善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

「話が通じない」を解消!相手の心を理解し、響く言葉を選ぶTAのヒント

こんにちは、坂本です。

TA心理学連載のDay2、いよいよ本題に迫ります。昨日の記事では、TA心理学が私たちの心の状態を「親(P)」「大人(A)」「子ども(C)」の3つの自我状態に分類し、まず「自分の心の傾向」を知ることの重要性をお伝えしました。自分の「心の癖」を理解することで、コミュニケーションの出発点が明確になったのではないでしょうか。

さて、今日お話しするのは、その次のステップです。

職場やプライベートで、こんな経験はありませんか?

  • 「部下や後輩に丁寧に説明したはずなのに、全然動いてくれない…」
  • 「上司に相談しても、いつも的を射ないアドバイスが返ってくる…」
  • 「顧客の話を聞いているはずなのに、なぜか信頼関係が築けない…」

私たちは、誰かとコミュニケーションを取るとき、無意識のうちに相手も自分と同じように物事を考え、感じていると思い込みがちです。しかし、実際には、相手もまた、異なる「自我状態」から物事を捉え、反応しているのです。この「心の傾向」の違いが、「話が通じない」「なぜか噛み合わない」という感覚を生み出す大きな原因となります。

今日の記事では、相手の「心の傾向」、つまりどの自我状態からコミュニケーションを取っているのかを会話や行動から見抜くヒントをお伝えします。そして、それを見抜くことで、どうすれば相手に「響く」言葉を選び、効果的なコミュニケーションが取れるようになるのかを具体的に解説していきます。

相手の「心の傾向」を会話と行動から見抜くヒント

相手の自我状態を見抜くには、その人の「言葉遣い」「声のトーン」「表情」「態度」に注目するのが効果的です。特に、緊急時やストレスがかかっている時に、どの自我状態が強く表れるかを知っておくと、対応がしやすくなります。

ここでは、それぞれの自我状態から発せられる可能性のあるサインを見ていきましょう。

親(Parent:P)の自我状態が出ている時のサイン

  • 言葉遣い: 「~すべきだ」「当然だ」「絶対~しろ」「けしからん」「分かっているのか?」など、命令的、評価的、規範的な言葉が多い。
    • NP(養育的な親)の場合は、「大丈夫だよ」「よく頑張ったね」「私が何とかしよう」など、保護的、世話を焼くような言葉も。
  • 声のトーン: 強い口調、断定的、説教じみている(CP)。または、優しく、包み込むような口調(NP)。
  • 表情・態度: 腕組み、指をさす、眉間にシワ、上から見下ろすような視線(CP)。または、頭をなでる、寄り添う、心配そうな表情(NP)。
    • 相手がこの自我状態の時:
      • CP: 相手はあなたを未熟と見ているかもしれません。反発すると火に油を注ぐ可能性も。
      • NP: あなたを助けたいと思っているサイン。素直に頼ることで関係性が深まることも。

大人(Adult:A)の自我状態が出ている時のサイン

  • 言葉遣い: 「いつ、どこで、何を、どのように?」「事実として」「データによれば」「つまり」「目的は何か?」など、客観的、論理的、質問形式の言葉が多い。
  • 声のトーン: 一定で落ち着いている。感情をあまり含まず、淡々としている。
  • 表情・態度: まばたきが少ない、冷静、真剣な眼差し、考え込んでいるような姿勢。
  • 相手がこの自我状態の時:
    • 事実と論理に基づいて話すことを求めているサイン。感情論や推測ではなく、データや具体例を提示すると響きやすいです。
    • 相手がこの自我状態の時:
      • 事実と論理に基づいて話すことを求めているサイン。感情論や推測ではなく、データや具体例を提示すると響きやすいです。

子ども(Child:C)の自我状態が出ている時のサイン

  • 言葉遣い:
    • FC(自由な子ども): 「すごい!」「楽しい!」「やったー!」「嫌だ!」「わーい!」など、感情が率直に出る言葉。
      • AC(順応した子ども): 「すみません」「私なんて」「どうすればいいですか?」「仕方ない」など、従順、遠慮がち、自信なさげな言葉。
      • RC(反抗的な子ども): 「なんで私が!」「知るか!」「もう知らない!」など、反発的、不満、わがままな言葉。
  • 声のトーン: 高い、興奮している、早口(FC)。または、小さい、弱々しい(AC)。または、不機嫌、怒りを含んだ声(RC)。
    • 表情・態度:
      • FC: 笑顔、明るい、好奇心旺盛、動きが大きい。
      • AC: 下を向く、肩をすぼめる、おどおどしている。
      • RC: 腕組み、ふくれっ面、無視、反発的な態度。
    • 相手がこの自我状態の時:
      • FC: 楽しさや共感を共有すると良い関係が築きやすいです。
      • AC: 不安や責任感を軽減するサポートが有効です。
      • RC: 感情的な反発があるため、まずは相手の感情を受け止める姿勢が重要です。

