【組織文化】対立を乗り越え成長へ!「善くはたらく」組織のレジリエンス強化術
こんにちは、坂本です。
これまでの連載で、「働くを耕す」というユニークなコンセプト、そして「人間力」が組織に「ブレない強さ」と「善くはたらく」文化をもたらすことの重要性を深く掘り下げてきました。リーダーとメンバーがそれぞれの役割を理解し、有機的に連携し合う「共創」が、その文化を育む鍵となることもお伝えしました。
しかし、どんなに素晴らしいビジョンや協力体制があっても、組織というものは常に平穏無事なわけではありません。意見の対立、価値観の衝突、予期せぬ困難、そして失敗。これらは組織の成長過程において、避けられない「痛み」とも言える側面です。
一見ネガティブに思えるこれらの要素こそが、実は組織文化を真に深く、そして「ブレない強さ」へと導くための重要な「試練」となり得ます。大切なのは、これらの対立や困難をどう乗り越え、どう学びへと変えていくか、そのアプローチです。
連載5日目となる今日は、組織が対立や困難に直面した際に、それをポジティブな力に変え、さらに「善くはたらく」文化へと昇華させるための「レジリエンス(回復力、しなやかな強さ)」の強化術について深く掘り下げていきましょう。
1. 対立は「悪」ではない~組織を強くする成長の源泉~
多くの人は、組織内の対立や衝突を避けたいと考えがちです。しかし、健全な対立は、実は組織の成長とイノベーションに不可欠な要素となり得ます。
対立がもたらすポジティブな側面
「対立」と聞くと、ネガティブなイメージを抱くかもしれません。しかし、健全な対立は、組織に以下のようなポジティブな影響をもたらします。
- 多様な視点の獲得: 異なる意見や考えがぶつかり合うことで、それまで見えていなかった問題点や、より良い解決策が浮き彫りになります。一方向の思考に陥ることを防ぎ、視野を広げる機会となります。
- イノベーションの創出: 既存の枠にとらわれない新しいアイデアは、既存の考え方との摩擦から生まれることが多いものです。建設的な対立は、創造性を刺激し、イノベーションの土台となります。
- 組織の学習と成長: 対立が生じた際に、その原因を深く掘り下げ、解決策を共に探すプロセスは、組織全体の学習能力を高めます。失敗から学び、次に活かすレジリエンスが育まれます。
- エンゲージメントの向上: 自分の意見が尊重され、議論に参加できる環境は、メンバーのエンゲージメントを高めます。「自分も組織を創る一員だ」という主体性が育まれます。
経営学者のゲーリー・ラフの著書『対立を力に変えるチーム』(https://amzn.to/3SjBGd9)でも、適切に管理された対立が、チームの創造性、意思決定の質、そして結束力を高めることが詳細に述べられています。重要なのは、対立を「個人攻撃」ではなく、「問題解決」のためのプロセスとして捉える文化をいかに築くか、です。
「避ける」から「乗り越える」文化へ
対立を避ける文化は、表面上は平穏に見えても、未解決の問題や不満が水面下に蓄積され、やがて組織の生産性や健康を蝕みます。
「沈黙は金」とされてきた日本社会の傾向もありますが、現代においては、「沈黙はリスク」とも言えます。メンバーが安心して意見を言える「心理的安全性」が十分に確保された環境であれば、対立は建設的な議論へと昇華され、組織は「ブレない強さ」を獲得するための筋肉を鍛えることができます。
重要なのは、対立そのものを「悪いこと」と決めつけず、それを乗り越えるためのプロセスに価値を見出す文化を育むことです。
2. 対立をポジティブな力に変える実践術~「善くはたらく」対話と学びの文化~
では、対立を恐れず、むしろそれを組織成長の糧とするために、リーダーとメンバーは具体的にどのように取り組めば良いのでしょうか。
対立時の「善くはたらく」対話フレームワーク
意見の対立や衝突が起きた際に、感情的にならず、建設的に解決へと導くための対話のフレームワークを導入しましょう。
- 事実の確認と共有: まずは、何が問題なのか、どのような事実があるのかを、感情を交えずに客観的に共有します。「私は〇〇という事実を認識している」というように、主語を「私」にして伝えると、相手を非難するトーンになりにくいです。
- 感情・影響の表明(Iメッセージ): 次に、その事実に対して自分がどう感じているか、どのような影響を受けているかを「I(私)メッセージ」で伝えます。「私は、この状況で〇〇だと感じています。なぜなら…」のように、自分の感情や懸念を率直に表現します。相手の感情にも耳を傾け、共感しようと努めます。
