善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

なぜあの人とすれ違う?人間関係の悩みを解き明かす「TA心理学」とは

こんにちは坂本です。

新しい連載を始めます。今回は、皆さんが日々の仕事やプライベートで感じる人間関係のモヤモヤや悩みを、TA(交流分析)心理学」というユニークな視点から解き明かしていきます。

突然ですが、あなたはこんな風に感じたことはありませんか?

  • 「あの人は、なぜあんなに高圧的なんだろう?」
  • 「どうして部下は、私の言った通りに動いてくれないんだろう?」
  • 「いつも同じようなタイプの人と衝突してしまう…」
  • 「上司に相談したいけど、何を言っても理解してもらえない気がする」

人間関係の悩みは、仕事の生産性を下げ、心のストレスにも直結します。多くの人がその解決策を「話し方」や「聞き方」といったテクニックに求めがちですが、本当に大切なのは、その根本にある「私の心」と「相手の心」の動きを理解することなんです。

今回の連載は、そんな人間関係の悩みを根本から解決するための「地図」となるでしょう。1日目では、TA心理学の入門として、「自分自身の心の傾向を知る」ことの重要性をお伝えします。ここが、良好な関係性を築くための最初の、そして最も大切な一歩となるはずです。

TA心理学って何?~人間関係の「なぜ?」を解き明かす心の地図~

まず、TA心理学(Transactional Analysis:交流分析)とは何か、簡単に説明しましょう。

TA心理学は、アメリカの精神科医エリック・バーンによって提唱された心理学理論です。人間関係におけるコミュニケーション(交流)を分析することで、私たちの心の状態や行動パターン、そしてそれが他者との関係性にどう影響するかを理解するための強力なツールとして活用されています。

TA心理学の面白いところは、私たちの心が、まるで異なる人格を持ついくつかの自我状態によって構成されていると考える点です。

例えば、あなたはこんな経験はありませんか?

  • 部下の失敗に、つい親のように説教してしまう自分
  • 初めてのプレゼンで、子どものように不安でいっぱいになる自分
  • 冷静に状況を分析し、効率的な解決策を考える自分

これらは、すべてあなたの中にある「異なる心の状態」が表れているのです。TA心理学では、これらの自我状態を大きく3つに分類します。

1. 親(Parent:P)の自我状態

  • 特徴: 過去に親や権威者から学んだ価値観、ルール、道徳観などが反映された心の状態です。
    • CP(批判的な親): 批判的、指示的、権威的。「~すべきだ」「間違っている」
    • NP(養育的な親): 保護的、擁護的、世話好き。「大丈夫だよ」「助けてあげよう」
  • 行動例:
    • 「こんなミスをするなんて、プロ失格だ!」と厳しく叱る(CP)
    • 「無理しないで、いつでも頼ってね」と優しく声をかける(NP)

2. 大人(Adult:A)の自我状態

  • 特徴: 今、ここで起きていることを客観的に判断し、論理的に情報処理を行う心の状態です。感情に流されず、事実に基づいて冷静に対応します。
  • 行動例:
    • 「現状のデータに基づくと、この戦略が最も効率的です」と説明する
    • 「問題の原因を特定し、解決策を検討しましょう」と提案する

3. 子ども(Child:C)の自我状態

  • 特徴: 幼い頃に経験した感情や行動パターンが反映された心の状態です。
    • FC(自由な子ども): 自然体、好奇心旺盛、感情豊か。「楽しい!」「わーい!」
    • AC(順応した子ども): 従順、遠慮がち、引きこもりがち。「すみません」「私なんて…」
    • RC(反抗的な子ども): 反発的、不満げ、わがまま。「やだ!」「なんで私が?」
  • 行動例:
    • 新しい企画に目を輝かせ、「面白そう!」と飛びつく(FC)
    • 上司の無理な要求にも、「はい、わかりました」と断りきれない(AC)
    • 不満そうな態度で、指示された仕事をなかなか始めない(RC)

私たちは普段の生活の中で、これらの自我状態を無意識のうちに切り替えながらコミュニケーションを取っています。そして、どの自我状態が強く表れるかによって、相手に与える印象や、人間関係のパターンが大きく変わってくるのです。

「私の心の傾向」を知ることが、良好な関係性構築の第一歩である理由

なぜ、自分の自我状態の傾向を知ることが重要なのでしょうか?

それは、自分の心の傾向を理解することで、なぜ自分が特定の状況で特定の反応をしてしまうのか、なぜ特定の相手と衝突しやすいのか、その根本原因が見えてくるからです。

例えば、あなたがCP(批判的な親)の自我状態が出やすい傾向にあるとしましょう。無意識のうちに部下に対して「~すべきだ」「甘えるな」といった批判的な言葉を投げかけがちかもしれません。その結果、部下はAC(順応した子ども)の自我状態になり、萎縮してしまったり、あるいはRC(反抗的な子ども)の自我状態になり、反発したりする可能性があります。

逆に、あなたがAC(順応した子ども)の自我状態が出やすいと、上司の無理な指示にも「はい、わかりました」と引き受けてしまい、結果的にキャパオーバーになってストレスを抱えたり、プロジェクトが遅延したりするかもしれません。

自分の主要な自我状態や、ストレスがかかった時にどの自我状態になりやすいかを知ることは、あなたのコミュニケーションパターンを客観的に認識することに繋がります。そして、それが分かれば、意識的に別の自我状態を選択し、より建設的なコミュニケーションへと変えていくことが可能になるのです。

つまり、人間関係の「なぜ?」を解き明かす最初の鍵は、「私自身の心の傾向」にあるのです。

ワーク:「あなたの心の傾向」チェック!

