自律型社員育成の鍵!無条件の承認で心理的安全性を築く方法と実践原則
自律型社員育成の鍵!無条件の承認で心理的安全性を築く方法と実践原則
こんにちは、坂本です。皆さんのキャリアと組織の成長を応援しています。
昨日は、褒めても部下が動かない原因がストローク(心の栄養)の「質」と「量」にあること、そして組織の活力を奪う「無条件の否定的ストローク」の恐ろしさについてお話ししました。読者の皆さんの中には、「では、どうすれば主体性を引き出せるのだろうか?」と、早速次のヒントを探されている方も多いのではないでしょうか。
今日は、その答えの核となる「無条件の肯定的ストローク(存在の承認)」に焦点を当てます。これは、単なる優しい言葉ではありません。「あなたがこのチームにいてくれることが、最も価値あることだ」という、リーダーからの揺るぎないメッセージであり、自律型社員を育成するための、最も強固な土台です。この承認こそが、あのGoogleの研究でも最重要ファクターとされた「心理的安全性」を生み出すからです。
この土台なくして、どれほど素晴らしい戦略や目標を掲げても、社員は一歩踏み出すことを恐れます。さあ、承認の黄金比のベースとなる「無条件のストローク」の設計図を、一緒に作り上げていきましょう。
「無条件の承認」が社員の自律性を育む根本原理
新社会人の皆さんや若手リーダーは、もしかすると「無条件に褒めるなんて、甘やかしではないか?」と感じるかもしれません。しかし、これは「甘やかし」ではなく、むしろ最高の信頼の表明であり、最も厳しい責任感を内包しています。
なぜ「存在の承認」が土台なのか?:心理的安全性の核
無条件の肯定的ストロークとは、相手の「存在そのもの」を認め、歓迎する行為です。仕事の成果、スキル、役職、性格…といった一切の条件をつけません。
このメッセージが組織の隅々まで行き渡ると、メンバーは「私は、失敗しても、間違いを犯しても、このチームから追い出されたり、人格を否定されたりすることはない」と感じるようになります。
心理的安全性の確立がもたらす具体的効果
- リスクテイクの促進: 新しい挑戦や誰も試したことのないアイデアを提案できるようになり、イノベーションの土壌が生まれます。
- 本音の発言: 意見の衝突を恐れず、問題点や疑問を隠さずに報告・議論できるようになり、組織の意思決定の質が向上します。
- 学習の加速: 失敗を隠すのではなく、そこから何を学べるかに集中できるようになり、チーム全体の成長速度が加速します。
- エンゲージメントの向上: 組織への所属意識が高まり、離職率の低下と長期的な貢献意欲につながります。
指示待ちから脱却し、自律的に動くための最初の条件が、この存在の承認なのです。
ドラッカーの「自己管理」とTAの「自律性」の統合
ドラッカーは「知識労働者は、自らをマネジメントできなければならない」と説きました。この「自己管理(セルフマネジメント)」と、TAでいう「自律性(Autonomy)」は深く関連しています。
自己管理と自律性の関連性
- TAの自律性: 過去の親からの禁止令や脚本から解放され、今ここで自分の感情、思考、行動を選択できる能力。
- ドラッカーの自己管理: 自分の強み、働き方、価値観を理解し、組織の目標達成のために自発的・主体的に行動を方向付ける能力。
この二つを統合する鍵が、リーダーからの無条件の承認です。「あなたはあなたらしくいていい」という承認は、部下が過去の脚本や他者の期待から解放され、自律的な思考(Adult 自我状態)で自分の行動を選択する勇気を与えます。
無条件の承認を非言語で伝えるリーダーの姿勢
無条件の承認は、言葉だけでなく、リーダーの日々の姿勢と非言語的な行動によって最も強力に伝わります。部下は、上司の口頭での褒め言葉よりも、その非言語的な態度を無意識のうちに信頼します。
非言語的ストロークの実践リスト
- 目線の合わせ方: 話す時、相手の目線と高さを合わせるか、わずかに低くすることで、「私はあなたと同じ立場を尊重している」というメッセージを送ります。
