なぜ、あの人とはうまくいく/いかない?|TA心理学が教える人間関係の“見えない仕組み”とは
人間関係を育てる力|TAで学ぶ対人理解と関係構築スキル入門:第1回
はじめに|「うまくいく人」と「なぜか合わない人」の違い
社会人になって最初にぶつかるのが、「人間関係」の壁です。
知識やスキルは少しずつ身につけられても、「あの人とはなぜか気が合わない…」という感覚は、頭で整理しにくく、モヤモヤしたまま残ってしまうものです。
• 優しく接してくれているのに、なぜか緊張してしまう上司
• 説明は丁寧なはずなのに、どこか話がかみ合わない先輩
• 同じミスをしても、注意され方が全然違う同僚
このように、「同じ状況でも、相手によって自分の反応が変わる」という経験をしたことがあるのではないでしょうか。
これはすべて、「関係性の構造」が関係しています。
つまり、表面には見えないけれど、人と人とのやりとりには“見えない仕組み”が働いているのです。
その見えない構造を、わかりやすく整理してくれるのが、TA(交流分析)心理学です。
第1章|人間関係は「思考」より「無意識の反応」で決まっている
多くの人が、人間関係をうまく築こうと努力します。
でも、その多くは、「もっと気を使おう」「言い方を工夫しよう」「笑顔でいよう」といった“意識レベル”の対応にとどまってしまいがちです。
ところが、実際の対人コミュニケーションの7~8割は、「無意識のクセ」や「感情的な反応パターン」によって決まっていると言われています。
たとえば、
• 上司が話し出すと、無意識に背筋がピンと伸び、言葉が少なくなる
• 後輩に対して、つい自分のやり方を押しつけてしまう
• おっとりした同僚の前では、イライラしやすくなる
これらは、理性では制御できない“心の自動運転”が働いている状態です。
そして、その背景には、自分の中の「心のモード(=自我状態)」の切り替わりがあります。
つまり、相手の言葉や態度に、自分のどの“心のモード”が反応しているかを理解することが、人間関係をスムーズにする最初の鍵になるのです。
第2章|TA心理学で学ぶ“3つの心のモード”とは?
交流分析(TA)は、アメリカの精神科医エリック・バーンが提唱した理論で、
人間関係や自己理解を深める上で、非常にわかりやすく、実践的な心理学です。
その中核をなす概念が「自我状態(エゴグラム)」です。
TAでは、私たちの心は、以下の3つのモード(自我状態)で構成されていると考えます。
🧠① 親(Parent)=価値観・ルール・道徳のモード
親から言われたことや、社会で刷り込まれた“べき論”がここに蓄積されています。
• 「報告はすぐするべき」
• 「先輩には敬語を使うのが当たり前」
• 「努力しない人は評価されるべきでない」
このモードが強くなると、無意識に「評価」「指導」「説教」などのスタンスが出てしまいます。
🧠② 成人(Adult)=冷静で論理的な判断モード
今起きている事実をもとに、合理的・中立的に物事を考えるモードです。
• 「今の状況はどうなっているか」
• 「どの選択肢が妥当か」
• 「相手の立場から考えるとどうか」
コミュニケーションで最も望ましい状態であり、この状態同士のやりとりが信頼関係を生みます。
🧠③ 子ども(Child)=感情的・直感的なモード
子どものような感情や欲求、衝動、反発などがここに含まれます。
• 「怒られるのが怖い」
• 「やりたくない」
• 「失敗するのが恥ずかしい」
この状態が強く出ると、感情的・衝動的な反応が表れます。

第3章|「なぜか合わない人」の正体は“心のモードのズレ”
ここで重要なのは、人間関係において、この3つのモードが相手との間でどう反応し合っているかという視点です。
たとえば、こんな関係パターンがあります:
🔁 ① 上司が「P(親)」、部下が「C(子ども)」
→ 指導されると、つい萎縮してしまい、本音が言えなくなる
🔁 ② 同僚が「C(子ども)」、自分が「P(親)」
→ 「なんでそんなこともできないの?」と、説教モードになる
🔁 ③ お互いが「C(子ども)」モード
→ お互い感情的になってぶつかりやすい(例:LINEの言い合いのような関係)
こうした状態が続くと、関係がギクシャクし、信頼構築どころか消耗関係になってしまうのです。
一方、「A↔A(成人↔成人)」の関係がベースになっていると、
事実に基づいて落ち着いて話し合い、建設的な関係性が育まれていきます。
第4章|「成人モード」で関わると、空気が変わる
職場で信頼される人たちは、無意識に「Aモード=成人」の状態で周囲と接しています。
• 感情をぶつけず、事実と意見を分けて話す
• 相手の立場や背景を汲みながら、意見を伝える
• 相手を“指導”するのではなく、“対話”を心がける
たとえば、
「報告が遅れた新人」に対して
【Pモード】「なんでこんなこともできないんだ!」
【Aモード】「〇〇の件、報告タイミングが少し遅かったと思うけど、何か困ってたことあった?」
この“聞き方の違い”が、相手の反応、ひいては関係性全体の空気を変えていくのです。

第5章|自分の心のモードに気づくトレーニング
まず、自分の普段のコミュニケーションを振り返ってみましょう。
• 注意されると、すぐ言い訳をしたくなる(→Cが強め)
• つい後輩に厳しい口調で接してしまう(→Pが強め)
• 「あの人、合わないな」と決めつけてしまいがち(→C・Pの混合)
このようなパターンに気づいたら、意識して「今、自分はどのモードで話しているだろう?」と振り返ってみてください。
おすすめは、「対話ログ」や「1日のふりかえりメモ」に、
・今日、上司に話したときの自分の状態は?
・後輩と接した時、自分は何モードだった?
と書いてみることです。
自分の「心のクセ」を言語化することで、感情に巻き込まれず、自分をコントロールする力が育っていきます。
まとめ|関係は“感覚”ではなく“構造”で読み解ける
「なんか合わないな」
「なんでうまくいかないんだろう」
その違和感は、“性格の不一致”ではなく、
「心の状態のミスマッチ」が起きているだけかもしれません。
TA(交流分析)を学ぶことで、
相手との関係性を冷静に読み解き、
「なんとなく苦手」だった人との距離が、
ぐっと近づくことがあります。
関係性の仕組みを知れば、職場でのストレスが“学び”に変わります。
そして何より、人と深く関わる力は、どんな職場でも、どんな仕事でも、必ず役立ちます。