それでは、簡単なワークを通して、あなたの心の傾向をチェックしてみましょう。

以下の質問に対し、「普段の自分に最も近い」と思う項目を選んでみてください。これは診断テストではなく、あくまで自身の傾向を把握するためのものです。

【ワークの進め方】

  1. 以下の質問を読み、ABCのうち、普段のあなたに最も当てはまるものを選んでみてください。
  2. どれか一つに決められない場合は、より強く出る傾向のものを選びましょう。

質問1:職場で部下や後輩がミスをした時、あなたはどう対応することが多いですか?

A. 「なぜこんなミスをしたんだ!次は許さないぞ」と厳しく注意する

B. 「どうすればこのミスが防げたか、原因を一緒に考えよう」と冷静に話し合う

C. 「大丈夫?次からは気をつけてね」と優しくフォローする、または「またやっちゃった」と落ち込む

質問2:新しい仕事や課題が与えられた時、あなたの最初の反応は?

A. 「これで本当に大丈夫なのか?もっと別のやり方があるはずだ」と疑問を呈する

B. 「まずは現状の情報を整理し、目標とすべき点を明確にしよう」と計画を立てる

C. 「面白そう!」「やりたくない…」「誰かに助けてもらおう」など、感情が先行する

質問3:意見が対立する会議で、あなたはどのような態度を取ることが多いですか?

A. 自分の意見が正しいと主張し、相手の誤りを指摘する

B. 双方の意見のメリット・デメリットを冷静に比較検討し、客観的な解決策を探る

C. 周囲の意見に合わせて自分の意見を言わない、または感情的に反論してしまう

質問4:ストレスを感じた時、あなたはどんな心の状態になりやすいですか?

A. 「私がなんとかしなければ」「もっと完璧にやらないと」と自分を追い詰める

B. ストレスの原因を分析し、具体的な対処法を考える

C. 誰かに甘えたい、投げ出してしまいたい、またはイライラして周りに当たってしまう

【結果の読み解き(傾向として)】

  • Aが多かった人: 親(P)の自我状態が優位な傾向にあるかもしれません。特にCP(批判的な親)の側面が強く出やすい可能性があります。責任感が強く、規律を重んじる一方、時に厳しくなりすぎる傾向も。
  • Bが多かった人: 大人(A)の自我状態が優位な傾向にあるかもしれません。冷静で論理的、問題解決能力が高い一方、感情表現が苦手な場合も。
  • Cが多かった人: 子ども(C)の自我状態が優位な傾向にあるかもしれません。特にFC(自由な子ども)なら感情豊かで創造的、AC(順応した子ども)なら協調性があるが自己主張が苦手、RC(反抗的な子ども)なら不満を抱えやすいといった特性があるでしょう。

いかがでしたか? これがあなたの「心の傾向」の入り口です。

どの自我状態が「良い」「悪い」ということではありません。大切なのは、自分の傾向を客観的に知り、状況に応じて適切な自我状態を使い分けられるようになることです。

まとめ:人間関係の悩みの根っこは「私」の心の中にある

今回は、人間関係の悩みを解き明かす鍵となる「TA心理学」の基本的な考え方、特に「自我状態」について解説しました。そして、あなた自身の「心の傾向」を把握するワークに取り組んでいただきました。

私たちは皆、無意識のうちに様々な自我状態を行き来しながらコミュニケーションを取っています。この「心の傾向」を知ることは、

  • なぜ自分が特定の状況で感情的になるのか?
  • なぜあの人とは話が噛み合わないのか?
  • なぜいつも同じような人間関係のパターンに陥るのか?

といった疑問に対する答えを見つけるための第一歩となります。

人間関係の悩みの多くは、相手を変えようとすることから始まりますが、実はその根っこは「私」の心の中にあることが多いのです。自分の心の傾向を理解し、意識的にコミュニケーションのパターンを変えていくことで、関係性は劇的に改善され始めます。

もっと深く学びたい方へ:TA心理学ベースの講座で「関係性を変える力」を磨きませんか?

人間関係の悩みは尽きないものですが、その多くの原因は、「自分と相手のコミュニケーションパターン」、そして「無意識の心の動き」にあります。

もし、あなたが

  • なぜか部下との信頼関係が築けない
  • いつも同じような人間関係の悩みにぶつかる
  • 相手の真意が読めず、誤解が生じやすい
  • こじれた関係をどう修復すればいいか分からない
  • 多様なメンバーを活かすチームを作りたい

と感じているのであれば、その解決のヒントは「TA(交流分析)心理学」にあります。

TA心理学は、自分自身と他者の行動パターン、心の動きを理解するための非常に実践的なツールです。「信頼」「共感」「貢献」といった概念を、より深く、体系的に学ぶことで、あなたの人間関係構築力は飛躍的に向上するでしょう。

青森HRラボ(私が勤めている会社が運営)で、このTA心理学をベースにした講座を定期的に開催しています。

89日、23日、913に開催されるこの講座では、

  • 自分と他者のコミュニケーションの「クセ」を知る
  • 相手のタイプに合わせた効果的な関わり方を学ぶ
  • 建設的な人間関係を築くための具体的な心理学的なアプローチ

などを、ワークを交えながら楽しく学ぶことができます。

この連載で「なるほど!」と感じた方は、ぜひ一歩踏み込んで、TA心理学の知見に触れてみませんか? 講座の詳細はこちらからご確認ください。

➡️【講座詳細はこちら】 25夏 実践TA心理学講座 

皆さんの「働くを耕す」ツールとして、「善くはたらく」ための強力な武器として、この講座が役立つことを願っています。

次回は、「相手の心の傾向」を見抜き、より効果的なコミュニケーションを取る方法について深く掘り下げていきます。

どうぞお楽しみに!

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