるか楽しみだよ」

• 「これを活かせば、次はもっとスムーズに進められるね」

実践例|モチベーションを高めるフィードバック

ケース2:報告書の質が低かった部下へのフィードバック

✗ NG:「もっと丁寧に書いて。適当すぎるよ」

〇 OK:「報告書のポイントが簡潔にまとまっていて良かったね。もう少し具体例を加えると、さらに説得力が増すと思うよ。次回のレポートも期待してる!」

このように、「どこが良かったか」を明確に伝え、次の行動につながる前向きなメッセージを加えることで、部下のモチベーションを高めることができます。

まとめ|フィードバックの伝え方を変えれば、チームはもっと強くなる

フィードバックは、相手の成長を支える重要なコミュニケーション であり、適切に行うことで、信頼関係が深まり、チームの生産性が向上します。

• 心理的安全性を確保し、フィードバックを受け入れやすい環境を作る

• 過去を責めるのではなく、未来の改善にフォーカスする「フィードフォワード」を活用する

• SBIモデルを使い、具体的で分かりやすい伝え方をする

• 相手に気づきを与える質問を使い、自発的な行動変容を促す

• ポジティブな要素を加え、モチベーションを高める伝え方を意識する

フィードバックの伝え方を変えれば、チームの雰囲気も、メンバーの成長も、大きく変わります。あなたの伝え方一つで、チームの未来は変わります。今日から、より良いフィードバックを実践していきましょう!

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