- 挨拶と感謝: 毎朝の挨拶では、「〇〇さん、おはよう。今日も顔が見られて嬉しい」と、業務内容とは無関係の「存在」に対するシンプルな感謝を添えます。
- 体調への配慮: 疲れている様子の部下に対し、「少し顔色が悪いけど大丈夫?無理しないでね」と声をかける。これは「あなたの健康(存在)は、あなたの仕事より重要だ」という最上位の無条件ストロークです。
- 傾聴時の姿勢: 携帯を横に置き、腕を組まず、体を相手に向け(オープンボディランゲージ)、話を聞く。あなたの「全注意力」を捧げることで、最大の無条件の承認となります。

無条件の承認を組織に定着させるための「三原則」
無条件の承認を一部の部下だけでなく、組織全体に文化として定着させるためには、リーダーが一貫して守るべき三つの原則があります。
原則1:分離の徹底(行動と存在の分離)
リーダーは、部下を評価する際、「行動(したこと)」と「存在(その人自身)」を明確に分離してストロークを与える必要があります。
分離のコミュニケーション実践
- NGな指導(分離できていない例): 「この企画書はダメだ。君はいつも詰めが甘い。」(行動の否定が、存在の否定に繋がっている)
- OKな指導(分離できている例): 「この企画書の構成は、ターゲット設定が少し曖昧だ。だが、君の、新しいことに挑戦しようとする意欲はチームの財産だ。そこを活かして、構成を練り直そう。」
行動へのフィードバック(条件付き否定)を、無条件の肯定的ストロークで挟むことで、「企画書はダメでも、あなたはOKだ」というメッセージを確実に伝えることができます。
原則2:一貫性の維持(感情と態度の統一)
無条件の承認は、リーダーの感情の状態に左右されてはなりません。リーダーが機嫌が良い時だけ優しい言葉をかけるのは、部下にとって「条件付きの承認」と受け取られてしまいます。
ドラッカーの『規律』との関連:
ドラッカーは、知識労働者には成果に対する規律が必要であると述べました。この規律は、リーダーの「感情の規律」にも当てはまります。リーダーの感情の波(Parent 自我状態の不安定さ)を部下にぶつけず、常に一貫した養育的親(NP)の姿勢を保つことが、部下に揺るぎない安心感を与えます。
感情の規律を保つための対策
- 自己認識: 自身の感情(特にCP/Critical Parent)が高まっていると感じた場合、即座に「Adult(成人)」の自我状態に戻るため、深呼吸や一時的な離席を行う。
- ルール化: ストロークを与えるタイミングをルーティン化する(例:週に一度、業務外の話をする時間を設ける)ことで、感情に依存しない一貫性を保つ。
原則3:ストロークの多様性の確保
組織のメンバーは、それぞれ異なる「受け取りやすいストロークのチャンネル」を持っています。ある人は言葉での承認を好み、ある人は「任されること」(信頼)を承認と感じます。
多様なストロークの設計(マネジメントへの応用)
- 言葉による承認: 定期的な1on1での「感謝」や「期待」の伝達。
- 非言語による承認: 忙しい時でも必ず立ち止まって話を聞く、物理的な敬意の表明。
- 機会による承認: 重要なプロジェクトや新しい挑戦を任せる(「あなたの能力を信頼している」という無言のストローク)。
リーダーは、これらのチャンネルを意識的に使い分け、すべての部下に「確実に届く」承認を設計する必要があります。
まとめ:ドラッカーの「自律」とTAの「心の栄養」
「人が貢献できる環境を作る」というドラッカーのマネジメントの普遍的な教えは、「無条件の肯定的ストロークを組織のデフォルト(初期設定)にする」というTAの原理原則と深く共鳴します。
無条件の承認は、部下が自分自身の「I’m OK」という自己肯定感を基盤に、組織の目標達成のために自律的に行動を選択できる環境を創出します。これにより、組織は指示待ちではない、「知識の創造」ができる真の自律型集団へと進化を遂げます。
今日から、あなたのチームにおける「存在の承認」の流通量を意識的に増やしてみてください。その小さな一歩が、組織文化の大きな変革につながるでしょう。