これらのサインはあくまでヒントであり、人は常に一つの自我状態にいるわけではありません。しかし、相手が今、どの自我状態からメッセージを発しているのかを意識するだけでも、あなたのコミュニケーションは大きく変わるはずです。

相手の自我状態に合わせた「伝わる」コミュニケーションの取り方

相手の自我状態の傾向が分かったら、次はそれに応じたコミュニケーションを試してみましょう。これをTA心理学では「P-A-Cマッチング」などと呼び、相手の自我状態と自分の自我状態を意識的に合わせることで、よりスムーズな交流が可能になります。

1. 相手が「親(P)」の自我状態の場合

    • CP(批判的な親)相手:
      • 避けたいこと: 感情的に反論したり、言い訳をしたりすること。
      • 試したいこと: 一度相手の主張を「なるほど」「おっしゃる通りです」と受け止める。そして、事実や客観的なデータに基づいて「大人の自我状態(A)」で冷静に話を進める。「ご指摘の点は理解いたしました。その上で、具体的なデータとしては~」というように。
    • NP(養育的な親)相手:
      • 避けたいこと: 感謝を伝えない、過度に甘えすぎる、自立心を欠く行動。
      • 試したいこと: 相手の優しさや気遣いに感謝を伝える。「助かります」「ありがとうございます」といった言葉が響きます。必要であれば素直にサポートを求め、「大人(A)」の自我状態で具体的な状況を説明し、協力関係を築く。

2. 相手が「大人(A)」の自我状態の場合

  • 避けたいこと: 感情論に終始する、抽象的な話ばかりする、事実に基づかない発言をする。
  • 試したいこと: あなたも「大人(A)」の自我状態で対応すること。論理的、客観的な情報を提供し、データや具体例を交えて話しましょう。質問には率直に答え、効率的かつ合理的な解決策を一緒に探る姿勢が重要です。「提案の背景にあるデータは?」「目的を達成するための最善策は?」といった問いかけをすると、深く議論が進みます。

3. 相手が「子ども(C)」の自我状態の場合

    • FC(自由な子ども)
      • 避けたいこと: 自由な発想を頭ごなしに否定する、感情を無視して論理だけで詰め寄る。
      • 試したいこと: 相手の感情や直感を肯定的に受け止める。「面白いね!」「そう感じたんだね」と共感を示し、その上で「大人(A)」の自我状態で現実的な側面を冷静に伝える。
      • AC(順応した子ども)相手:
        • 避けたいこと: 一方的に指示する、責任を押し付ける、過度に厳しく接する。
        • 試したいこと: 安心して本音を話せるように、「何か困っていることはない?」と優しく問いかける(NPの側面)。具体的な指示は明確に伝え、不安を和らげる言葉を添える。「もし分からなければいつでも聞いてね」など。
      • RC(反抗的な子ども)相手:
        • 避けたいこと: 感情的に言い返す、無視する、さらに上から押さえつけようとする。
        • 試したいこと: まず相手の不満や怒りの感情を「受け止める」(共感)。「そんな風に感じるんだね」「辛かったね」と寄り添い、感情のガス抜きを促す。その上で、冷静に「大人(A)」の自我状態で、なぜそうしなければならないか、あるいはどうすれば状況が良くなるかについて対話する。

これらの対応はあくまで一例ですが、相手の自我状態に合わせたアプローチを試すことで、「話が通じない」という壁を乗り越え、よりスムーズで生産的な人間関係を築くことができるようになります。

世代間ギャップも解消!TA心理学が人間関係にもたらす可能性

職場では、若手からベテランまで、幅広い世代の人が一緒に働いています。世代が異なれば、育ってきた環境や価値観、そしてコミュニケーションのスタイルも大きく異なります。これが「世代間ギャップ」として、多くの職場で人間関係の悩みの種となっています。

  • 若手社員: 「上司の指示が抽象的で分からない」「なぜか怒られる」「自分の意見を聞いてもらえない」
  • ベテラン社員: 「最近の若手は積極性がない」「指示待ちばかりで困る」「言われたことしかやらない」

といった不満は、実は互いの自我状態の傾向や、それに合わせたコミュニケーションができていないことから生じている場合が多々あります。

例えば、ベテラン上司が「CP(批判的な親)」の自我状態で「最近の若手は常識がない!」と厳しく接すると、若手社員は「AC(順応した子ども)」になって萎縮したり、「RC(反抗的な子ども)」になって反発したりするかもしれません。