- ニーズと期待の共有: その感情の背景にある、自分の本当のニーズや、相手に何を期待しているのかを明確に伝えます。「私は、〇〇を達成するために、△△の協力が必要だと考えています」
- 解決策の共同探索: 個人を責めるのではなく、共通の課題として「どうすればこの状況を改善できるか」「皆で何ができるか」を建設的に話し合い、複数の解決策をブレインストーミングします。
- 行動計画とコミットメント: 合意に至った解決策について、具体的な行動計画(誰が、何を、いつまでに)を立て、全員がその実行にコミットします。
このフレームワークを習慣化することで、対立は感情的な衝突に終わらず、問題解決と学習の機会へと変わります。
失敗を「学び」として共有する文化の醸成
対立と同様に、失敗も組織の成長には不可欠な要素です。「善くはたらく」組織は、失敗を隠蔽せず、積極的に共有し、次への糧とします。
- 「失敗談共有会」の実施: 定期的に、チーム内で各自が経験した失敗やうまくいかなかったことを共有する場を設けます。リーダーが率先して自身の失敗談を語ることで、心理的安全性が高まり、メンバーも安心して失敗を共有できるようになります。
- 「ポストモーテム」(事後検証)の習慣化: プロジェクト終了後や失敗が発生した後には、成功点だけでなく、課題や失敗の原因、そしてそこから何を学んだかを客観的に分析する「ポストモーテム」を必ず実施します。
- 非難文化の排除: 失敗に対して個人を責めるのではなく、「仕組みやプロセスに問題はなかったか?」「次からはどう改善できるか?」という、未来志向の議論に徹します。

3. レジリエンスと学習する組織のエビデンス
組織が対立を乗り越え、失敗から学ぶことで、その「ブレない強さ」を高めること、つまりレジリエンスを強化することは、多くの研究でその重要性が示されています。
例えば、心理学者エミー・ワーナーによる「ハワイのコホート研究」では、困難な環境に置かれた子どもたちが、特定の要因によってレジリエンスを発揮し、健やかに成長することが示されました。これは個人レベルの研究ですが、この概念は組織にも応用され、困難に直面した際に回復し、適応し、さらに強くなる組織の能力を指します。健全な対立を乗り越えるプロセス自体が、組織のレジリエンスを鍛える訓練となります。
また、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授は、「心理的安全性」がチームの学習能力に与える影響について広範な研究を行っています。彼女の研究は、メンバーが安心して意見を言える環境こそが、失敗を正直に報告し、そこから学習し、最終的にチームのパフォーマンスを向上させることを明確に示しています。対立を建設的に扱える文化も、この心理的安全性が基盤となります。
さらに、ピーター・センゲの提唱する「学習する組織」の概念は、組織が継続的に学習し、変化に適応する能力が、長期的な成功に不可欠であると説いています。その実現のためには、「システム思考」「自己マスタリー」「メンタルモデルの共有」「共有ビジョンの構築」「チーム学習」の5つの規律が必要とされますが、特に「チーム学習」の規律では、メンバー間の対話や議論を通じて、集合的な知を創出することの重要性が強調されています。これは、対立を乗り越え、共に学ぶ文化を育むことと深く結びついています。
これらのエビデンスは、対立や失敗を避けずに、それらを「善くはたらく」ための糧とすることで、組織がより強靭で、持続的に成長できることを裏付けています。
4. まとめ:対立は、より「善くはたらく」組織への道標
今日の記事では、対立が組織にとっての「悪」ではなく、むしろ成長の源泉となり得ること、そしてそれをポジティブな力に変えるための具体的な対話フレームワークや失敗から学ぶ文化の醸成についてお話ししました。
「働くを耕す」過程で、必ずしもすべての道が平坦とは限りません。時には意見がぶつかり合い、予期せぬ困難に見舞われることもあるでしょう。しかし、それらの対立や失敗こそが、組織の「ブレない強さ」を鍛え、「善くはたらく」という真の価値を深めるための重要な機会となります。
リーダーもメンバーも、対立を恐れず、むしろ成長の機会として捉え、建設的な対話と学びの文化を共に育むことで、組織はよりレジリエントに、そしてさらに「善くはたらく」集団へと進化していくはずです。
明日は、いよいよ連載の最終回です。これまでの学びを総括し、「強くて善い組織」を未来へ繋ぐための「持続的な変革」と「人間力」の重要性についてお話しします。どうぞお楽しみに!








