善くはたらくための考察

単なるビジネススキルではなく、働くことの本質を深考することが、真の組織成長に繋がると考えます。
ここでは、長年の実務経験と、ドラッカー理論、心理学の知見を融合させた考察を定期的に発信しています。

「また同じ失敗…」を断ち切る!人間関係の「落とし穴」と心理ゲームの正体

こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。

TA心理学連載のDay3、いかがお過ごしでしょうか? Day1では「自分の心の傾向」、Day2では「相手の心の傾向」を見抜くヒントをお伝えしました。自分の「自我状態」を知り、相手の「自我状態」に合わせてコミュニケーションを変えることで、すでに小さな変化を感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。

さて、今日お話しするのは、もう少し複雑な人間関係の「落とし穴」です。 あなたは、こんな経験はありませんか?

  • 「いつも同じようなタイプの人と衝突してしまう」
  • 「せっかく関係性が良くなったと思ったのに、なぜかまたこじれてしまう」
  • 「職場や家族で、特定の話題になると必ず険悪なムードになる」
  • 「相手を助けようとしたのに、なぜか私が責められている…?」

まるで、意識しないうちに特定の「パターン」にはまり込んでしまい、同じような人間関係のトラブルを繰り返しているように感じることはないでしょうか。これはまさに、TA心理学が提唱する「心理ゲーム」にはまっている可能性が高いです。

今日の記事では、この人間関係のやっかいな「心理ゲーム」の正体を解き明かし、そのパターンから抜け出し、こじれた関係を健全な対話で修復するためのヒントをお伝えします。

「心理ゲーム」って何?~なぜ同じトラブルを繰り返すのか~

TA心理学における「心理ゲーム」とは、簡単に言うと、「お互いが無意識のうちに演じ合う、決まったパターンの人間関係のやり取り」のことです。

これは、表面上は普通の会話に見えても、実は裏に隠れた意図や感情があり、最終的には「両者が不快な感情(バッドエンド)で終わる」という共通の結末を迎えます。そして、この「バッドエンド」の感情これをTAでは「切符」と呼びます)を収集し、最終的には人生全体の「脚本」へとつながっていくと考えられています。

具体例で考えてみましょう。

心理ゲームの具体例:「可哀想な私」(Poor Me)

これは、よくある心理ゲームの一つです。

    • 登場人物:
      • 犠牲者(Victim)の役割: 「私って本当に不運で、いつも大変なんです…」と不満や弱音を訴える人。
      • 救済者(Rescuer)の役割: 「それは大変だね!私が何とかしてあげるよ!」と助けようとする人。
      • 迫害者(Persecutor)の役割: 「だから言ったじゃないか」「あんたが悪いんだ」と批判・非難する人。
    • ゲームの展開(典型例):
      • 犠牲者: 部下「この仕事、私の能力じゃ無理です…(困った顔で)」
      • 救済者: 上司「よし、わかった!私が手伝ってあげるから、任せなさい!(助けようと張り切る)」
      • 犠牲者: 部下「あ、ありがとうございます…でも、やっぱり私には向いてないかも…(結局、またうまくできず、上司が尻拭い)」
      • 救済者(迫害者へ転換): 上司「結局、何もできないじゃないか!これだからお前は…(イライラして部下を責める)」
      • 犠牲者(再び犠牲者へ): 部下「すみません、私って本当にダメですね…(落ち込む)」

このゲームでは、最初は「救済者」として助けていた上司が、最終的に「迫害者」に転じ、部下は「やっぱり私はダメだ」という「切符(バッドエンドの感情)」を手に入れて終わります。そして、また同じような状況で、同じ役割を演じてしまうのです。

この「心理ゲーム」の厄介なところは、無意識のうちに演じられているため、当事者たちは「なぜいつもこうなるんだろう?」と疑問に思いつつも、そのパターンから抜け出せないことです。そして、誰もが最終的には不快な感情を味わい、人間関係に亀裂が入ってしまいます。

心理ゲームから抜け出し、健全な関係に戻すためのヒント

では、このやっかいな心理ゲームから抜け出すにはどうすれば良いのでしょうか?

大切なのは、「ゲームが始まる前に気づくこと」、そして「ゲームの誘いに乗らないこと」です。

ステップ1:心理ゲームのパターンを認識する

まず、あなたが陥りやすい心理ゲームのパターンを認識することが第一歩です。

  • あなたは、どんな時に「犠牲者」「救済者」「迫害者」の役割を演じがちですか?
  • 特定の相手との間で、いつも同じような不快な結末を迎える会話パターンはありませんか?
  • 自分が「この会話、なんかおかしいな?」と感じた時、それはどんな感情が伴っていますか?

