善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

【影響力を広げよ】組織と自己信頼の相関:他者との関係性の中で「自分を活かす場」を創る方法

こんにちは、坂本英雄です。これまでの連載で、私たちは自己信頼が「強み」から生まれ、「目標の解像度」によって強化され、「行動の習慣化」によって定着する道筋を歩んできました。自己信頼は個人的な成功の基盤ですが、その真価は「他者との関係性」、すなわち組織の中で影響力を発揮するときに発揮されます。ドラッカーは、組織において「成果は顧客の外にある」と説き、個人が貢献を通じて組織に影響を与えることの重要性を説きました。今日は、この自己信頼が他者に与える相関関係に焦点を当て、心理的安全性とレジリエンスの観点から、職場の中で「自分を活かす場」を創り出し、影響力を広げる具体的な方法を解説してまいります。

自己信頼が他者や組織にもたらす「信頼の連鎖」

自己信頼が高い人は、外部環境や他者の言動に過度に振り回されることがないため、安定した態度で他者と接することができます。この安定性が、他者からの安心感信頼を生み出します。自己信頼は、孤立した個人の能力ではなく、組織全体を活性化させる「信頼の連鎖」を生み出すための起点となるのです。

自己信頼が築く「健全な相互信頼」の基盤

自己信頼を持つ人は、自分の価値観と行動が一貫しているため、他者から見ても予測可能で安心感があります。これが、健全な相互信頼の土台です。自分を信じているからこそ、他者の失敗や弱点も受け入れやすく、過度な批判や干渉を避けることができます。組織開発の視点から見ると、自己信頼は、メンバー間の摩擦を減らし、協働を促進するための「人間関係の潤滑油」として機能します。

心理的安全性を担保する「リーダーシップの安定感」

読者層に含まれる経営者や幹部の方々にとって、自己信頼はリーダーシップの核です。リーダーの自己信頼が高いと、チームは「この人が決めたことなら大丈夫だ」という精神的な安定感を得られます。この安定感が、チームに心理的安全性をもたらし、メンバーが恐れずに意見を述べ、挑戦できる環境を創ります。リーダーの自己信頼は、組織に「失敗しても学ぶ機会がある」という文化を醸成するのです。

ドラッカーの問い「組織は何に貢献できるか?」への影響

個人の高い自己信頼は、組織全体が「社会に対して何に貢献できるか」というドラッカーの問いに対する答えを探求する姿勢を強化します。自分を信じ、自律的に行動する社員が多い組織は、外部環境の変化に対して迅速かつ建設的な提案を生み出す力が高まります。彼らは、組織のビジョンを自らの貢献の場として捉えるため、組織の目標達成へのコミットメントも強くなります。

「影響力」を広げる「一貫性のある貢献」

職場における影響力とは、役職や権限ではなく、行動の一貫性と貢献の実績によって決まります。自己信頼を持つ人は、自分の強みと価値観に基づいた行動を一貫して継続するため、「あの人に任せれば間違いない」という信頼資本が自然と蓄積されます。この一貫性のある貢献こそが、他者にポジティブな影響を与え、組織内での発言力と推進力を拡大する確かな道筋となります。

「承認欲求」を健全な「貢献の喜び」へ昇華

自己信頼が低いと、他者からの承認を過度に求め、その承認が得られないと不安になる「承認欲求」に囚われがちです。しかし、自己信頼が高い人は、既に内的な自己肯定を持っているため、承認欲求を「自分の貢献が他者に喜びをもたらした」という健全な満足感へと昇華できます。この「貢献の喜び」を起点とした行動は、他者からの尊敬を自然と集め、より大きな影響力を生み出します。

困難な関係性の中で自己信頼を「レジリエンス」として発揮する

職場には、必ずしもスムーズではない人間関係や、予期せぬ対立が生じます。自己信頼が試されるのは、まさにこのような困難な状況です。心理学でいう「レジリエンス(精神的回復力)」は、この自己信頼を「他者との関係性の中で発揮する力」とも言えます。自分を活かす場は、他者との摩擦を通じて、より強固に築かれます。

建設的な対立を恐れない「自己主張(アサーション)」

自己信頼を持つ人は、他者との意見の対立を「個人の否定」ではなく「建設的な意見交換の機会」として捉えられます。彼らは、相手を尊重しつつ、自分の意見や権利を適切に主張する「アサーション」のスキルが高いです。これは、自分の価値観と強みを信じているからこそ可能な行動であり、組織内における健全な議論を促進し、結果としてより良い意思決定へと繋がります。

逆境を乗り越える「レジリエンス」の心理学

自己信頼と深く結びつくレジリエンスは、困難な状況を「乗り越える力」であると同時に、「逆境から学び、より強く成長する力」でもあります。困難な人間関係やプロジェクトの失敗に直面したとき、「自分を信じ、この経験から必ず何かを得る」という確信が、感情的な混乱から抜け出し、合理的な対応へと向かうためのエネルギーになります。このレジリエンスの発揮が、他者に対して模範となり、あなたの影響力を強めます。