ここでTA心理学の知識があれば、上司は自身の「親の自我状態」を認識し、意図的に「大人(A)」の自我状態から「この業務の目的は何か」「君はどうしたいか」と問いかけることで、若手社員の「大人(A)」を引き出し、建設的な対話を促すことができます。

TA心理学は、このように世代や立場を超えて、相手を深く理解し、互いの「大人(A)」の自我状態を引き出すことで、健全で生産的な人間関係を築くための強力なフレームワークを提供してくれるのです。

ワーク:「会話パターン分析」で響く言葉を見つけよう

それでは、今日のワークです。あなたの職場でよくある「会話のすれ違い」を分析し、より良いコミュニケーションを考えてみましょう。

【ワークの進め方】

  1. 最近、あなたが「話が通じなかったな」「なぜかうまくいかなかったな」と感じた会話の場面を具体的に一つ思い出してください。
    • 例:部下への指示、上司への報告、同僚との意見交換、顧客との交渉など
  2. その会話での、あなた自身の言動と、相手の言動を書き出してみましょう。
    • 「あなたが言ったこと・したこと」
    • 「相手が言ったこと・したこと」
  3. それぞれの言動が、どの自我状態(P, A, C / CP, NP, FC, AC, RC)から出ていた可能性が高いか、推測してみましょう。
    • 例:「私はCPで命令したつもりが、相手はRCで反発した」
    • 例:「私はAで論理的に説明したのに、相手はACで不安そうだった」
    • もしもう一度その会話をするなら、あなたはどの自我状態から、どんな言葉で話しますか?相手の自我状態に合わせた「伝わる」アプローチを考えてみましょう。

このワークを繰り返すことで、あなたの「相手の自我状態を見抜く力」と「適切なコミュニケーションを選ぶ力」が確実に向上していきます。

まとめ:相手を理解し、最高の関係性を築くためのTA心理学

今回は、TA心理学の概念を使い、相手の「心の傾向(自我状態)」を見抜き、それに応じた「伝わる」コミュニケーションを取る方法について解説しました。

  • 言葉遣いや態度から相手の自我状態を推測するヒント
  • P、A、Cそれぞれの自我状態への効果的なアプローチ
  • 世代間ギャップ解消へのTA心理学の応用

これらを学ぶことで、「話が通じない」というモヤモヤを解消し、よりスムーズで生産的な人間関係を築くための具体的なヒントが得られたのではないでしょうか。

コミュニケーションの達人とは、単に話が上手い人ではありません。相手の「心の傾向」を理解し、その時々に最適な自我状態で関わることで、信頼を築き、望ましい結果を生み出せる人のことです。

次回は、なぜか繰り返される人間関係のトラブル、その根本原因である「心理ゲーム」の正体に迫ります。どうぞお楽しみに!

もっと深く学びたい方へ:TA心理学ベースの講座で「関係性を変える力」を磨きませんか?

今回の記事で、相手の「心の傾向」を理解し、コミュニケーションを改善することの重要性をお伝えしました。しかし、知識として知るだけでなく、実際に職場の人間関係や日々のコミュニケーションに活かすには、さらに深い学びと実践が不可欠です。

もし、あなたが

  • 人間関係のすれ違いを根本から解消したい
  • 部下や上司、顧客との信頼関係を劇的に改善したい
  • 自分のコミュニケーションパターンを意識的に変えたい
  • 年齢や立場を超えて、どんな相手とも良好な関係を築きたい

と感じているのであれば、その解決のヒントは「TA(交流分析)心理学」にあります。

青森HRラボ(私が勤める会社が運営)では、このTA心理学をベースにした実践的な講座を定期的に開催しています。

89日、23日、913に開催されるこの講座では、

  • 自分と他者のコミュニケーションの「クセ」を深く理解し、意識的に改善する
  • 相手のタイプに合わせた効果的な関わり方、影響力の磨き方を学ぶ
  • 建設的な人間関係を築き、こじれた関係を修復するための具体的な心理学的アプローチ

などを、ワークを交えながら体系的に学ぶことができます。若手ビジネスパーソンはもちろん、チームを率いる40代・50代の方々にも非常に役立つ内容です。

この連載で「なるほど!」と感じた方は、ぜひ一歩踏み込んで、TA心理学の知見をあなたのものにしてみませんか? 講座の詳細はこちらからご確認ください。

➡️【講座詳細はこちら】 25夏 実践TA心理学講座  (私が勤める会社で開催します)

皆さんの「働く」を豊かにし、「善くはたらく」ための強力な武器として、この講座が役立つことを願っています。

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