善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

最高のマネジメント結論:成果と幸福を生み出す「I’m OK, You’re OK」の実践原則

こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。

この連載を通して、私たちはストロークの質、自我状態の使い分け、ゲーム分析、そして人生脚本という、TA(交流分析)の主要な理論を、ドラッカーのマネジメント哲学と結びつけて学びました。

連載の最終回である本日は、TAの目指す究極のゴール、I’m OK, You’re OK(相互承認)」のライフポジション(人生態度)をテーマとします。

I’m OK, You’re OK」とは、「私は価値ある存在であり、あなたもまた価値ある存在である」という相互信頼の姿勢です。この対等な関係こそが、ドラッカーが知識労働者に対して求めた「成果への責任(責任を果たすこと)」を可能にする、組織の最終形態です。

リーダーがこのライフポジションを体現することで、組織は自己否定内輪揉めから解放され、「成果の追求」という外向きの目的にエネルギーを集中できるようになります。最高のマネジメント結論を、一緒に見届けていきましょう。

「I’m OK, You’re OK」とは?:相互承認のリーダーシップ

「I’m OK, You’re OK」のライフポジションは、四つの基本姿勢の中で唯一、現実的かつ建設的な関係性を築く土台となります。

四つのライフポジションが組織にもたらす弊害

TAでは、人間関係の基本姿勢を以下の4つのライフポジションで分類します。

I’m OK, You’re OK以外の組織への弊害

  1. I’m OK, You’re NOT OK(批判的親の罠):
    • リーダーの姿勢: 「自分は正しく、他人は間違っている。」
    • 組織への影響: 常に加害者被害者の関係が生まれ、リーダーは過剰な支配を、部下は依存や反抗を選びます。
  2. I’m NOT OK, You’re OK(依存的な被害者の罠):
  1. リーダーの姿勢: 「自分は無力で、他人に助けを求める。」
  2. 組織への影響: リーダーが無力な被害者の役割を演じ、部下が救済者として疲弊する、不安定な依存関係が生まれます。
  3. I’m NOT OK, You’re NOT OK(諦念と絶望):
  1. リーダーの姿勢: 「自分もダメ、他人もダメだ。」
  2. 組織への影響: 相互不信が蔓延し、諦めと無気力が組織全体を覆い、離職率が高まります。

「I’m OK, You’re OK」は、これらの非生産的な関係性から脱却し、アダルト(Adult)の自我状態による対等な協働を可能にする唯一の土台です。

ドラッカーの「成果と責任」を可能にする土台

ドラッカーは、知識労働者には「成果を出すための責任」が必要だと強調しました。しかし、この「責任」は、上から与えられるものではなく、自律的に引き受けるものでなければ機能しません。

  • I’m OK(自己肯定感): 部下が「自分には目標を達成する能力と価値がある」という自己信頼を持つこと。
  • You’re OK(他者への信頼): 部下が「上司や同僚は自分を信頼し、建設的にサポートしてくれる」という他者信頼を持つこと。

この相互信頼の土台があって初めて、部下は「この目標の達成は自分の責任だ」と主体的に引き受け、失敗を恐れずに最大の成果を追求することができるのです。

「I’m OK, You’re OK」を実現するリーダーの規律と実践

ライフポジションは、一度決めたら終わりではありません。日々のコミュニケーションの中で、リーダーが意識的にこの相互承認の姿勢を体現し続けることが必要です。

アダルト自我状態の継続的な活用

「I’m OK, You’re OK」は、感情的なChild批判的なParentではなく、客観的事実と論理に基づいて行動するAdult(成人)の自我状態をベースに確立されます。

アダルトを維持するためのリーダーの規律

  1. 感情の分離: 部下からのネガティブな情報(例:ミス、不満)に対し、反射的に感情的な反応(P or C)を返さず、「事実と感情を分ける」時間(例:5秒の沈黙)を設ける。
  2. 客観的な問い: 「なぜだ!」という感情的な問いではなく、「この結果に至った事実を分析するために、データを見せてほしい」と情報を求める問いかけを行う。
  3. 責任範囲の明確化: 感情論に陥る前に、「この問題に対する私の責任範囲は情報提供、あなたの責任範囲は実行だ」と、線引きを再確認する。

この規律こそが、ドラッカーの言う「マネジメントの科学性」を裏付ける、TAの実践的な側面です。

対立を「I’m OK, You’re OK」で建設的に解決する

組織内での対立や意見の相違は避けられません。しかし、この対立を関係性の深化に利用できるのが、相互承認の姿勢です。

対立解決のための三段階モデル

  1. I’m OK, You’re OK」の確認: 対話の最初に、「私たちは、お互いの意見の妥当性(I’m OK, You’re OKを尊重した上で議論を始める」と宣言する。
  2. ニーズの共有(Adult):あなたの懸念(ニーズ)は、品質の担保だね。私の懸念(ニーズ)は、納期だ。この二つを満たす方法を考えよう」と、感情ではなくニーズを共有する。
  3. 創造的な解決策の模索: どちらかの意見を「勝者」とせず、両者の懸念を解消する「第3の道」を共に探す(シナジーの創出)。

これにより、対立は「どちらが正しいか」のゲームではなく、「どうすれば共に成功できるか」という協働の機会へと変わります。

組織の文化を「許可」と「保護」で支える

「I’m OK, You’re OK」の文化を永続させるために、リーダーは「許可(Permission)」と「保護(Protection)」を提供し続ける必要があります。

文化を維持するためのリーダーの行動

  • 許可:失敗してもいい、挑戦しなさい」「自分の感情や意見を正直に表現していい」というメッセージを、無条件の肯定的ストロークとして送り続ける。
  • 保護:組織内のハラスメントやいじめは絶対に許さない」という毅然とした姿勢を貫き、相互承認の土台を脅かす要因からメンバーを守る。
  • 可能性の提供(ドラッカー): 部下の強みと組織のニーズが合致する、新しい挑戦の機会を与え続けることで、「あなたの可能性を信じている」という無言のストロークを送り続ける。

まとめ:最高のマネジメントとは「人生の成功」の支援

全6回にわたる連載を通じて、私たちはTAの深層心理とドラッカーの経営哲学が、「人を活かし、成果を生み出す」という一点で完全に共鳴していることを確認しました。

最高のマネジメント結論は、I’m OK, You’re OK」という相互承認の土台を築き、部下が自律的に自分の人生脚本を書き換え、成果への責任を果たすことを支援することにあります。

リーダーがこの姿勢を体現し続ける限り、組織は自己否定や非生産的なゲームから解放され、知識の創造という最高の目的に向かって、持続的に成長し続けるでしょう。

皆さんが、この連載で学んだ知識を活かし、ご自身のキャリアと組織のマネジメントに活かされることを心から願っております。

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