ドラッカーの教え「相互理解のための質問力」

困難な人間関係を克服するためには、「相手がどのように考え、どのように貢献したいと考えているか」を理解することが不可欠です。ドラッカーは、成果を上げるためには相互理解が必要であるとし、そのための質問の重要性を強調しました。自己信頼を持つ人は、自分の意見を押し付けず、まず相手の視点を理解するためのオープンな質問ができます。この傾聴と質問の姿勢が、対立を協力へと変える道筋となります。

承認欲求ではなく「相互承認」の文化を醸成

組織内で影響力を広げるには、自分自身が他者に対する承認を積極的に行うことが重要です。特に、小さな成功や挑戦の過程を具体的に承認することで、メンバーの自己信頼を育む手助けができます。これは、「誰でも貢献できる」という組織文化を醸成し、結果的に「自分を活かす場」が組織全体に広がる効果を生みます。承認の積極的な実行こそが、自己信頼に基づいたリーダーシップの実践です。

「伴走者」としての姿勢がもたらす「対人関係の改善」

私の仕事のスタイルは、クライアントの自律性を引き出す伴走です。職場においても、同僚や部下に対して「あなたの可能性を信じている」というメッセージを伴走者として送り続けることで、対人関係の質が劇的に改善します。この姿勢は、自己信頼が基盤になければ成り立ちません。自分を信じているからこそ、他者の力を信じて委ねることができるのです。

組織で「自分を活かす場」を創るための実践的戦略

自己信頼を基盤に、組織内で最大限の影響力を発揮し、「自分を活かす場」を創るためには、意識的な戦略が必要です。ドラッカーの「貢献のマネジメント」の視点と、心理学の「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の概念を融合させ、主体的に環境をデザインする道筋を解説します。

自己の「貢献の範囲」を意図的に「越境」する

自己信頼を持つ人は、与えられた職務の範囲に留まらず、自分の強みが活かせる「貢献の機会」を組織内で常に探します。これは、部署やチームの境界を越えて(越境)、自らプロジェクトや課題解決の提案をすることです。この意図的な越境は、あなたの影響範囲を広げ、組織内で「この課題には彼(彼女)が必要だ」という認識を確立し、「自分を活かす場」を自ら創出します。

「ソーシャル・キャピタル」:信頼という資産の蓄積

心理学や社会学でいう「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」とは、人間関係の中で築かれる信頼、規範、ネットワークといった無形の資産のことです。自己信頼に基づく一貫した貢献と誠実な態度は、この信頼という資産を組織内に蓄積させます。ソーシャル・キャピタルが高いほど、あなたは組織内で必要な情報、サポート、協力を得やすくなり、結果として影響力が飛躍的に高まります。

「自分の強みが活きるチーム」の戦略的選択

ドラッカーは、個人が成果を上げるためには「自分の仕事の仕方」を知るだけでなく、「自分の強みが活かされる組織」を選ぶことが重要だと説きました。組織内で自分を活かす場がないと感じた場合、それは単に不満を持つのではなく、自分の強みが最も必要とされている別の部署やプロジェクトを戦略的に探し、移動の交渉を行う勇気を持つことです。自己信頼は、この「環境を選ぶ力」を支えます。

「メンタリングと育成」を通じた「影響力の循環」

自己信頼を組織で最も有効に活用する方法の一つは、メンタリングや後進の育成です。自分の知識、経験、そして何よりも自己信頼を持つ姿勢を他者に伝えることで、あなたは組織の未来に対して永続的な影響力を行使できます。この「影響力の循環」は、自己の貢献意識を最高度に満たし、「自分を活かす場」が組織全体へと広がる最も確かな道筋となります。

「来年への布石」:「影響力の目標」の設定

今年最後の週を締めくくるにあたり、来年の目標に「貢献の目標」だけでなく「影響力の目標」を設定しましょう。例えば、「来年、自分の強みを使って、〇〇というテーマに関して、少なくとも5人の同僚の行動変容を促す」といった目標です。自己信頼を他者への影響力という形で発揮することを意識することで、あなたのプロフェッショナルとしての価値は飛躍的に高まります。

まとめ

本日は、自己信頼を組織という舞台で最大限に発揮し、影響力を広げるための道筋を解説しました。

自己信頼は、「信頼の連鎖」を生み、リーダーシップに心理的な安定感をもたらします。困難な人間関係や逆境においては、レジリエンスアサーションとして発揮され、建設的な協力関係を築きます。

来年、あなたの自己信頼を他者への貢献と影響力という形で組織に還元し、「自分を活かす場」を自ら創り出してください。いよいよ明日は連載最終回、自己革新を継続する習慣についてお話しします。

よりよい職場づくりへ、そして善くはたらく未来へ。自分の影響力を信じ、職業人として誇りを持って生きる勇気と自信につながる挑戦を、心から応援しています。

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