善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

この問いに対して、どのような答えが浮かんできますか?

「お金のため」「生活のため」「キャリアを築くため」「人の役に立ちたいから」「成長したいから」──

さまざまな答えがあると思いますし、そのどれもが正解です。今は多様性の時代です。働く動機も一人ひとり違っていて当たり前。他人が「その動機はよくない」と一概に評価できるものではありません。

けれども、これまで多くの職業人と向き合ってきた中で感じていることがあります。

それは、「働く動機が強い人が、最後に生き残る」ということです。

そして、その動機が“健全であるかどうか”が、その人の成長や信頼、長期的な活躍に大きく関わってくるのです。

この記事では、「働く動機の強さ」と「動機の健全性」という2つの軸から、自分らしいキャリアを築いていくためのヒントをお伝えします。

時代が変わっても変わらない、人としての働き方の本質に、一緒に触れていきましょう。

動機には「強さ」と「健全性」の両方がある

まず最初に整理したいのは、「働く動機」とは何か、ということです。

動機とは、“なぜ自分はその行動を取ろうとするのか”という内側から湧き出るエネルギーの源です。

この動機には、大きく2つの側面があります。

1. 強さ(どれだけ深く自分を突き動かすか)

2. 健全性(その動機が自他にとって良いものか)

この2つの視点をもって、働く理由を見つめ直すことが大切です。

「強い動機」は他人から与えられない

よく、「誰かの言葉に感動して、働くモチベーションが上がった」という話を聞きます。

たしかに他人の姿やストーリーから影響を受けることはありますが、それは一時的な“刺激”であり、動機そのものではありません。

動機とは、自分の内側から出てくるものであり、外から与えられるものではないのです。

たとえば、ある人が「小さな頃に受けた恩を、今度は自分が返したい」と思って福祉の道を志すように、動機は人生の中で経験してきたこと、感じたこと、考えてきたことの延長線上にあります。

それがしっかり自分の中に根ざしているとき、人は困難な状況でも粘り強く前に進むことができます。

なぜなら、「やらなきゃ」ではなく、「やりたい」「意味がある」と心の奥で感じているからです。

一見、利己的に見える動機も、必ずしも“悪”ではない

「偉くなりたい」「お金を稼ぎたい」「有名になりたい」──

こうした動機を語ると、どこかネガティブな印象を持たれることがあります。

しかし、私はこれらを一概に否定すべきではないと考えています。

たとえば、日本がまだ貧しかった時代、「お金持ちになりたい」「家族を楽にさせたい」という一心で懸命に働き、事業を成功させた中小企業の創業者たちは少なくありません。

そして、そうした動機を持ってスタートした人が、次第に価値観を変え、社員や地域への貢献を動機とするようになっていったケースも多々見られます。

つまり、動機は変化していくものなのです。

重要なのは、どんな動機であっても、「どこに向かおうとしているのか」「どのような思考に基づいているのか」を、本人が自覚していることです。

「健全な動機」とは何か?

では、健全な動機とは何でしょうか?

ここでいう健全性には、2つの視点が必要です。

1. 自己信頼に基づいていること(じこしん)

2. 他者や社会への配慮があること(利他心)

自己信頼とは、自分を大切にし、自分の行動に責任を持ち、自分の力を信じて動ける状態です。

利他心とは、目の前の人の幸せや、社会のよりよい状態を願いながら動く心のあり方です。

健全な動機とは、「自分のため」だけでもなく、「他人のため」だけでもない、両者をバランスよく持ち合わせたものです。

たとえば、「自分が成長したいから、この会社に入る」だけでなく、「自分の成長を通じて、チームにも貢献したい」と考えられる状態。これこそが、健全な動機です。

日本人の「一所懸命」には、文化的な価値がある

今や日本でも転職は当たり前になりました。企業も終身雇用を前提としなくなり、個人のキャリアは流動的になっています。

それでもなお、日本では「一所懸命」に努力を続ける人が多いのも事実です。

たとえ待遇や環境が整っていなくても、「誰かのためにがんばりたい」「チームを支えたい」と、強い使命感を持って働く人が多く存在する

これは、日本文化の美しさであり、誇るべき価値観だと私は思います。

もちろん、それが自己犠牲になりすぎるのは健全ではありません。

けれど、「自分の努力が誰かの役に立っている」と感じながら懸命に働ける人は、キャリアの中で確実に信頼を積み上げ、自分自身の生きがいにもつながっていくのです。

働く動機は「問い直すもの」であり、「育てるもの」

動機は、最初から明確である必要はありません。

むしろ、多くの人は働きながら、さまざまな経験や出会いを通じて、徐々に動機を見出し、磨き、深めていきます。

だからこそ、大切なのは、問い続けること。

• 「自分はなぜ、この仕事を選んだのか?」

• 「今の仕事を、どんな意味づけで続けているのか?」

• 「これから、どんな想いで働いていきたいのか?」

こうした問いを定期的に自分に投げかけることで、自分の働く動機を育てていくことができるのです。

働く動機が明確になると、意思決定がブレなくなります。

困難が訪れても、自分の選択に自信が持てます。

そして何より、自分の人生に対して、「意味」を感じることができるようになります。

まとめ:自分の内なる「なぜ働くのか」に正直であろう

どんなに時代が変わっても、「人が働く理由」は、その人の人生そのものに直結します。

働く動機が強く、そして健全であるとき、人はしなやかに成長し、周囲にも良い影響を与える存在になっていきます。

他人と比べず、過去の自分とも競わず、ただ「今の自分は、なぜ働いているのか?」という問いに、正直に、誠実に向き合ってみてください。

動機に正解はありません。でも、動機を言葉にできる人は、自分の人生を自分で選び取る力を持っている人です。

あなたの働く動機が、あなた自身を支え、誰かの力になり、社会を少しずつ良くしていくことを願っています。

動機の深さが、これからのキャリアの深さにつながっていくはずです。どうか自信を持って、自分らしい一歩を踏み出してください。

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