このパターンを認識するだけでも、無意識の鎖から抜け出す大きなヒントになります。

ステップ2:ゲームの「誘い」に乗らない

心理ゲームは、相手からの「誘い(フック)」に乗ってしまうことで始まります。このフックは、P(親)やC(子ども)の自我状態から発せられることが多く、例えば以下のようなものです。

  • 「私って本当にダメなんです…」(Cからの誘い→Rになって助けたくなる)
  • 「なんでそんなこともできないんだ!」(Pからの誘い→ACで萎縮するか、RCで反発したくなる)

これらの誘いに対し、あなたが普段反応してしまう「無意識の役割」ではない「大人(A)の自我状態」で対応することが、ゲームを止める鍵です。

ステップ3:健全な「対話」を意識する

ゲームから抜け出すためには、感情的なやり取りを避け、「大人(A)の自我状態」による健全な対話へと軌道修正することが不可欠です。

  1. 感情のコントロール: まずは自分の感情がゲームに引きずり込まれそうになったら一呼吸置く。「今、〇〇(PやC)な感情になっているな」と認識するだけでも違います。
  2. 事実に基づく情報交換: 感情論ではなく、客観的な事実やデータ、具体的な状況に焦点を当てて話します。「何が問題なのか?」「具体的にどうしたいのか?」を冷静に問いかけ、明確に伝えます。
  3. 建設的な質問: 相手が「大人(A)」の自我状態になるよう促す質問を投げかけます。
    • 例:「その件について、あなたはどうお考えですか?」
    • 例:「今回の状況で、私たちにできる最善策は何でしょうか?」
    • 例:「目標達成のために、どのような情報が必要ですか?」
  4. 「非ゲーム」の選択: 例えば、「可哀想な私」のゲームの誘いに対して、救済者にならずに「大人(A)」の立場から「具体的に何に困っていて、私に何をしてほしいですか?」と問いかけたり、「あなた自身でできることは何だと思いますか?」と問い返すことで、相手の自律的な思考を促します。

人間関係がこじれた時、私たちはついつい相手を「迫害者」として非難したり、自分を「犠牲者」として扱ったりしがちです。しかし、TA心理学の知見を使えば、そのパターンに気づき、「大人(A)」の自我状態で、冷静かつ建設的な対話へと導くことができるのです。

ワーク:「あなたの心理ゲームパターン」を特定しよう

それでは、今日のワークです。あなたの人間関係で、無意識のうちに繰り返している「心理ゲーム」のパターンを見つけてみましょう。

【ワークの進め方】

  1. 紙とペンを用意する。
  2. 最近、またはこれまでで「なぜかいつも同じようなトラブルになる」「不快な気持ちで終わる」人間関係の場面を一つ思い出してください。
    • 例:上司との意見交換、部下との指導、夫婦間の会話、親とのやり取りなど。
  3. その場面で、あなたが「どんな役割(犠牲者、救済者、迫害者)」を演じていることが多いですか?
    • 例:「部下が失敗すると、いつも私が『迫害者』になってしまう…」
    • 例:「上司が大変そうだと、私が『救済者』になってしまい、結局疲弊する…」
    • 例:「何かあると、つい私が『犠牲者』になって、周りに助けを求めてしまう…」
  4. 相手はどんな役割を演じているように見えますか?
  5. そのゲームの「結末」はどんな感情ですか?(例:怒り、無力感、罪悪感など)
  6. もし、次に同じような状況になったら、あなたは「大人(A)の自我状態」から、どんな言葉を、どんな態度で話しますか?具体的に想像して書き出してみましょう。

このワークを通じて、あなたが無意識に繰り返しているパターンを特定し、その連鎖を断ち切るための具体的な行動を計画することができます。

まとめ:ゲームを止め、本当に向き合う関係性へ

今回は、人間関係のトラブルを繰り返す原因となる「心理ゲーム」の概念と、そこから抜け出すためのヒントをお伝えしました。

  • 心理ゲームは、無意識の役割交代と不快な結末を伴う。
  • ゲームから抜け出すには、パターンを認識し、「大人(A)の自我状態」で対話することが重要。

この知識は、職場での人間関係だけでなく、家庭や友人関係など、あらゆる場面で役立つものです。「またか…」と諦める前に、この「心の地図」を使って、あなたの人間関係を変えてみませんか?

明日は、自分の意見を大切にしつつ、相手とも良好な関係を築くための「アサーティブコミュニケーション」について深く掘り下げていきます。どうぞお楽しみに!

もっと深く学びたい方へ:TA心理学ベースの講座で「関係性を変える力」を磨きませんか?

今回の記事で、人間関係の悩ましい「心理ゲーム」の正体について触れました。もし、あなたが「まさにこれだ!」「このパターンから抜け出したい」と感じているなら、その解決策はTA心理学に深く根差しています。

TA心理学は、自分自身の無意識のパターン(心理ゲームや人生脚本など)を理解し、より健全で生産的な人間関係を築くための具体的な方法を教えてくれます。

青森HRラボ(私が勤務する会社で運営)では、このTA心理学をベースにした実践的な講座を定期的に開催しています。

8月9日、23日、9月13日に開催される「自分を育てるTA講座」では、

  • なぜ人間関係で同じトラブルを繰り返すのか、その根本原因を深く理解する
  • 「心理ゲーム」から抜け出し、健全な対話を構築する具体的なスキル
  • 若手からベテランまで、あらゆる世代との良好な関係性を築くための心理学的アプローチ
  • 全3講座ですが、講座ごとに単独受講が可能です。

などを、ワークを交えながら体系的に学ぶことができます。知識だけでなく、明日から使える実践力を身につけたい方に最適な内容です。

この連載で「もっと知りたい!」と感じた方は、ぜひ一歩踏み込んで、TA心理学の知見をあなたのものにしてみませんか? 講座の詳細はこちらからご確認ください。

➡️【講座詳細はこちら】 25夏 実践TA心理学講座  (私が勤める会社で開催します)

皆さんの「働く」を豊かにし、「善くはたらく」ための強力な武器として、この講座が役立つことを願っています。

お読みいただきありがとうございました。皆さんのキャリアと組織の成長にお役に立てれば幸いです。

関連記事一覧